女神の正体
いつもお読みいただきまして、ありがとうございます
「では、女神はいつ、亡くなられたのですか!?」
マーガレットが前のめりで質問してくる。
その問いに、女王はニヒルな笑いを浮かべ、答える。
「ルトゥ様が亡くなったとは、一言も言っておりませんよ。」
その答えに、皆が驚愕した。
それは、ルトゥが生きているという事を示すからである。
「では、今、あの御方は何処へいらっしゃるのですか?」
エーベルトが弱々しく質問する。
少しの沈黙の後に、女王は返答する。
「目の前に、居るではないですか!!」
集まっている者達が一斉にキョロキョロと忙しく目玉を動かし確認する。
女王の言葉が真実であるならば、この中にいるという事だ。
ルトゥもこの中に存在するとは、いったい誰なのか?
「もしかして、ケイト女王が女神ルトゥですか?」
ジョージ殿下が聞くが、微笑で
「違うわよ。」
女王に否定される。
「では、誰が??え、目の前…?」
チャールズ殿下がエドワードの前へと視線を移した時に、目に入ったのは、女王。
そして、その斜め後ろへ待機している人物に、目が留まった。
「あっ!!もしかして、女王の侍女!?」
チャールズ殿下は思い立って、軽い気持ちで答えた言葉であったが、実はとても重要なセリフであったのだ。
皆の視線が、女王の侍女であるエマへと集中する。
「そっそんな、そんなはずはない!!!!生きているなんて、生きているはずがないのだ。私はこの目で、この手で息をしていない事を確かめたのだから!!!!!」
そう発した人物へと、視線は注がれた。
「エドワード…いいえ、ドルー様。こちらにおられるエマ様は女神ルトゥなのですよ。」
女王が悲しそうな表情を彼へと向けてそう話す。
「私の正体は、バレていたのか…」
エドワード、いや、ドルーが顔を上げて、そう言った。
「この家は特殊なのです。ホワイトキャッスルが私達の力を込めた宝石を四方八方へ散りばめて作られていることは知っていますよね。それにより、あの城の中では、ドルー様の能力は発現できません。そして、ここも同じことが起こっています。はい、あなたはこの家へと足を踏み入れた瞬間から、正体がバレていたのですよ。」
ドルーが周囲を見渡すと、皆の表情は嫌悪に満ちたものや恐怖心を含んだものが多く、彼を敵であると認識しているものであった。
これまでに我慢していたのだろう、感情をぶつけようと、ワザと視線を合わせてくる。
「そうか、すでに知れていたのか…」
ドルーは、大股を開き、しゃがみ込む。
高貴な身分とは思えない態度で、項垂れている。
「どうして…なぜ、私が黒幕だと分かっていながら、捕まえなかったのですか?ルトゥ。」
冷静さを少しとり戻し、ドルーが聞く。
「それは、これの為です。」
エマは手にしているコンパクトを見せた。
「それは、神殿の泉で手に入れたもの…それは何なのですか?あっ、でありますでしょうか?女神様??」
語り掛ける相手が女神であるので、惑いながら話を聞き出そうとするカイル。
「フフッ、お前のことは赤子の頃から知っているのだぞ。いつも通りでよい。フッ。」
女神はカイルへと優しくそう答えたのち、室内にいる者達へ聞こえるようにワザとそう語る。
「これは…全ての力を集約するという鏡。世界を戻す為に、我は動く。」
鏡を頭上に掲げ、女神はそう言った。
「世界を戻す為…とはどういう意味でしょうか?」
陛下が緊張した表情で、一歩前へ出て、問う。
「えーと、説明をかなり省くけれど、私の力を全部回収して、元の場所へ帰還するということよ。本来ならば、地上の全てをリセットしてから帰還するのが神ルールなのだけれど、父が、あ、ルー神がね、この地の葡萄を大層お気に入りで、この地の人々とお忍びでやっている花の世話や野菜造りが楽しいんですって。だから、この地は更地にはしないって決めたみたい。」
平然と言いのけた。
「では、ルトゥは地上へ帰られるのですか?」
ドルーが悲し気に質問する。
「ええ、帰還するわ。」
ニッコリとエマの時のように不敵に微笑んで、女神は返事をした。
短い…なんとか投稿できてます
早く夏休みにならないかなぁ