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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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千字文

杏、そなたも、蓮と遊んで疲れただろう。

蓮が寝ている側で、横になっていなさい。

私は、そなたのために、この部屋に、勉強するための一角を作るよう、呂に指示するよ。

そなたは興奮している。

少し眠って、休むといい。

落ち着くから。

十九日間の旅で疲れがたまっているのだろう。

さあ、私の想い人は、疲労困憊だ。

蓮と二人で並んで寝たら、なんの字かな?

元気に起きたら、千字文を読もう。

元気でなければ、お預けだ。

たくさん寝た方が、早く回復する。

屋根の下だから安心して、寝なさい。

側にいて、見ているから。

忠王は、杏に布団をかけて、まぶたを閉じさせた。

そして、杏の手を蓮のお腹においた。

その手の上に自分の手をのせた。

冷たい手だ。

暖めよう。

少しして、手が暖まると、杏の寝息が聞こえてきた。




杏の為に、隣の部屋を書斎にして、一続きの部屋にした。

これで、捜しまわらなくても、必要なものが、すぐ手に入る。

後は、蓮がまねをしようとしても、困らないように、細い筆を用意するだけだ。

蓮用の、かわいい椅子も準備しよう。

眺めまわして、

まあ、こんなものだろう、と、口にした。

見ると、蓮がこちらを見ている。

起きたのか?

小さく、声をかけた。

抱き上げ、

母上が、寝ているから、静かに。

おしっこをしよう。

どこで、しようか?

ここは、蓮の屋敷だから、どうする?

そうだなあ、蓮専用の、おしっこの場所を決めよう。

立ちション用のな。

蓮が、大きくなったら、からかってやろう。

ヤア

そなた、本当にわかっているのだなあ。


いいところを見つけたなあ。

蓮、スッキリしただろう。

母上を見に行こう。

まだ寝ていたら、屋敷の探検だ。

母上は綺麗だろう。

父上は大好きだ。


見ると、座って欠伸をしている。

こちらを向いた。

飛び上がり、かけてきた。

忠王と蓮を素通りして、書斎の机に眼を奪われている。

それから、忠王と蓮に抱きついた。

さあ、教えて!

蓮を抱いたまま、木簡を渡した。

読んでごらん。

ヤア

忠王と蓮はお互いに顔を見た。

母上には呆れたね。

三人で笑った。

自信がないから、最初からお願い。

口づけしてくれたらね。

まあ、蓮、父上に口づけしていい?

ン、

杏は、ほっぺに、口をあてた。

ヤア

今度は、忠王が、蓮のまねをした。

ほっぺは、ヤア

口がいい。

蓮、父上が、口に口づけって、母上は蓮の口づけがいい。

蓮は、顔をつきだした母親の口に、口をあてた。

じゃ、次は父上に、

蓮は、顔をつきだした父親の口にも、口をあてた。

忠王は、杏に口をつきだして

今度は私。と

催促した。

呆れた。と

言って、忠王の口を、杏の口びるが通りすぎた。

すこし、かすった。

三人で笑った。


天地玄黄 宇宙洪荒

忠王が読んだ。

さあ、一つ一つ字を押さえて読んで。

さあ、蓮、母上のお勉強の時間だ。

蓮は見ていなさい。

蓮をおろして、杏の後ろから右手をもち、

天 一、ニ、三、四と、空に天の字を書いた。

自分で書いてごらん。

すぐには覚えられないから、一人の時、練習するように。

次ぎは

日月えい昃 辰宿列張

忠王は同じように、続けていった。

五行、四十字すむと

今日はここまで、

蓮と遊ばなきゃ、

と、言った。

蓮を見ると、ふにゃふにゃ、言いながら、右手を振っている。

蓮も、母上に習って、千字文を学んでいる。

そなたは、いい事をしてみせているのだなあ。

私も気合がはいってきた。

殿下、部屋を私のために用意してくださって、ありがとうございます。

私、蓮に見られていると、よくわかりました。

蓮と、学ぶつもりです。










私、幸せです。

早く学んで、陛下が用意してくださった本、すらすら読みたいです。

私も、考えて作られた知識の本、楽しみです。

断片的な知識を恥じていました。

殿下の話に合づちを打つだけでなく、自分の意見も言えるようになるなんて、考えたことなどありません。

少しでも、近づけたら、生きていた甲斐があったと思います。

感謝します。


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