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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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王偏への改名

開元二十三年(735年)

十二月、この年の正月、北平王に任じた契丹王過折が家臣涅禮によって殺された。

一年持たなかったのである。

息子刺乾は、平州の安東都護府に逃げ込み助かった。

涅禮が玄宗に言うには、過折は刑が残虐だったと。

だから、民のために殺したと。

玄宗は殺した涅禮の罪を許した。

そして、涅禮を松漠都督とした。

ただし、言わずにはいられなかった。

そなたの部族の法は君長に対して、情がないと。

過折はそなたの王であった。

だが、悪いところがあったからと、すぐに殺した。

そなた、王になるのが怖くないか?

後の人も、また、そなたがしたように、そなたを殺すと。

後のことを考えて行動するべきだ。

王の命をたやすく取るべきではない、と。

これで何度目だ。

同じ事の繰り返しだ。

また、唐にも逆らうだろう。

玄宗はウンザリした。

突契が兵を率いて侵入しようとやって来た。

奚、契丹、涅禮と奚王李帰国がこれを撃破した。

同じ事の繰り返しだ。

安心もした。

だが、疲れたと思った。



開元二十四年(736年)

二月、玄宗は、息子・親王たちの名を改めた。

今回の名前の部首は王扁であった。

皇太子、李鴻は英

慶王潭は宗

忠王凌は與

棣王合はたん

永王澤はりん

寿王清は瑁

等等

知らされた忠王は玄宗に会いに行った。

陛下、今回は嘉い名前をありがとうございました。

その言い方はなんだ。

トゲがあるぞ。

嘉い名を付けたのだ。

もっと感謝しなさい。

はい、

ところで、寿王の名、ひどくはありませんか?

何にがだ?

瑁の意味を知っているのか?

天子の持つ、しるしの玉という意味だ。

知らないくせに、何に文句を言っている。

私の言っているのは、意味ではありません。

陛下がよく口にする、音のことです。

瑁は、ぼうと口にされ、亡、忘に通じます。

寿王との間に、何にかあったのですか?

陛下の最も愛する皇子ではありませんか?

そなた、寿王の妃に会ったことはあるのか?

いいえ、婚姻の日に呼ばれましたが、皆と酒を飲むより子らに字を教える方が、私には大切なのです。

ですから、行きませんでした。

そなたは、変わっとる。

騒げる機会だと、男どもは喜んで行くというのに。

そなたには、言っておく。

これからの朕の行動に不審を持たないようにな。

寿王の妃、楊玉環は、どうも朕の天女のような気がするのだ。

朕は、このイライラをどうすることも出来ないのだ。

陛下は、分かりやすい方ですね。

前回の改名の時も、私に、泥を浚うという意味の名を付けられました。

あの時は、皇后様のことで私に腹を立てていたのですね。

今回の立腹の理由が、天女のことならば、寿王が気の毒に思えます。

初めて会った時に、奪えばよかったではありませんか?

朕がご先祖様に誓ったのは知っているだろう。

だから、奪えなかったのだ。

朕は、唐と俶のために我慢しているのだ。

これから、何年耐えなければならないのか?

陛下、後、四年です。

ああ、このイライラ、どうしようもない。

私も関心がわきました。

寿王府に行ってみます。

陛下の天女の顔を見てきます。

でも、“忘”でも“亡”でも、驚きました。

忘れる

亡くなる、死ぬ

あからさまですね。

私は、凌と名をつけられた経験から、陛下の怒りがわかります。

盗まれたと、思われているのですね。

そうですね。

この天下の人間は、すべて陛下の者。

何にも知らずに呑気な生活を送っている寿王が、気の毒でなりません。

他の誰にも言えないでしょうから、グチを聞きに、また参ります。

では、失礼します。

嘉い名、ありがとうございます。

皆の中で、一番です。

ありがとうございました。



忠王は王府に帰り、正妃である葦妃に、寿王の妃について尋ねた。

美しい女子と聞いたが、どんな女子だ?

ええ、美しい方です。

ぽっちゃりとして、音楽と舞踊が好きみたいです。

一日中、朝から、夜まで音が鳴り止まないとの噂です。

師匠が何人も出入りしているそうです。

どうも、陛下に気に入られたくて、習っているようですね。

ほう、

つい、声が出てしまった。

明日、行って教えてあげよう。

多分、喜ぶはずだ。

忠王は、ニマニマしてしまった。

殿下、嘉い名を賜ったそうですね。

王扁に與・よ、だ。

與は与えるという字ですね。

王と与えるが一ツになった字だなんて、凄いですね。

殿下、王を貰うの意味ですね。

殿下、跡を嗣がれるのですね。

変なこと言うんじゃない。

誤解してたら、恥をかくぞ。

今日、俶はどうしていた?

午前中は、学問をして、昼からは乗馬の練習をしに、上陽宮に行きました。

殿下、丹丹が、女子の衣だと、走ると裳を踏んでいつも転ぶから、俶のような衣を着たいと、言っていました。

私にはなんと言っていいか、わかりません。

丹丹と、一度話し合ってください。

そなた、体調はどうだ?

順調です。

今度は、俶のような男の子がほしいです。

はは、俶のような子か。

ああ、生まれたらいいなあ。

だが、難しいだろうなあ。

佳蘭は、お転婆丹丹と遊んでいるのか?

はい、午前中は、いつも、後を追いかけています。

丹丹、見かけによらず、よく遊んでくれています。

丹丹が、男裝などしたら、佳蘭、真似するぞ。

そうですね。

でも、したいように、させてあげたいです。

そなた、義理の間柄なのに、寛容だな。

いい、女子だ。

俶も丹丹も幸せだな。

私も安心できる。

ありがとう。



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