表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
68/347

張説

お久し振りです。

ご機嫌伺いに参りました。

おお、よく来たな。

元宵節はどう過ごした?

陛下が、いろいろ催しものを用意してくださっていますから、俶と楽しく過ごせました。

それは、良かった。

元宵節の出し物は、朝賀の時と違って、見る人が動いて行くから、完成度が要求されないので、気が楽だ。

新人の鍛練の場に、ちょうどいい。

俶は順調か?

ええ、問題はありません。

陛下、張説と宇文融、意見が合わないようですね?

妻と子に夢中で、家から出てこない、そなたにまで聞こえたか。

前からだ。

例の逃戸の事だ。

戸籍を調べて、洗いだし、本籍地に戻す作業をしたら、八十万戸出て来て、数百万銭の税銭が徴収できた。

せっかくの、まとまった額だ。

中宗様の時に、他の経費に流用して、義倉は空っぽになっていたから、義倉に使ったよ。

五年ほど前のことだ。

だけど、張説が言うには、宇文融の部下が胡麻をすって、多めに徴収したと言うのだ。

宇文融の実績を上げるためにな。

だから、活戸政策は、余分に税銭を徴収される農民の為にはよくないと。

それでは、逃戸が減らなくて、解決にならないとな。

当初は、戸籍のある場所に帰すやり方だったが、後で、今いる場所で戸籍を作るように変えた。

それでも、逃戸はなくならない。

宇文融は、任子で官吏になった。

張説は、科挙で任官した。

立場が違うから、考えが違うとは言えないみたいだな。

張説は宇文融の言うことには、なんでも反対なのだ。

張説のような成り上がり者には、親の力で任官できた者は、我慢ならないらしい。

だから、話をしても、折り合いがつかないのだ。

それならば、張説にはこうやればいいという案があるのかと言えば、なにもない。

だのに、宇文融の案には、頭から反対なのだ。

いやに、なるよ。

おまけに、二人とも、徒党を組んでやり合うものだから、去年、左遷したよ。

張説には退官を命じ、宇文融は魏州刺使だ。

張説は、出仕の必要がなかったものだから、初学記、集賢院の学士たちと協力して、思ったより早く出来た。

ちょうど、良かったんだな。

だが、二人とも、朝廷には必要な人間だ。

この正月呼び戻し、宇文融は戸部侍郎にした。

やっぱり、戸籍のことは、宇文融にまかせたら安心だ。

張説も少ししたら、復帰させようと思っている。

二人の争いは見たくない。

政事には、しばらくかかわらさせないでおく。

集賢院の学士たちとは順調みたいだ。

だから、集賢院の院長としと、復帰させるつもりだ。

よくわかったよ。

経済政策には、科挙系の役人はダメだとな。

詩を作るのは、得意だが。

それと、こんなことを言うのはなんだが、逃戸は、地主層に受け入れられて客戸になっている。

張説も、今では立派な地主だ。

いい土地を買いあさっている。

朕は、多田翁、と呼んで、からかっているがな。

地主は、土地をもてばもつほど人手がいるのだ。

田畑は耕して、作物を収穫しての値打ちだからな。

だから、働き手がいるのだ。

その人手を逃戸に頼っている。

それだから、反対なのかと、思ってしまう。

朝廷の役人は、皆、土地を持っている。

そなたも、封地として持っているだろう。

だが、逃戸を受け入れ、客戸として、持っている土地で働かそうとは、考えないだろう。

今、働いている者がいて、余分に人手はいらないからな。

だが、張説は土地を買っている。

その土地を耕す、新しい働き手が欲しいはずだ。

国家の経済と、張家の経済のどちらを考えているのか、疑ってしまう

張説は、武后様の時に科挙に受かった。

張易之、張昌宗の兄弟が、魏元忠に、公衆の面前で恥をかかされたことがある。

武后様にも面と向かって、張兄弟のことを非難した。

だから、張兄弟は、

魏元忠が謀反を起こそうとしていると、嘘の告発して、仕返しをしようとした。

張説は、その濡れ衣事件の証人になるよう、張兄弟に頼まれた。

希望する官位に付けるから、との条件だった。

この告発が公になってから、証人として登場した張説に、

魏元忠が謀反なんてするわけがない。

本当の事を言うように、と

多くの人の声がかけられた。

結局、張説は張兄弟を裏切った。

謀反はでたらめと、証言したのだ。

張兄弟に背くということは、武后様に背くという事だからな。

張説は罪に問われ、流刑になった。

流刑先では姿を隠した。

刺客を恐れたのだ。

この話を聞くと、一見、張説が正義を貫く立派な人物に見える。

だが、証人として出て来たという事は、張兄弟の話を受け入れたという事だ。

張説は、美官に心が動いたのだ。

張説は、偽証するのに声をかけられた。

当時、あの人なら引き受けるだろうと見られるような人物、だったって事だ。

二年後、中宗様が帝位につかれ、張説は召還された。

朕、十九才の時の最大の話題だ。



朕と張説を繋いだのは、父上、叡宗様だ。

張説は、仕事の出来る男だから、叡宗様の眼に止まったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ