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ちょいとばかり王子さん達に反論します

「オルクス殿下、ご機嫌麗しく存じます。ユースティティア家が息女、ウィス「平等を謳う学園で、いちいちしかつめらしい挨拶をするなんて、態とらしく嫌味っぽいな」、左様でございますか。以後、気をつけます」


 人の話を遮んなってぇ話だよ。何が平等を謳うだ。歌いたきゃあ一人でも、与太なお仲間さんと一緒にでも、好きなだけ歌うが良いさね。それ、ハトぽっぽー、ハトぽっぽー、おってらの屋根からおりってこいー、っとね。ここまで手前勝手な事を言えるなんてねぇ。豆ぇ撒いたら、拾って食べちゃうんじゃあないかい?頭ん中の大切なもんを三歩で忘れるって、それは鶏だね。


「オルクス様ぁ、私はウィスと仲良くしたいだけなのに、お話もしてくれないんですよぉ。話したく無いって意地悪言うんです」

「それは良くないなウィスタリア、お前は自分の立場が分かっているのか?貴族令嬢の手本となるべきお前が、好意的に話し掛けてくる同級生を無視するとは。レルヒエ、兄として何か言ってやれ」

「畏まりました、殿下。ウィス、幾ら殿下がお優しいとはいえ、お前の言動は目に余る。直ちにアザレ嬢に謝罪して、王子主催の放課後の勉強会に出席する様に」


 はて?放課後の勉強会とは何だろうね?あたしゃあそんなもんがある事どころか、見た事も聞いた事も撫でまわした事もないよ?

 公式な通達が出ていれば、目ぇ通している筈だから、聞いただけなのか、あたしんとこまで話なり、通達書なりが届いていないのか。来てた所で王子さん主催なんてぇ、胡散臭いお誘いにゃあ乗っかりたくないけれど。


「エピナート、お前もウィスに着いていながら注意もせず、一緒になってアザレ嬢を貶めるとは。ユースティティア家長男として、ただで済ませる訳にはいかない。追って罰を申しつけるから覚悟しておけ」

「お兄様、お待ち下さい」

(ちょいとお待ちよ)


 っと、考える前につい口が動いちまった。


「ふん、何か言い訳でもあるのか?」

「言い訳が必要な事などしておりません。わたくしは授業の課題の為、刺繍のデザインを考えておりました。そこにメガイラ嬢がいらしゃって、一緒に行動する様にと一方的に言い募ってこられました。その様にすべき理由もおっしゃっておられましたが、わたくしには理解出来ない表現をされていたのと、図書館で捲し立てられても困りますので断っただけですわ」

(あたしにゃあ後暗い事なんぞ無いんだから、言い訳なんぞ必要無いってんだよ、人の話を聞く前に訳知り顔で決めつけやがるなんざぁ、その首の上に乗っかってる頭は飾りもんかい?王子さんの腰巾着で公爵の孫だからって、小生意気にすかしゃーがって、いっぺん鏡で拝んでみろってぇ言った所で己のご尊顔に自信がありそうだから、だからどうしたってぇ事になるんだろうねえ。全く、大した、丸太んボー様だよぉ、目も鼻も口も無いのっぺり野郎はてめえの都合に合わせて話を作りやがるから厄介だって自覚すべきだねえ。


「それが言い訳だというのだ」

「違います。お兄様は図書館で学習中にいきなり大声で意味不明の言葉を捲し立てられても受け答えなさるのですか?」

「相手が懸命に話していたら聞くに決まっているだろう?」

「いいえ、先ずは落ち着いて判る様に話して欲しいと促されるのでは?ですのでわたくしは、意味不明の事を大声で捲し立てるメガイラ様に、大声で相談してもゆっくり聞いて下さる方がいらっしゃるであろう教室にお戻り下さいと申し上げたまでです」

「ウィスタリアが話を聞けば良いだろう」


 王子さんが顰めっつらで言い放ってきやがったけれど、片手がアザレさんの腰にまわされてるってぇのはいただけない。イチャイチャするんなら外でやって欲しいよ。


「わたくしはメガイラ様と親しくお付き合いをしておりませんし、クラスも違います。放課後の勉強会についても、忙しいのでご遠慮いたします。

「王孫である私の命令であってもか?」

「恐れながら申し上げます。先よりユースティティア家の代表としての慈善活動とその収支を任されまして、学業以外の時間を費やした結果を祖父を通して王妃殿下にご報告させていただきました所、大変お喜びいただき学園の学外活動よりも優先しても良いとのご許可をいただきました。ですので、オルクス殿下の勉強会を優先させるべきであると言うのであれば、王妃殿下よりご指示いただけますようお願い致します」

(爺様を味方に着けてから、こちとらちゃーんと準備してんだよぉ。王妃さんは地位や立場を関係無く国民を守る国母ってぇ方で、貴族の婦女子が慈善活動をする事を推奨してるんだよね。そこで例の手に職つけよう、識字率と四則演算を身につけようってぇ活動が生きてくる。実際に慈善施設に行っている時間、そこで生み出される商品、学力の向上、ってな諸々を報告済みで、優先してそのまま続けなさいってな指示を貰ってるんだ。何をしているか分からないお子さんのお勉強会なんぞ、お呼びじゃないんだよ)


「お、お祖母様がか?レルヒエ、聞いているか?」

「いえ、申し訳ありません。ウィス、何故兄に伝えなかった?エピナートも気を利かせて報告すべきなのに、怠慢が過ぎる。その様な態度だと、我が家の使用人として認められないから、今直ぐ侍女を辞めろ」

「ああ、能力的にまだまだ不足だらけだが、曲がりなりにもウィスタリアは私の婚約者候補だ。いい加減な侍女は辞めさせろ」


 おや、自分より弱いもんに八つ当たりかい?お坊ちゃんは打たれ弱いねえ。何だかアザレさんが銀紙噛んだみたいな、何とも言えない顔して王子さんの腕にはっついてるけど、あれは笑うのを我慢しているのか、状況判断中なのか。まあ、どうだっていいやね。これから王子さん達の大好きな言葉でお返ししてあげるから。


「それは出来かねます」

「私に「兄に逆らうのか?」」

「殿下は学園生徒の手本となるべきお方です」

「当然だ」

「では、平和を謳う学園で、学生として学んでいるエピナート嬢に対して、使用人と強調されるのですか?お兄様にもお聞きしたいのですが、当主であるお祖父様が認めて我が家での行儀見習いを兼ねて私の手伝いをしてくれているエピナート嬢を、学園で呼び捨てになさる明確な理由はございますか?エピナート嬢は試験に合格し学費を払って通学している生徒です。家で、私の侍女をしてくださっている縁で、学園内でも世話を焼いてくださっていますが、平等な学園の中にあっては同じ生徒です。どうぞ、エピナート嬢、若しくはヴァルム嬢とお呼びいただけますでしょうか?」

(平等平等ってんならエピ嬢ちゃんの身の振り方に文句つけてくんじゃないよ。これ以上手前勝手な事ぉ言うと、頭から塩掛けて食っちゃうよ?腹ぁ壊すからやらないけど)


「な、生意気な事を!」

「あと一つ言わせていただけますと、図書館で大声を出すのはおやめ下さいね?」

「ふざけるな!」

「兎に角、殿下の部屋でゆっくり話そう」


 プレディヒド坊ちゃんがあたしの左手首をぐいっと掴んで引っ張る。痛いじゃあないか。この坊ちゃん、王子さんを守る為の騎士見習いだけあって、しっかり筋肉も付いてるし。


「巫山戯ているのは君達だ。ユースティティア嬢から手を離しなさい」


 声の方に目を向ければ、王国法のオフェンバール教授が王子さん達を睨みつけている。その横にキルさん。さっきの謎のハンドサインは、私が助っ人を連れて来る、だったのかねえ。いや、助かったけれど。

◇◆少しアレな言葉説明◆◇

与太;いい加減な物。偽物。与太者(不良者)の略。デタラメ。でまかせ。ほら。嘘。

ハトぽっぽー;明治33年に作られ34年に刊行された『幼稚園唱歌』に収められている『鳩ぽっぽ』。明治44年の文部省唱歌『鳩』(ぽっぽっぽで始まる)ではない。鳩の原曲説もある。落語で「歌を歌います」から続いて良く歌われた。

すかしゃーがって;すかす=すましている、気取る。にやがってをつけて、上品ぶって、気取りやがっての意。

丸太んボー;丸太。丸木の棒。主人公は勝手に人の事を決めるけるツルツルの人でなしという罵りとして使用。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気のせいでなければ、めっちゃくちゃ周りの目がある所で前世話しまくったヒロインに、ダブルスタンダードかましまくって権力振りかざしまくった王子ィな気がするんですよ……? 凄くないですか?王家の影…
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