緊急事態宣言の配達③
「企業の皆さんにテレワークを推奨します。不要不急の外出を控えましょう」
通勤が無くなってからのテレワーク。それが何事もなくできる企業はホントに凄いだろう。
そーいう業種ってやっぱり一部分だし、その業種であっても会社と違った問題もある。仕事の環境が自宅でも同じなのかというと……慣れが必要となるだろうし、自宅だって子供がいれば面倒もある。
”できる”と”上手くいく”は、どうしても差が出るものだ。
カチカチッ
「このようにネットで商品を頼むことで……数日後には商品が届きます」
ピンポーン
「自宅でもテレワーク、あるいはマスク作りのような内職だってできるのです。皆さんも、不要不急の外出は控えつつ、家の中でできる限りの事をしましょうね」
………
「いや!!運んでる人と商品作ってる人、出社して働いてるんですけど!!」
「あら?あなた達、テレワークができないんですか?時代に乗り遅れてますよ」
「喧嘩売っとんのか!?俺達だってな、アマ〇ンを注文する側に回りてぇよ!!」
◇ ◇
先ほどの茶番は、このお話をするための布石である。
「物流はこれから絶対にドローンだよ!」
「感染地域にドローンが物資を届ける動画すげぇよな!」
「家に引きこもって操縦できるんだから!」
ホントに将来、ドローンのような機械が物流の最前に立って、物資を運ぶ……それは起きそうであるが。
「100年後くらいじゃない?」
「感染地域だからそう感じるのであって、平和でいると不便とか違和感に思う」
今、時代の分かれ目に来ているような時だとすれば。ホントに変革はあるかもしれない。けれど、そこで働く者達はあまりにも夢物語な気がしている。考えられる事としては、拠点から拠点への輸送に関しては、ドローンのような機械的な実現はあるのかもしれない。それほど、そこを任されているトラック運転手の数が減っている。
けど、人から人へ物を渡す時。これはドローンのような、災害を前提とした状況じゃないだろうと思う。
ひとまず、前者。
「自動運転が可能ならトラックはそうなって欲しいけど……」
「万が一はどうにもならんからな。悪い風潮だけれど……」
ホントに運転手がいない。成りても少ないから、この際に沢山現れて欲しいものだが。トラックはなかなか厳しい査定。人間での改善が難しいとなれば、自動運転などの技術で補って欲しいという願望。
拠点から拠点へ、周囲への事故なく安定して行ける輸送手段として、もう一つ。
「今もあるけど、列車での輸送がそれに近いよな」
「まー、平時はいけるけど。災害時には列車があんまり強くないから」
拠点から拠点だけなら、線路を引けばいい。本当に簡単に考えれば、それがいい。自動運転で怖い事故も、線路の上を走る列車なら安全性もある。だが、それで輸送が成り立つかどうか。輸送している物資にもよる。安全面、積載量、汎用性、費用、……諸々を考えると、トラックでの運送が物凄く安定する。
おそらく今現在、自動運転の技術と物流システムの改革が成されるんだったら不可能ではないし、遠い未来の話ではない。人間がいないという前提の話であれば……。
「正直に、システムやら技術やらが確立されても、俺達人間の問題」
「結局のところ、ドライバー不足も人間不足なんだよな。日本は特にそれだ」
どんな技術にもシステムにも、デメリットはある。そのデメリットに含まれた人達にとっては、溜まったもんじゃないだろう。
自動運転技術が備えられた車しか高速道路を使用できないといった、不平等な制度が明日からできるんだったら、大きく物流は変わるだろう。だが、物流以外にもそこを使う者達がいるし、これから乗る車に自動運転技術を持つ車にしてもらうのも、遠い事になる。
「そりゃあドローンで荷物を運ぶまではできるんだよ。ただ、色んな荷物を色んなお宅に配るってのが難しいし、客の考えと荷物に統一性はねぇ。コロコロ意見も中身も変えやがる」
「僕達の仕事もドローンでできるなら、仕事辞めたいですよ。ホントねぇ……」
あーすればいい、こーなればいい。案にしては、願望よりのものが出てくるのだが。それが叶う頃には墓場行きだろうと感じている労働者。
大きな災害を経験すると、人間のみならず、社会全体に変革が起きるのも今かもしれない。
うん。なんか、時代が動いている感じはいつも。緊張と不安、楽しみが同時に来て、心と体が奮えてしまう。今までの当たり前の価値が変わるって、凄い事だと思います。
「中小企業や飲食・娯楽が沢山潰れて失業者は多くなるだろうな。可哀想に……」
「そしたら、運送関係に人が流れて来るかもな!」
「おおおぉっ!ようやく、溜まりに溜まった有給使える~?」
「転職機会は必ず来る。落ち着いたら、俺は転職するからな!二度とこんな仕事しねぇ!」
呑気な事だが、こんな災害でも嫌な意味で前を向こうとする連中もいる。
分かり辛いし、評価もされてもいなかった仕事。当たり前、当然。それらの仕事が今、一定の価値を高めたのだ。ふんぞり返っていた連中が顔を真っ青にして、自宅で洗車しながら考えていると思ったら痛快だ。
嫌な奴等だな。
もちろん、こーいう災害は早々ある事じゃない。
平和になれば、価値や評価も変わっていくだろう。
「あーー、ホント。物流の仕事をテレワーク化・ドローン化したいっつーの……」
「それが今できねぇから価値あるんだろうが!簡単に自粛もできねぇーしな!」
「言っておくが、いずれこの仕事は人がやらない仕事になるぞ」
ホントにそれは、未来でまた現れる災害などによっての変革が成されるだろう。
分かっている。複雑とは言えない部分は多々あることと、かつてのみんなが作った法律などの改善、技術の向上、機械化が求められている分野であること。
現場だって、望んでいるのだ。
「アホがーー!平均年齢、40越えだぞ!!どんだけ若手と人気がねぇーんだよ!この業界!!」
「70代・60代の爺を平然と使ってるんだぞ!!」
「仕事に困った中年以上が来る仕事なんだよ!」
「給与は低いし、残業は多いし、重労働!早く機械で配達できるようにしろ!それか業界の改善!」
この災害によって、見直される分野がいくつか出て来た。
進歩もあれば、閉ざされる道も出てきてしまう。
4月の3週目くらいの出来事を参考に書いています。
ドローンや自動運転での配達。
もし、自分が生きている間に実現されるなら感涙ものですね。
それくらい遠い話だと思います。
相変わらず、通販関係は大爆発の量でございます(笑)。
ホントに最低限の量に抑えての配送形態になりました。
人がいないんで、コキ使うなら長い期間働かせようという選択のようです。
嬉しいような悲しいような。
次回は、客層の対応や周囲の変化とかの話にしようかと。
2週目くらいは日常とあまり変化はなかったんですけどね。
この週らへんから違和感が出てきましたね。