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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖女追放 国滅亡 それから蛇足

作者: ものじとり

 昔々、中国でね。

 最初に描き終わった人が酒を飲める、ってルールで、蛇のお絵描き競争ってのが行われたんだ。

 それで最初に描き終わった人がね、時間が余ったからって蛇の絵に足を付け足しちゃったんだって。

 いや足があったらそれ蛇じゃないだろう、ってことで、そいつは失格になっちゃった。

 それ以来、無駄なものを付け足すことを、『蛇足』って言うようになったんだってさ。

 そんなこともあるんだねえ。

「うわあああああ! 聖女が偽物で無能だと思って国外に追放したら実は本物で有能で聖女がいなくなったせいで国が滅んだあああああ!」


「きゃあああああ! がんばって聖女を務めてたのに濡れ衣きせられて国外追放されたら隣国のイケメン皇子に言い寄られて幸せになったああああ!」




でしたとさ。


めでたしめでたし。










よし、書き終わった。


聖女追放もののエッセンスの詰まったいい作品ができたぞ。


さて、投稿するか。




なに?


投稿最低文字数(200字)に達していない為、まだ投稿できません。


だと?




いや、だって。


これ以上書くことあるか?


ちゃんと終わってるし。


これ以上書いても蛇足になっちゃうだろう。




「呼んだー?」




あ、蛇が来た。


いや、蛇じゃないな。足がある。




蛇足だ。




「ぼく蛇じゃないよ」


だろうね。


「このやりとりすっごく無駄だね」


まあ、蛇足だしな。


「でも蛇足にも良いところはあるんだよ」


へえ、どんな。


「蛇の絵って、描き終わったらそれで終わりじゃん?」


まあ、そうだね。


「でもいったん足を付けちゃえば、あとはもう何を付け足してもいいんだよ。羽を付けてもいいし、角を付けてもいいし、ロボットに乗せたっていいんだ。蛇の絵は描き終わる時が来る。でも蛇足に終わりはないんだよ」


なるほど。


「蛇だけを描こうとする奴にはできない芸当さ」


じゃあせっかくだから羽と角をつけてやろう。あとロボットも。


「わーい、すごい蛇足」


それから設定もつけてやろう。滅亡して荒廃した聖女の故国で、かたきを追ってロボットと共にさすらいの旅を続けている、ってのはどうかな。


「いいね。仇は何の仇?」


故郷の村を焼いて大切にしていた陶器の人形を壊して嵌めてあった宝石を奪っていったギャング、って設定だよ。


「よーし、地のはてまで追い詰めるぞー」





 ♢ ♢ ♢





ここは地の涯。


ぼくは、長年追い続けてきた仇を、ようやく崖っぷちに追い詰めていた。


「ちくしょう! しつこく追いかけてきやがって!」


手足を撃ち抜かれた仇が、地面に転がって僕をにらむ。


「宝石はどこだ?」


「宝石?」


「ぼくの人形から奪っていった宝石だ!」


「……なんだ、そんなことで追いかけてたのかよ。てっきり…………宝石ならとっくに売っちまったよ。今どこにあるかなんて知るか!」


「てっきり? 村を焼いた何か特別な理由があるのか?」


「…………しゃべったら見逃してくれるか」


「だめだ。話しても話さなくてもお前はここで殺す。どうせなら話して死ね。『人は死に際には嘘をつかない』って『魔神ガロン』の敷島くんも言ってるしね」


「敷島くんはそのあと悪人を見逃してやってるじゃねえかよぉ」


「復讐相手を許すのって今時はウケないし」


「ひでえ風潮だ」


「つべこべ言わずに話せ。ここは話す流れだろ」


キャラは流れには逆らえない。

仇はしかたなく話し始めた。


「……俺たちの目的はてめえの人形の方さ。聖女選定をやってる教団にとって都合の悪い情報が人形に隠されてたんだとよ」


「やけに念入りに粉々になってると思ったら……あの天使像にそんな秘密が。それにしても取って付けたように聖女を絡めてきたな」


ぼくはポケットから人形のかけら、右手の先の部分を取り出した。


「うっかり割ってしまって、修理するために接着剤を買いに出かけて留守にしたところに貴様らが襲撃してきた設定だったんだが……」


「……てめえが持ってたのかよ。それが見つからねえから村中焼く羽目になったぜ」


「話すことはそれだけか?」


「雇い主の情報とか、もっと知ってることはあるが、ここはこれ以上話す流れじゃないんでな」


「そうか、流れには逆らえないな。では死ね」


「ふ、ふ、ふひ、ひい、死にたくねえ、死にたくねえ」


かたきは這いずって逃げ始めた。


「誰だってそうさ……。後ろから撃つのは、初めてだな」


ぼくは引き金を引いた。






「これに教団とやらの秘密がねえ」


ぼくはロボのコックピットで人形のかけらをもてあそぶ。


『解析してみよっか?』


ロボのAI妖精が言った。


「正直復讐心が湧いてこない。いまさら黒幕の存在が明らかになってもねえ。だいたい教団なんてもう聖女追放からのざまあで国ごと壊滅してるし」


『ホログラムレコードになってるね、一部分からでも全体の情報が再生できるよ。鮮明さは落ちるけど』


ぐちぐちとやらない言い訳を語るぼくを無視してAI妖精が勝手に人形のかけらを解析する。


『このままだと聖女が死ぬみたいだよ』


「ぅおい! 怖い情報出してくんな! せっかく復讐編を終わりにしてスローライフ編か学園ラブコメ編に入ろうと思ってたのに!」


『入ればいいんじゃない? このままだと聖女が死ぬけど。聖女が死ぬけど』


「あーもう、分かった分かった。行きますよ、聖女に会いに。すぐに終わして余生をのんびりすごしてやる!」


聖女は今帝国にいるんだったか。ここからだと旧王国領を横断しないといけないな。めんど。

シートに座り直して駆動輪に動力を繋ぐ。


さて、行きますか。




このあと教団の秘密とか聖女の運命とか神の陰謀とかなんやかんやあったけどそれはまた別の話。

いつか語ることもあるかもしれないけど、それはまた今度ね。


おしまい






 ♢ ♢ ♢






こんな感じでどうかな。


「いいと思うよ。どこで終わってもいいってのも蛇足のいいところだね」


じゃあ文字数も十分だし、投稿するかな。


「まさか異世界恋愛カテゴリに出すつもりじゃないよね?」


あれ? だめかな。追放聖女ものってだいたいそこだよね。


「これだけ蛇足を付けまくっといてまだ追放聖女もののつもりなわけ」


たしかに。じゃあどこだろ。ハイファンタジー? それもなあ。


「『その他』しかないんじゃない?」


まあ、そうか。


「殺人描写があるから、R15タグも忘れないでね。『残酷な描写あり』も」


うん。あとつけるべきタグは、『蛇足』と『タイトル詐欺』と『メタ表現』と、あと何かあるかな。


「『出オチ』とか? あと『未完』『打ち切り』とか」


じゃあそれも。


「『蛇足』の故事を知らない読者がいるかもしれないから前書きに載せといた方がいいかも」


それもだね。あらすじどうしようかなあ。


「『聖女を追放したら国が滅んだ』だけでいいと思うよ」


ちょっと短すぎるけど、長すぎるよりはいいか。


「スクロールしないと読み切れないようなクソ長いあらすじよりはずっとマシだね」


よしできた。投稿するか。

あードキドキする。書籍化の話が来たらどうしよう。


「そんな『美少女に告白されたらどうしよう』みたいな無駄な心配しなくていいよ」


いくぞー。


送信、っと。




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