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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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五陵巡閲

陛下、明日からの陵への参拝、ご苦労様です。

陛下が長安を留守になさるのは、私にとって心穏やかではありません。

なにか有った場合は、いかようにしたら、いいのでしょうか?

はっきり言って、不安です。

五陵だからな。

十日以上はかかる。

そなたが、不安なのはよくわかる。

高力士を残していく。

宮中の事も、任せている。

そなたのことも俶のことも、頼んである。

だから、不安がらなくてよい。

わかりました。

父上の、その言葉を聞いて安心しました。

十日以上も、山の中を移動するのは、体にこたえます。

父上もお気をつけてください。

わかっておる。

本当は、もう少し早く出かけたかったのだが、そなたの、母親が亡くなったからな。

それと、宇文融も、死んだしなあ。

つい、最近のことだ。

宰相にしたが、悪いことをしたから九十九日で辞めさせた。

百日宰相と言われている。

張説はもう表に出ないが、反対派の者が悪いことをいろいろ言うので、宇文融に罪を問うた。

流刑地に行く途中で死んだよ。

国を守るための兵士、金がかかるのに、どうするつもりなのだろう。

国には、金が要ると言ったら、皆、黙って下を向いていた。

明日から、巡謁にいく。

こんな心持ちでは、いかんなあ。

朝早いが、俶も一緒にきて欲しい。

気持ちよく出発できる。

俶の顔をみたら、あの子はいつもニコニコしているから、つい笑みを誘われる。

朝早いのに、悪いがなあ。

わかりました。

陛下が気持ちよく出かけるのは、大切な事です。

病気でない限り、連れていきます。

献陵・高祖様

昭陵・太宗様

乾陵・高宗様と武后様

定陵・中宗様

橋陵・叡宗様

山を歩き回ることになる。

ついでに、朕の陵の候補地も探しておこう。

唐の陵墓は、太宗様の妻、文徳皇后様の遺託により、

・葬地は山に依ること、

・墳丘は築かないこと、

・棺かくは最小限にして、儀礼的な副葬品は、すべて、瓦器、焼き物にすること、

と、されている。

文徳皇后様は、常に倹約を口にされていた。

そして、御自分でも実践されていた。

だから、御自分の葬られ方が気になったのだろう。

唐の皇帝陵は、同穴合葬だ。

朕が、山を歩き回るから、ついでに、自分の陵の場所を考えておきたいと思ったのは、太宗様の陵の場所が素晴らしいからだ。

太宗様は霊峰・九そう山に御自分の陵を造られた。

前方に遮る物がなく、遠くまで見渡せ、快適に過ごせることは一目瞭然だ。

太宗様は、亡くなった妻の為に皇帝陵を造り始めた。

別のところに埋葬して、太宗様が亡くなってから、掘り起こして合葬しなくてもいいように。

太宗様が亡くなるまで、皇帝陵で待つようにとな。

高宗様は武后様より先に亡くなった。

普通に埋葬されたが、皇帝であった武后様が亡くなる寸前、皇后として高宗様の乾陵に埋葬してほしいと、言われた。

憎まれていた武后様だ。

いろいろ口実をつけ、反対された。

乾陵は入り口を鉄で塞いでいたので、開けるのが、手間がかかるのだ。

盗掘を考えての、対策だった。

だが、中宗様が母親の想いを尊重された。

あの方にしては、珍しくはっきりとした態度だった。

別に武后様の皇帝陵をつくっていたら、盗掘者に集中的に狙われたと思うよ。

副葬品は、立派なものが埋葬されていると思えるし、それに、武后様に一矢報いたいと思う者も多くいるだろうしな。

盗掘などされたら、恨まれていた武后様の遺体はどうなったことやら。

武后様、賢い選択をされたと思うよ。

武后様を納棺した後、陵は再び鉄で塞がれた。

死んでから、軽んじていた夫の高宗様に守られているのだ。

中宗様の定陵、あわただしく造り、遺体をおさめた。

この時、韋后は、中宗様を殺したとして、庶人に落とされていた。

まさか、殺した人と殺された人を、一緒に埋葬するわけにはいかんだろう。

親王の時の妻を合葬した。

父上・叡宗様は知っての通り、朕の母上と寧王の母上との魂が合葬されている。

宮城から送りだす時は、付いて行きたいと思った。

だが、規則では、皇帝は付いていけない。

警備が手薄なところで、なにかあればいけない。

それに、そなたが不安になるように、宮城で何かあってもいけない。

いずれにせよ、埋葬に同行はするべきでないと、いにしえより言われている。

次ぎの皇帝の代が、落ちついてから行くのがよいとな。

だから、明日いくのだ。

五陵は、長安の北、渭水の北にある。

叡宗様の橋陵は、五陵の中で一番東にある。

そして、その次ぎにあるのは、中宗様の定陵、次ぎは高祖様の献陵、次ぎは太宗様の昭陵、次ぎは高宗様の乾陵。

この順序で、詣ることになる。

明日は、東門、春明門からでる。

興慶宮のすぐ側だ。

門を出て、細柳原を通り、渭水を渡って行くことになる。

陵の拝謁は夜明けと共に始まる。

それまでに、身なりを整え、陵の前にいなければならない。

この季節、素足は辛い。

真っ暗な中を陵まで歩くのは大変だ。

結構、距離があるようだ。

聞きずらいだろう。

グチを聞かせて、悪いな。

だが、俶の父親であるそなたには、言える。





俶はどうしている?

今は、母親とお絵書きごっこです。

お互いの顔を書いています。

毎日していると、上手になるものですね。

母親にあっかんべーをさせた絵を書いていました。

下手なのが手間のかかる顔を書くものですから、見ずらい絵でした。

唐の地図、壁に貼ると言うものだから、大きいのにしたが、貼っているのか?

はい、字の勉強にもなっています。

国の名前は、変則的な読み方をするものがありますから、この字でこう読むのだと、二人で言っています。

杏と二人でです。

陛下が五陵に行かれると聞いて、今度は、長安付近の地図が欲しいと言っています。

五陵も入っている地図です。

わかった。

帰ってからだ。

杏は、いい教育をしていると思うよ。

日日の生活の中で知識を蓄える。

関心を呼び覚ます。

いいことだ。

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