表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
64/347

杏の感謝

私、殿下に会えて、家族を持てた気がする。

だって、私から生れた子を愛してくれている。

だから、私もその子の父親に安らぎを感じる。

そして、まだ、生まれてもない子が、いとおしい。

私も、家族がいない訳ではなかった。

でも、父は私を愛してくれなかった。

私から拒んだ訳ではない。

でも、女子だからと、いう理由で拒まれた。

母も、弟たちを重く見ていた。

それでも、平等であろうとしていた。



上の二人の弟は、父親を見習って、私に、“女子の癖に、”と、言ってたわ。

私に、偉ぶっていた。

掖庭宮で生れた、一番下の弟は、私が母親を手伝って世話をしたわ。

やっぱり、手をかけると、笑ってくれるの。

初めて、弟が、可愛いと思えたわ。

上の弟たちが、掖庭宮をでる時、悲しくなかった。

あっ、そう。って感じ。

送られた先で、頑張ってって。

家族という名の、他人。

宮中では、よくあるわよね。

我が家は、側室はいなかったけど、同腹で、こうなんだから、たくさんの側室がいたら他人だらけね。

下の弟が掖庭宮をでる時は、何日も前から、涙が出たわ。

これが、家族だと思えた。

母も、乳母に任せず、自分で世話した分、上の弟の時とは違っていた。

こんなに小さいのに、馬の世話をするのね。

って、泣くの。

まだ、世話をしてもらわなければならない年なのに。って、

私も母も 違ったわ。

三人は、家族になっていたの。

湊が、出ていってからは、私と母が

これからは、二人で助け合っていこう。と、

口に出さなくても、思ったわ。

母は、私だけの母になったの。

身内の情をたっぷり味わった。

今まで知らなかった感情よ。

私には、父はいらない。

母だけで、十分。

父のために流す涙はないわ。

存在しなかった人と同じ。

ひどい娘でしょう。

“身体髪膚、これ父母に受く。”

体を授けてもらった恩はあるのよね。

否定はしないわ。

その分だけの、孝行をするわ。

私を見たら分かるでしょう。

父親の態度で、家庭はどうにでもなる。

殿下が、二人のいい父親でいてくれたら、私は、それで幸せ。

だから、同じようにしてあげて。

お願い。

そしたら、仲の良い兄弟になれる。

片方が、もう一人を見下す事はないわ。

私の人生は、あきらめていたの。

掖庭宮にいたから。

流されて行こう、と思っていた。

どうせ、母と同じ病になるのだし、

辛かったら、人生を逃げ出したらいいのだから、って、

でも、殿下が現れた。

意固地で、かたくなな私を、変えたわ。

今の私は、ただ子供の幸せを願うだけ。


殿下、ありがとう。

今、私は殿下に寄りかかっているわ。

寄りかかっているのは、体だけではないのよ。

わかって、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ