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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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女子・誕生

暑いですね。

陛下、御機嫌伺いに参りました。

侍医から連絡があったことと思いますが、二人目の子が誕生しました。

女の子です。

杏は、なんと言っている?

女の子で良かった。

と言っています。

私を喜ばすために、

皇后様に似た娘が欲しい。

と言っておりましたから。


俶とは、いくつ違いになるのだ?

俶が今三才、赤子は一才。

二才、違いです。

杏は、今、いくつだ?

俶を生んだのが、十四才。

今は、十六才です。

初めて会った時、子どもっぽかったから、子を産むとの報告を聞いて、ちょっと驚いた。

あんなに痩せていたのに、よく産んだものだな。

私も、初めての子のことなので赤子のことはなにも知らず、あるがままを受け入れて、不思議に思わなかったのですが、今思うと、よく産まれたと。

これは、天に感謝です。

ただ、最初の男の子は、杏に生まそうと決めていました。

だから、焦りました。

陛下が妃を選ぶと、聞いたものですから。

杏は皇后様に似ていました。

最後に会った皇后様は、あの時の杏みたいに、やせていたのです。

だから、なおさら良く似ていると思ったのでしょう。

皇后様に似ていたから、最初の男の子は、是非、杏に生ませたいと、

あの者の身分では、王府で肩身の狭い思いをするのは、分かっていたからです。

長子の母親ならば、王府の中での立場が、少しは強くなるのではと思いました。

まあ、願いは叶ったわけです。

朕が、俶を最初見た時、十月だから寒かったのか、まだ腹の中にいるかのように、手足を縮めていたなあ。

痩せた小さな赤子だった。

ただ、眼はじっと見られると、なんだか見透かされているような気がしたがな。

生まれた子、朕の誕生日と、何日ちがいになるのだ?

八月十三日生まれですから、陛下と八日違いです。

名はどうする?

朕が付けてもいいが、俶の時のように、もう考えられていれば、必要ないか。

俶が、今、考えてくれています。

私たちに、いろいろ聞いてきます。

自分と同じように、花の名前がいいと。

最近まで咲いていた、牡丹が綺麗だったと。

ただ、花の印象と赤子の印象が合わないように思えます。

皇后様に似ているといえば、お分かりでしょうが、艶やかさより、清らかさが印象に残る子どもです。

今、話し合いの真っ最中です。

俶は妹をすんなり受け入れたのか?

いえ、赤ちゃんが産まれると伝えた時、いらないと言いました。

父上を取られると、声を詰まらせました。

ほう、嬉しかっただろう。

はい、私は俶が喜ぶことを、いつも考えて、毎日を過ごしていました。

報われたと、思いました。

そりゃ、そうだろう。

嫉妬など、まあ、することはあっても、されることのない人間だったからな。

その通りです。

俶に言わせれば、“いっとおちゅき”と、言うことです。

杏はどうだった?

分かっていたみたいです。

母親である自分より、父親を好きみたいと、随分前からグチツていました。

でも、仕方がないと。

好きになられるだけの事をしていると。

かつて無いことが、私に起こりました。

幸せを噛みしめています。

そなたの顔をみればわかる。

朕の誕生日、動物の余興の時、席を外し、俶を抱いて、近くで見ていたな。

象の時、俶にリンゴを持たせ、餌やりをさせていたな。

ええ、俶が喜ぶのです。

一度、渡し損ねたリンゴを、地面に落ちる前に、象が鼻で拾ったものですから。

それ以来、わざと変な方向に投げては、象に鼻で取らせて面白がっています。

そなたと俶が、重臣たちの間で話題になったのだ。

あの時の俶が、可愛いくて美しいと。

あんなに笑っている子どもは見た事がないと。

それと、そなたが、忠王だとわからなかったようだ。

朕が、忠王だと教えると、別人のようだと驚いていた。

来年からは、俶も宴に連れて来るように。

来年、開元十七年は、これまでの様に内々で開く誕生祝いではなく、朕の誕生日八月五日を唐王朝の祝日とする事を前提とした誕生会となる。

そこで、休日を設け、寺院や道観でも斎を行うことなどが考えられている。

そこら辺りは、張説が考えてくれている。

陛下、太宗様だって、百年ほど前ですが、内々に誕生日を祝っていました。

民にしてもそうです。

中宗様にしても同じです。

誕生記念に詩会を開いていました。

誕生日を祝うことは、今では特別なことではありません。

陛下は名君です。

遠慮はいりません。

陛下の誕生日を王朝の行事となさっても、誰も反対する者はいませんよ。

もし、誰かが始めるとしたら、陛下が相応しいと、私は思います。

そうか?

そういうふうに言われると、悪い気はしないな。

名称はあと一年あるから、いい名が選らばれるだろう。

誕生日を祝った後で、これからも決まった形で続けていくために、国の行事としようという、百官の総意という形で、宰相たちから上表されることになっている。

王朝の行事が一つ、増えることになるな。

だから、来年からの朕の誕生日には、俶は必ず参加するように。

場に慣れなくてはな。

いずれ、中央の席に座るのだ。

それと、なにかの行事でそなたが参加する時は、なるべく連れて来るように。

俶のためでもある。





赤子の名が決まったら、教えてくれ。

祝いの品は何がよい?

相談して決めたらいい。

それと、俶に子馬を贈りたい。

相性があるから、俶と牧場に見に行くように。

永嘉坊で飼ったらいい。

よく会いにいって、可愛がったら、仲良くなれるだろう。

勝手に、乗らないように。

学んでからだ。

変な癖がつくと困る。

だが、馬に乗り慣れることも大事だ。

最初の乗馬はそなたと一緒に乗るのが一番いい。

俶は安心して、楽しむだろう。

子馬は、俶が乗り慣れてから、調教したらいい。

それまでは仲良くなるのが一番。

なんでも、出来なければな。

文武両道だ。

念頭において、育ててくれ。

頼んだからな。

そなたに、頼みごとをするなんて、考えた事もなかった。


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