大晦日の夜
今日は大晦日、俶は、徹夜できるかな?
無理だろうな?
徹夜って、にゃに?
徹夜は、夜眠らずに、次の日になるまで起きていることだよ。
にゃんで、徹夜しゅるの?
唐では、どの家も徹夜すると思うよ。
徹夜することは、親が長生きすることを祈ることなんだよ。
杏は、両親も亡くなっているし、お腹に子供もいることだから、早く寝なさい。
無理をしないように。
私は父上の長寿を祈って、起きているよ。
ちい上がするのなら、ちゅくも、しゅる。
そうかい。
有難いな。
私の長生きを祈ってくれて。
また、私だけのけ者にして。
体の許すかぎり、私もする。
杏には、早く寝てもらわねば。
明日の元日は、私は朝から忙しくて、俶といられない。
そなたに、俶を見てもらわねば。
唐の同盟国の者たちが、朝賀のために、訪れている。
式があるのだ。
終われば、宴もあるしな。
陛下に、
皇太子の立ち居振る舞いをよく見ておくように。
と、言われたよ。
それより、陛下が一日座ったままでいる。
あれって、疲れるだろうな。
皆のあい拶の間、じっとしてるのは。
皇帝って、いいことばかりじゃないんだ。
考えた事もなかったよ。
ああ、それもあって、明日は、長い間、そなたに、俶の世話を頼むことになる。
しんどいと思う。
悪いが、早く寝てくれ。
分かったわ。
俶、新年になったら、爆竹が鳴るから、うるさくて、びっくりするぞ。
ばくちゅく、ってなあに?
爆竹は、縁起物で、その音でびっくりさせて、悪霊や悪い気を追い払うんだ。
パンパンって、うるさいぞ。
俶は、初めてだな。
今年の正月は、ぐうすか寝るばかりの赤ちゃんだったからな。
すごく、可愛かったぞ。
今も、可愛いけどな。
そろそろ、日が変わる頃だ。
興慶宮の方から、夾城に出て外を見てみよう。
陛下は、明日の式のため、大明宮に行って、興慶宮にはいないだろう。
遠慮なく、使わせてもらおう。
呂、興慶宮の警護の者に、扉を開けてもらってくれ。
呂も、一緒に行こう。
ここの通路は、上の方が、開いているから、大人は歩きながら、城内を見ることができる。
外からは、下から見るようなるから、こちら側から覗かないかぎり見えない。
うまく考えられているな。
さあ、俶、肩ぐるましよう。
音が、しはじめた。
城内が、爆竹の音と煙、火花であふれている。
俶、どうだ。見えるか?
ン、ねむかっちゃけど、眼がちゃめた。
こんなところが、あるんだにゃ。
もう、少ししたら、たくさんの火が、大明宮に向かって、集まってくるよ。
見ててごらん。
最初は、遠くの方に、ポツポツと見えてくる。
あれは、遠くに住んでいる人が、宮城に来るため、早く出かけるからなんだ。
手にたいまつを持っているんだ。
真っ暗だからね。
参内する人の数だけ、たいまつがあるんだ。
いつもは、馬に乗ったり、馬車で参内する人も、今日だけは、手にたいまつを持って歩くんだ。
これも、新年の儀式といえるな。
この、たいまつ行列を、火城というんだ。
高いところでなければ、見られない。
夾城があって、よかったよ。
俶と、見られる。
俶、早く帰って、寝よう。
明日は、父上は家にいないから、朝は、ゆっくり起きなさい。
母上は、赤ちゃんがいるから、体を使う遊びは、呂に頼むんだよ。
父上は早く帰るようにするけど、くたくたで帰ると思う。
遊べなくて、ごめんな。
俶が、いい子で助かるよ。
父上は、俶がいるから、頑張れる。
父上は幸せなんだよ。
ありがとう。