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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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杏の頼み事

夕食時のことである。

忠王と葦妃、俶、丹丹、佳欄の五人で食卓を囲んでいた。

唐突に丹丹が立ちあがり、口をキッと結び出ていった。

俶が後を追った。

どうしたんだ?

丹丹は

厠よ。

と、下を向いて答えた。

にいにいを見て。

うるさいなあ。

もらすじゃない。

走る丹丹を俶は追った。

二才年下の丹丹は兄を振りきれない。

なにも言わずに、俶は妹の手を取り、つないだ。

ふうを見に行こう。

見ると、うなずいていた。

二人で複道を歩いた。

いつもは、輿に乗っているから、こんなに遠いとは思ってもいなかった。

くたびれた?

ううん。

おんぶしようか?

もう、自分だって、くたびれてるのに。

にいにい、優しいんだね。

にいにいは、はあ上に丹丹のことを頼まれたからね。

はあ上から生まれたのは、俶と丹丹だけだから大切にしてあげてって。

丹丹も、はあ上ににいにいのことを頼まれたんだ。

内緒だけどね。

聞いても言わないからね。


えっ、

はあ上が、にいにいのことを?

そうだよ。

いつか、わかるけどね。

ヒ・ミ・ツ

ねえ、はあ上、何で死んだの?

池に落ちたからだよ。

なんで落ちたんだろう。

にいにいだって、知りたいよ。

にいにいも丹丹も池に落ちても死なないね。

ちい上が大きなお風呂で、泳ぎ教えてくれたから。

小さな女の子で、泳げる子っていないよ。

池の側でいるのを見ても、心配しなくていいから、気が楽だ。

はあ上も、泳げたらよかったのに。

丹丹、はあ上に会いたい。

にいにいだって、会いたいよ。

さっきは、どうしたの?

母上は、佳欄ばかり見てて、ちい上はにいにいばかり見てて、やっぱり、つい、大切な子を見てしまうんだなって思えたから。

そして、お互いほほ笑みあうんだ。

丹丹を見てくれる人、いないと思った。

丹丹のことは、にいにいがいつも見てるよ。

知らなかった?

さあ、着いた。

ふうに会ってくる?

うん。

はあ上だって、にいにいとばかり一緒にいた。

丹丹には、緑児とふうしかいなかった。

ごめん、絵を画くのに、はあ上を独り占めして。

いいよ。

だから、はあ上の顔を覚えていられるから。

部屋で待っているから、行っておいで。

緑児が来てくれているよ。

丹丹様、遠かったから疲れたでしょう。

ふう、寝てるかもしれませんよ。

うん、寝顔、見てくる。

暗いから、足元、注意してください。


丹丹、かぜ(ふう)と会えた?

寝てたけど、丹丹の足音を聞いたら起き上がった。

顔と顔を合わせて、話せない。

やっぱり台が欲しい。

わかった。

呂に言っておく。

ねえ、ここの庭、綺麗だからこんなこと言いにくいんだけど、馬場にしたらいけないかな?

にいにいの馬も一緒に走らせない?

鞍をつけないなんてって、ふうがわらわれるから十王宅に居させたくなくて。

永嘉坊の厩に連れて来たけど、馬の練習、わざわざ出かけなきゃいけないでしょ。

それなら、永嘉坊で済ませない。

丹丹、にいにいの練習見てて、ふうとやってみるから。

ちい上に、聞いてみようよ。

いいって言ったら、そうしよう。

にいにい、にいにいの学問、丹丹、一緒にしたいんだけどなあ。

駄目?

だけど、丹丹、字が読めないだろう。

話がわからなければ、苦痛だよ。

えへん。

丹丹は壁に貼ってある千字文を指さし、声に出して読んでいった。

最後まで、よどみなく読んだ。

すごい。

丹丹、何故、今まで黙っていた?

う~ん。

丹丹、いつ覚えたか、わからないんだ。

ただ、はあ上がいつも、丹丹を抱いて、毎日だよ。

声に出して読んでくれたの。

千字文の言葉は、はあ上とにいにいが毎日、呪文のように口にするから、覚えさせられたって感じ。

この前、にいにいが何にしてるんだろうと、覗いたら、師匠が話してるのを聞いたの。

もっと聞きたいと思ったから。

頼んでるのよ。

ご機嫌は治ったかな?

忠王が現れ、丹丹を抱き上げた。

我が家の天才ちゃん。

え~見てたの。

やっぱり、自慢の娘だ。





馬場の件は、一応、陛下に報告しとくから。

それと、明日からでも、俶と一緒に学んだらいい。

お姫さま、これでいいかな?

もう、ちい上ったら。

丹丹を甘やかし過ぎ。

でも、嬉しい。

ちい上、大好き。

私も、杏に頼まれたんだよ。

丹丹を甘やかして欲しいって、

わがままでもいいからって、

それと、お転婆でもいいからって、

はあ上は、したい事が好きに出来る女の子がうらやましかったんだ。

だから、丹丹には、好きにさせたいって。

丹丹の気持ちを大切にしてほしいって。

はあ上の気持ちがわかった?


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