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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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学び始め

なあ、蓮が関心をもったようだから、この機会に教えてみようか?

少し、早すぎる気もするが。

本人が嫌がらなければな。

嫌がったら、すぐにやめたらいい。

そうね。

呂、細い筆を二、三本、用意してくれ。

急いでくれ。

かしこまりました。

さあ、蓮、父上と文字の勉強だ。

てん、一、ニ、三、四 、天

四回で、書くのだ。

ち、一、二、三、四、五、六、地

六回で、書くのだ。

杏は、墨を摺ってくれ。

それと、紙の用意を。

げん、一、二、三、四、五、玄

五回で、書くのだ。

おう、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、黄

十一回で、書くのだ。

蓮、一人で書いてごらん。

殿下、無理ですよ。

まあ、見ててごらん。


ちぇん、っち、ぃ、ん、ちぃ、ちぇん

ようし、蓮、偉いなあ。

すごいよ。

怯えたような、うれしいような、表情で、杏は、固まっていた。

筆が用意された。

さあ、筆に墨をつけて、紙に書こう。

てん、という字だ。

蓮に、細い筆をもたせ、ちゃんと指の場所一つ一つに指を置かせていき、その上から、自分の手でくるみ、持った。

さあ、天を書こう。

一、

最初に、筆を置いて書く時は、すぐに書かずに、次に筆の止まる所を見て、力を入れて止まる所めがけて、書くのだよ。

杏も、聞いておくように。

二、

最初の一と同じようにしよう。

三、

今度は、上から下に向ってだ。

やはり、筆を置いたら、少しずつ下におりていき、二番目の横線をすぎたら曲がりはじめ、この時、手だけが曲がるのじゃなく、体も一緒に曲げよう。

そしたら、自然な曲がった線になる。

四、

次は、二番目の横線と、上からの線の交わった線の中に、筆を置いて、力をこめながら、ななめに下りていく。

だから、線がだんだん太くなっていく。

そして、左の線と同じ高さの場所めがけて、太くなった線を、筆を持ち上げることによって、筆先を一つにして、細い線で自然におわる。

ああ、二度と説明はしない。

これからは、実践のみだ。

疲れたよ。

食事にしよう。

杏、私はいいが、蓮の食事は吟味したものを、ちゃんと食べさせてくれよ。

少ない、そなたの仕事だ。

後は好きにしたらいいから、蓮の世話は、手を抜かないでくれ。

頼んだよ。

さあ、食事にしよう。

蓮、父上は、くたくたで腹ペコだ。

墨がついてる、

手を洗ってこよう。

杏、食事の用意、頼んだよ。


蓮、お腹がすいていたんだな。

えらく、ガツガツしてる。

皇子さまらしくないぞ。

蓮は、なにが好きなのかな?

お皿のもの、好きなの全部食べていいから、

アンガトマアス

そなた、肉が好きなんだな。

杏、蓮をこんなに飢えさせないでくれ。

時間がきたら、すぐに食べさせてほしい。

小さい子は、胃が小さいから、一回分、余分に食べさせてもいいくらいだ。

見ていたら、悲しくなる。頼んだよ。

殿下、誕生会はどちらでされるのですか?

王邸ですか?

私の王邸は王府といっしょだ。

普通、いっしょが多いな。

私の王府は、ここのように、大明宮に近くない。

皇宮の西側なのだ。

皇帝の居住する所は大明宮。

皇宮より東側だ。

王府から、大明宮まで、けっこう遠いのだ。

それもあって、皇后様の所に行くのが、おっくうになったのだ。

だから、十王宅でする。

王府からは、持ってくるような物はない。

婚姻は、洛陽でしたから、妃たちの物はなにもないし、帰らずとも問題ない。

私の王府は、太平公主の持ち物だった屋敷だ。

太平公主は何軒もの、良い物件をもっていた。

私に下賜されたのは、太平公主に死を賜ったあとで、私がまだ幼かった時だ。

多分、太平公主にはばかって、私を殺そうとしたから、償いのつもりだったのだと思う。

だけど、幼い子供に、あまり立派な物も、与えられない。

醴泉坊、ここの井戸は、その名のとおり、水が甘くておいしいだけでなく、身体によいとされている。

隋の一時期、宮中にここの水が提供されたというくらいだ。

それで、私に、ここを選んだのだと思う。

だけど、皇城の西側は軍関係の建物が多いし、けん教の祠がやたら多くて、胡の人がうろついていて、眼の前は西市で外国人ばっかりで、落ちつかなかった。

住むにはうるさ過ぎる場所だ。

軍の建物があるといったが、住んでる人も、偉い武官が多くて、馴染みのない人ばかりだった。

周りに、知り合いもいないし、あまり好きとはいえない場所だった。


だから、十王宅を喜んているよ。

妃たちにも、王府には行かなくていいといっている。

なにより、ここに近いのが気にいっている。。

蓮は賢いなあ。

私とはまるで違う。

殿下、千字文、私、母親と蓮を洗いながらや、切りながら、最初から最後まで、二人で歌を歌うみたいに、口ずさんでいました。

だけど、母親が亡くなって、口にしなくなって、自信がなかったんです。

一度、やり直してみたら、思い出します。

私、蓮と毎日、暗唱します。

暗唱する時、その字をおさえるようにしたら、音と形が、繋がると思います。

私自身のためにも、蓮のためにも、したいと思います。

手伝ってくださいね。


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