力の回収
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「どういうことですか!!!!また、私を置いていくつもりですか!?嫌です、嫌!もう一人になるのは嫌なのです。お側にいさせてください。なんでもやりますから!私も、ルトゥと共に。一緒に居させてください!」
もはや、以前のドルトムントの時の性格はどこへ行ったのか?
エマが生き永らえていたルトゥであると聞かされてから、彼の中のドルーは全身でルトゥを崇拝し、着き従っている。
「ええ、いいわよ。だってあなたは家族じゃない!!でも、もう世界を全て滅ぼそうだなんて考えないで。あの件は父が上に掛け合って、事内を得たのよ。あなたを抹消されたくないわ。でも、それもできなくなるわね、あなたの力は全て返してもらうから。もう能力を使う事は出来なくなるの。それから…あなた達も。」
ルトゥがケイト女王をはじめ、リナ、オリヴィアの方を見て、ひとりひとりと目を合わせる。
その時、フォード公爵が前へ出た。
「女神様!我々も連れていくおつもりなのですか?いや、そうじゃない。聞きたいのは、リナは?私の元から連れて行きませんよね?娘もです!!絶対に離れたくないのです。」
その言葉に、ハロルドも反応を示す。
「オリヴィアが連れていかれる!?絶対にあってはならない!!女神様、それはダメだ!!」
理性の塊であるハロルドが取り乱している。
そして、女神は視線を外すと、周囲をグルっと見渡し、こう言った。
「ふう、そこまで言われては、天界へは連れていけないわね。フフッ、なんてね。最初から連れて行く気は無いわ。ドルーは私がこの手で生み出した者、私の一部なのよ。ここに居る者達は、私の力が分け与えられたものの縁者。力が少なからず残っているから、君達の力も回収しなければならない、それだけよ。まあ、力が無くなると少しばかり不便になるけれど、今と大して変わらないだろうから、安心するように…」
そう言った女王の表情は晴れない。
何かが、気にかかるようだ。
ケイト女王と目が合い、ジッと見つめられていることに気づき、視線をそっと外す。
そんな女神へ、意を決してケイト女王が聞いた。
「本当に、今と変わらないのですよね?」
「ああ。」
と穏やかな笑顔を作り女神は頷く。
彼女の放つ次の質問に、ルトゥは眉をピクリと動かした。
「本当に?ツインレイには影響ないのですか?」
ケイト女王の少し震え緊張した声が響き渡る。
沈黙となり、女神へと視線は注がれた。
女神の表情は硬い。
その事柄には懸念があると物語っていた。
「それは、やってみないと分からないのだ…」
気がかりはこれであった。
問題はないと思われえているが、ルトゥの力に強く影響を受けているツインレイはどのような効果が出てくるのか分からないのだという。
引き合う気持ちが弱まるかもしれないし、何も変わらないかもしれない。
はたまた、ツインレイに対する感情が全て消えるかもしれない。
本当にどうなってしまうのかは行ってみた結果次第となる。
「ツインレイに影響が出るとは?」
オリヴィアがどういう意味なのかをリナに尋ねる。
「ツインレイは魂の番。自然と惹かれ合い、愛し合う。それは強制力に似たものよ。つまり、ツインレイの効果が無くなるという事は、愛情が無くなるという事。相手への気持ちが離れ、今までの感情が無かったものとなるという事よ。」
「そんな、この感情が消えるだなんて…ハッ、私だけじゃないよね??」
オリヴィアが口走ると、リナも分かっていたようで、夫のエドワードの方へ視線を注ぐ。
「ウェレの子孫ウェルト王家の血を引く、エドワードやハロルドはツインレイ意外にも、女神へと魅かれるという自然な感情が備わっているそうなの、これは女神の力とは関係ないらしいから好意の感情が全て消えるということはない。だけれど、父さまは王家の血筋ではないから、母さまはとても心配しているのよ。父さまは全てを女神さまから聞いて、この場への参列を断って、外の警護へ廻ったわ。この場に居ることが怖いと。この場で力の回収の影響を自分が受けないことで、少しでも影響されなければと祈って。もしも、相手に対する感情がいっさいなくなったならば、長年夫婦をしてきた母さまには堪えがたいことだわ。もちろん、私もよ。愛が消えて、気持ちが無くなるだなんて…なんの情も湧かないのよ、想像するだけで酷く苦しいわ。」
今にも泣きだしそうに話したリナは口元を抑えて黙ってしまう。
気持ちをなんとか落ち着かせようとしているようだ。
オリヴィアも、動揺が隠せない。
自分は、この短期間でハロルドに強烈に魅かれ、恋に落ちた。
女神の力の所為ではないかと言われれば否定は出来ない。
つまりは、力の回収が終われば、オリヴィアのこの感情は無かったものとなるのかもしれない。
そして、相手であるハロルドにも言える事だ。
“ハロルドが自分を好きではなくなる”
その言葉が腹の底へと沈んでいく…
佳境です
愛はそこにあるのかい?と問われるようです。