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【別視点】キルハイトの感嘆2【従者side】

「ですが、お嬢様がメガイラ嬢の奸計に嵌められた時は、その教育をどうしてたのでしょうか?」

「記憶を攫ったけれど、受けていないみたいだね」


 受けていない。しかし、過去にオルクス殿下達は婚約者候補であったお嬢様を貶めて、メガイラ嬢を婚約者とする様に画策したのだから、メガイラ場は周囲が納得出来る実力を付けていた筈だ。

 思わず首を捻る俺に、シオンさんが目を細めて口を開く。


「思い出しておくれな。この間武器の補充にまわったよね。反乱やら何やらが起きた時、爺様達は鎮圧に向かっていて、アザレさんは反旗を翻した連中を無力化する魔法に目覚めた、これがユーさんの記憶。アザレさんがどうやったかは人伝に聞いた話だけだけれど、決起に逸る敵がわーっと攻め寄って来た時に、きらーんのぴかーんで粉々ーになったらしいよ」

「きちんとした言葉で説明してくれませんか?」


 丁寧な説明も出来る筈なのに、擬音や身振り手振り、勢いで伝えようとする事が多いのは、シオンさん達日本人の特性なのか?アザレ嬢も無駄な動きや言葉が多い。


「きらーんと輝いて、ぴかーんと光って、粉々になったらしいよ」

「全く情報が増えていません。何が光って輝いて粉々になったのか、教えていただけませんか?」

「だからね、戦いの最中、後方から王子さんと二人で一頭の馬に乗ったアザレさんが、最前列に飛び出したかと思うと、次の瞬間全身がぴかーんと輝いたんだとさ。するってぇと、敵さんの武器がきらーんと光って粉々のボロボロになったらしいよ」


 それは強力な祝福の魔法では無いだろうか。だとすれば、ルクラティ神、乃至何らかの神に愛されて祝福された聖女と崇められたに違いない。その状況で、アザレ嬢がお嬢様を貶める様な言動をすれば、例え難癖からの冤罪でも上手く立ち回れなかった令嬢として食い物にしようとする連中が一気に増加しただろう。

 俺の知っているお嬢様は、辛くても誇り高く最後まで一人で戦って、家族にも側にいた俺達にも黙ったまま絶望して、ルクラティ神に癒しの場所を与えられた。

 公爵閣下に信頼されて側にいた俺は何て役立たずだったんだろう……。


「何か、怖い顔になっているよ?お菓子でも食べて笑いな。お腹が減ると人間、碌な考えにならないんだからね」

「私は側に居たのに……」

「そんなもん仕方が無いじゃないか」


 仕方が無い⁉︎

 思わず顔を上げて睨みつければ、ケロリとした表情のシオンさんが涙目になったエピナート嬢に紅茶を差し出して『水分摂って甘いもん食べると良いよぉ』と言いながら、俺に視線を向けて首を傾げる。

 俺が守れなかったお嬢様の姿で、けれども、今までに見た事が無い表情と雰囲気で。


「神様が力を与えたんだよ?神様の領分だ。ユーさんは最後まで誰にも弱音を吐かずに己の誇りを守ったんだ。最後の最後に絶望したとしても、今は守り神に貰った休憩時間なんだよ?帰って来たら、神様に認められたユーさんを頑張ったねって褒めてあげたら良いんだよぉ。側にいたキルさんやエピさんが気付かない位、強い信念と誇りでもって周りに醜態を見せないって事を最後まで貫き通した事を誇りに思いな」

「シオンさーん、私、私、気付かなかった事が悲しくて」

「悲しいのは当然さねぇ。それだけユーさんが好きだったってぇ事なんだから。弱みを見せなかったのはユーさんの都合で、悲しいのは残された方の都合。自分の感情は自分の物だよぉ。まあ、それはそれとして」


 キルさんも泣くんなら胸を貸すよ?と巫山戯た後、シオンさんは思い切り眉を顰めた。


「あのアザレさんに神の力を与えた神様って何者(なにもん)何だろうねぇ。この国の守護神ルクラティでは無いよね、もしそうなら、ユーさんを救う筈無いし……。でもまあ、それが分かった所で、何が出来る訳でも無し。重要なのは、アザレさんは味方してくれる神様の力で人様を救ったから、その功績でもって王様や王妃さんに認められた事さね。で、その功績を発揮する為に必要なのが」

「シオンさんが弱体化していたと指摘していた場所ですね?シオンさんが武器を補充して、公爵閣下と公子閣下が立直しなさっていらっしゃるから、今後は正しく監視運営されるって」

「公爵家と(ゆかり)のある場所については、順次公子閣下の視察と諜報部の確認が入ると聞いています」

「オーミソカノ歌手みたいに光る舞台が無いって思ったら、あのお嬢さんはどうするんだろうねぇ。力を発揮出来ないと王子さんと結婚出来ないとか思い込んでそうで、どこぞの戦場に突っ込んだりしなきゃあ良いけれど」


 は?何であの性悪の心配を?


 目を眇めて窓の外に目をやるシオンさんの言葉に思わず息を呑むと、紅茶を注いでいたエピナート嬢が危うく零しそうになっていた。


 理由を聞けば『自分は被害者では無いから』だと言う。俺を含めてお嬢様を大切に思っている者達があの性悪女を恨んで復讐したいと思う気持ちは理解出来るし、それに協力する気もあるけれど今のシオンさんは迷惑を掛けられてはいるものの、心身共に大きな被害を受けていないから『どうしようもなく鬱陶しいけれど』どうでも良いらしい。

 恨むのも復讐するのも許すのも傷付いた者だけの権利。アレがエルトリア王国伯爵令嬢である現実よりも、過去であるニホンのゲームに縛られている事がバカらしい。恐らくアレは未成年だったのだろう、比較的安全な国で大人に保護されていた気分のままこっちに来て白眼視されているのは、大人としてちょっと可哀想に見える。


「まあ、こっちに被害が来る様な喧嘩売って来たら買うけれどね。あたしにとってユースティティアの人達が一番大切何だから。王妃さんに鍛えられて、現実を知って大人しくなってくれれば御の字だよ」


 お二人さんも困ったらあたしに言うんだよ、と笑うシオンさん。

 いや、シオンさんは守る側じゃなくて、俺達に守られる側なんだが……。

 思わず脱力すれば、『任せて』と握り拳を振り上げられた。完全に違うから。

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