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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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張九齢

李林甫なる、人物がいた。

李の名が示すように、高祖様の従兄弟から何代か後の李家の遠縁の者である。

その縁・恩蔭の制度で、役人になったのである。

李林甫は、学のない男であった。

だが、李林甫は、ある意味、抜かりのない男だった。

皇帝の周りに、情報網を巡らしていたのだ。

後宮の妃嬪、皇帝の世話をする宦官、その者たちに賄賂を渡し、皇帝に関する情報を得ていたのだ。

何に関心があるのか、何をしたいと思っているのか、知らないものはなかった。

だから、皇帝は、李林甫と話すたびに、自分の願った通りの答えが返ってくるので、ご満悦であった。

裴光庭なる侍中が、亡くなった。

その妻は、武三思の娘だった。

李林甫は、その妻と懇ろになった。

その妻から高力士に、皇帝への口ききを頼んだ。

高力士は、武三思の家に仕え、恩があったのである。

また、その妻とおなじ武氏の武恵妃に近づき、寿王の皇太子就任に力を尽くしたいと願い出た。

寿王は、玄宗の最も愛する皇子であった。

だから、今の皇太子になにかあれば、その地位を受け継ぐ者と思われていたのだ。

武恵妃は歓び、陰で李林甫の出世を助けた。

まず、黄門侍郎に抜擢された。

それから、次々と、出世の階段をあがり、

裴耀卿が、侍中

張九齢が、中書令

李林甫が、礼部尚書

となった。

李林甫は皇帝のお気に入りとなった。

だが、自分の立場を侵害するのではないかと思われる人物には、容赦なかった。

お気に入りは自分一人だけでいい。

李林甫は、自分の立場を守るために、多くの人を陥れた。

口に蜜あり、腹に剣あり

と、言われた。

だが、裴耀卿と張九齢が上役としているので、我慢をしていた。

二人は、科挙合格者で、ゆたかな知識を持っていたのだ。

二人を見ていると、劣等感が疼いた。

二人の側にいたら、自分が良く見えない。

だから、いつか陥れようと待っていた。

開元二十二年(734年)、

年明けそうそう、玄宗は洛陽に来ていた。

六月、玄宗は、幽州節度史・張守珪から契丹を大破したと連絡を受け、戦利品と捕虜が献上された。

その時、弟・薛王が病で、玄宗は落ち込んでいた。

一と月後、薛王は亡くなった。

恵宣太子と諡を贈った。

遅くなったが、裴耀卿を江淮河南転運使とした。

各地に倉庫が作られた。

三年間で、長安に運ばれた米三百万石、節約できた運送料三十万緡。

それまでは、洛陽から陝州まで牛、驢馬など荷車を使い租米を運んでいたのだ。

船に比べ、運べる量は圧倒的に少なかった。

その分、荷車の運行する回数が多くなった。

逓・宿駅・が設置され人夫の宿、牛の餌など、人手も経費もかかっていたのである。

逓は洛陽、陝州あわせ八カ所設置されていた。

洛陽から陝州まで七日かかっていたのである。

運送料の省かれた理由である。

裴耀卿はすぐれた経済官僚でもあったのである。

玄宗の望み通り、もう不作のために洛陽に行く必要がなくなった。

十二月、幽州節度使・張守珪が、契丹王屈烈と可突干の首を届けてきた。

二人の首は、天津橋の南に梟された。

突契毘伽可汗が亡くなり、子の伊然可汗が跡を継いだが、病で亡くなった。

その弟が、登利可汗として立った。


年が明けた開元二十三年(735年)

正月、契丹の知兵馬中郎李過折が朝貢に来た。

王と大臣が殺されたので、相談の末、選ばれて挨拶にきたのだ。

李過折を北平王、検校松漠州都督とした。

玄宗は、張守珪の功績を歓び、宰相にしたいと張九齢に相談した。

張九齢が、諌めた。

宰相は、褒美として、与える官位ではありません。

玄宗は、

仮に、その名は使わずにその任務を任せるのはどうか?

と聞いた。

張九齢は言った。

張守珪は契丹を破りました。

陛下が宰相となさいます。

もし、奚や突契を滅ぼしましたら、次に、何の官位を褒美となさいますか?

それを聞いて、玄宗は考えを改めた。

二月に、張守珪は捕虜を連れ、洛陽を訪れた。

右羽林大将軍を賜り、二人の子も役職と沢山の褒美をもらった。

張九齢はいつも、こんな調子で、玄宗に遠慮なく、すじを通した。

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