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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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初めての元宵節

今日は、何の日かわかる?

うん、分かる。

じゃ、言ってみて。

ううん、なんか、恥ずかしい。

分かって、いるんだね。

そうだ。私たちが、初めて会った日だ。

私にとっては、忘れられない日だ。

母上そっくりの、そなたに、会えた日だ。

あの日は、元宵節、初日だったんだよ。

宮女たちは、主の私に旨いこと言って、外出の許可をもらって、潮が引くみたいに、居なくなってしまった。

だから、王府には、私が一人残されていたんだ。

それまで、私は皇后様と宮中に住んでいただろう。

皇后様は外出が許されていなかったんだ。

後宮に住む女子は、一生、宮中から出られないんだ。

陛下と一緒とか、陛下に許しを得た時なら、出かけられるけどね。

そりゃ、例外もあるけどね。

上官婉児なんかは、宮廷の外に屋敷を持っていたからね。

お襁褓をして、掖庭宮に入った婉児は、中宗様の妃になるまで、外の世界を知らなかった。

だから、中宗様にお願いしたんだろうね。

毎日のように出かけたみたいだよ。

我が家に帰っている、と、言えば、そうなんだろうけど。

皇帝の寵妃だからね。

それに、婉児は官吏、役人でもあったからね。

例外の一人だ。

私も出かけようと思えば、出かけられた。

でも、皇后様をおいて、出かけたりしなかった。

だけど、宮城でも、灯籠は飾るんだよ。

安福門の外側にね。

高くて大きな、丸い枠を作ってそこに金、銀の飾りを付け、それになん万箇の灯籠をかけるんだ。

灯籠の光が、金銀の飾りに反射して、キラキラ輝やいて、豪華で美しいんだ。

遠くから観ると、花樹のように見えるんだ。

皇后様が出かけられないから、いつも、安福門の上から一緒に見てたんだ。

長安中の、それぞれの家が自慢の灯籠を家の前にかけるから、街が、光り輝やいているんだ。

そして、街の所々で、舞踏や音楽会、百技など、催しものが披露されている。

陛下が、教坊の楽士や踊り子、百技の者を余興に動員しているからね。

見ている人も、楽しめると思うよ。

いつもは、夜間の外出は禁止されているけど、元宵節の夜だけは許されているから、あちこちの催しものを見ようと、朝までうろつく人も、たくさんいるよ。

王府に一人で住むようになっても、いっしょに行く人がいなくて、見に出かけたことがないんだ。

杏、私と出かけないか?


なんか、女子にも、男子にも好かれない男子って、告白してるみたいで、ちょっと、恥ずかしいんだけど。

いっしょに出かけてくれる?

来年は、赤ちゃんが小さいから、杏は出かけられないだろう。

いっしょに行けるのは、今年だけなんだ。

来年、俶が行きたいといったら、私が連れていく。

私、濮陽の田舎の観灯しか知らないの。

嬉しいお誘いだわ。

殿下は、体を気づかってくれる。

殿下となら、安心して、出かけられる。

今日が初日なんだ。

私も、出かけるのは初めてだから、子供に戻ったように、ワクワクしてる。


俶、私は、赤ちゃんが心配だから、母上にくっついているからね。

そんなふうに言うと、蓮が可哀相。

蓮、父上と母上の間にいて。

三人で、手を繋ぎましょう。

とっとは出来なくてゴメンね。

俶、今日の長安はどうだ?

うるしゃくて、明るくて、夜じゃ、にゃいみたい。

元宵節は三日続くんだ。

お正月は、新しい年で、初めて太陽が出る日なんだけど、元宵節は、今年初めての十五夜、まんまるのお月様、満月の出る日なんだ。

だから、めでたいんだ。

お正月と似てるよね。

もともと、道教のお祭りだと言うけれど、いろんなめでたいことがあるんだ。

仏教でも、ありがたいお話、講が行われるしね。

当然、道教でも講があるよ。

紫姑神、あっ、厠の神様のことだよ。

この神様がやって来て、いろんなことを占うんだ。

まずは、農業のことなんかね。

豊作だろうか?

旱魃はないか?

とかね。

俶、なにか欲しい物があったら、言いなさい。

灯籠って、いろんにゃのがあるんだにゃ。

どれか買おう。

ウサギ、虎、龍、せっかくだから、我が家でも、飾ろうよ。

俶、なにがいい。

たくしゃんあって、えらべにゃい。

じゃ、よく考えて、決まったら買おう。

急がなくていいから。

私にも、買って。

私、龍にする。

ちゅくが、欲しい。

じゃ、母上は別のにする。

蓮、龍でいいの?

うん、りぇん、龍がいい。

じゃ、母上はウサギにする。

蓮が、目を輝やかして、自分の物になった龍をいじっている。

ねえ、殿下、あの塊の人たち、なあに?

どれ?

女子が十人位、塊になって歩いている。

あっ、伯父上だ。

寧王様だ。

説明したら、杏、気を悪くするよ。

赤ちゃんに良くない。

ウヤムヤにされるのは、嫌。

知りたい。

はっきり言って。

今日は、一月十四日。

なんで、十五日じゃないのに、祭りがあるのか?

三日間あるから、十五日を中心にして、十四日、十五日、十六日、行われるんだ。

それに、十四日も、次の日の朝、太陽が出る少し前までは、十四日だからね。

まだ、太陽が姿を現さなくても、光が、次の日の太陽の出現を告げるだろう。

それが、次の日のはじまりだ。

俶、あまりいじると、紙と木で出来ているから、こわれるよ。

こわれたら、直したらいいけどね。

さあ、行こう。

次は、なにがあるかな?





今、粉で作ったものが、流行っているんだ。

なにか、食べる?

杏、怒らないで。

杏、怒っているの、すぐわかるよ。

俶が、変に思うよ。

あれは、なんだったの?

言ったら、杏は腹を立てる。

赤ちゃんに、よくない。

違う話ばかりして、ゴマかさないで。

私は、知りたいの!

伯父上は、風除けに、太った女子にまわりを囲ませているんだ。

さあ、帰ろう。

体調が悪くなる。

俶、明日の夜、また、来よう。

お腹の赤ちゃん、多分、知りたがりやの怒りん坊さんだよ。

俶の時は、毎日、穏やかに過ごしていたから、俶は温厚だ。

だから、杏、母親が穏やかに過ごすようにして。

赤ちゃんの為でもあるんだ。

お願いだ。

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