古代史
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「本当の…歴史…」
陛下さえも期待する。
「まず、古代史の冒頭部分、神ルーがこの地を創り、女神ルトゥが任命を受け、地上へと降り立ったこと、生命を増やし、大地の恵みからドルーを創り、自分の魂の一部を分け綺麗なものを集めてウェレを創造しとことは間違いはない。」
女王は淡々と話す。
「その後、ルトゥは天空の自身の家族を想い、ホームシックになったのね、ウェレに似た子を作って疑似家族を得て心を満たしたの。その子供達は、神とは違い、己の意志から番をなして子を創ることの出来る人間として生み出された。その後、ウェレと共に、東大陸に人間を増やしていった。そして、あの出来事が起きる。ドルーの嫉妬よ…」
ドルーの嫉妬とは、ウェレを伴侶としたルトゥを見て、失望したドルーが暴走した出来事を示す。
そして、ウェレを酷く憎んだのだ。
ウェレを穢れの能力により追い込んだのである。
ドルーの穢れを操り人々の心を操作する能力や自身の欲望のままに形を変えられる能力は、ルトゥ自身は容易に打ち勝つことが出来るのだが、ウェレや子供達には酷く体を壊し、影響を受けるものであったため、彼女は苦悩した。
目の前で苦しむ彼らを目撃したルトゥは、これ以上苦しませたくはないと、自身が身を引くことを決めたのだ。
ルトゥは西大陸へドルーと共に戻り、彼の近くで、監視をされながら過ごす日々を選択した。
「それは、ルトゥがドルーのことも傷つけたくなかったからでもあったのです。彼を一人にし、悲しい思いをさせてしまった事を大層悔やみ、女神は敢えてその選択をしたのです。」
真っすぐ前を向き、女王は一点を見つめて話し続ける。
自分が彼の傍へ戻れば、彼も以前のように戻ってくれると信じていたルトゥであったが、予想に反し、ドルーはルトゥとウェレの監視をさらに強め、彼女の行動を縛り続けた。
監視の隙をついて、ルトゥは東大陸へ赴き、ウェレにも会いに行った。
神ルーからの命も決して忘れてはいなかったが、あまり動きが取れなかったので、大陸のあちこちに自分がいなくても彼らの意志で増えてくれる人間を増やしていった。
こうして数十年の月日が経ったある日、ルトゥはようやく気づいた。
「ドルーはこの状況に満足しており、それと同時に強いストレスを感じているという事に。」
ルトゥを独り占め出来ていることは彼にとって幸せであったが、彼女の気持ちが自身のみに向かない事に苛立ちを覚え、穢れの力が暴走するようになっていた。
周りに悪影響を及ぼし始めたのである。
さらにその時期、ある問題がウェレに起き始めていた。
ルトゥの魂を分けてはいたが、彼には力は分けていないため、寿命が考えていたよりもずっと短かったのだ。
段々と彼はよく眠るようになる。
それを聞いたルトゥは、すぐさま行動を起こした。
「ウェレを殺したのでしたね。」
エーベルトが呟く。
「ええ、そうよ。その時のウェレは、実は、本当に寿命のカウントダウンが始まっていたのよ。」
女王はエーベルトに悲しそうに返事をする。
皆は質問者のエーベルトを見て、言葉を失った。
彼は無意識に涙を流していた。
ウェレの余命が短いと知ったルトゥは彼を世間的に抹消し、この異空間で穏やかに過ごさせることにした。
この空間はルトゥの心で満たされている。
これにより、少しは延命できたのであった。
そして、ウェレは天へ召された。
「いつ、ウェレはお亡くなりになったのですか?」
マーガレットが質問する。
「ルトゥが亡くなる3年前よ。」
リナが答える。
「え!?100年、生きていたのですか!!」
マーガレットは驚きの声を上げる。
「ええ、生きていたのよ。」
女王は古代史との違いがここなのだと強く強調した言い方で話す。
「あのー、私、気づいてしまったのですが、発言してもよろしいでしょうか?」
陛下が細々と気弱に手を挙げる。
「どうぞ。」
女王が促すと、陛下は話し始める。
「私の予想に過ぎないのですが……もしかしたら、もしかしたらなのですが、3年後に亡くなったとされる女神ルトゥも、実は生きているのでは?」
予想もしなかった陛下の考察に、皆が驚きの表情を見せた。
その答えを聞こうと、皆が女王へ顔を向ける。
「ええ、その通りです。よく気が付きましたね、陛下。」
とニッコリ笑って女王は答えたのである。
執筆が間に合わず、短くてすみません
頑張ります!