潼関
さあ、潼関に着いた。
ここが、長安でもっとも大切な場所だ。
ここが、あるから東からの攻めに、心配がいらないんだ。
長安は、東から入れるのは、ここだけだから、ここさえ守れば安心なんだ。
長安は南は秦嶺山脈が連なっているから、守ってくれている。
北は、渭水が流れ、簡単には、渡たれない。
もし、橋をつけているならば、こちらからはずせばいい。
向こうから橋をつけるなら、邪魔をすればいい。
西は、秦嶺山脈が川まできているから、大丈夫。
長安に来ようとすれば潼関からか、渭水を渡るしかないんだ。
地形が守ってくれているんだ。
要害だろう。
そりゃ、山脈の低い場所もあるから、来ようと思えば、来ることもできる。
でも、大変な苦労をする。
着いた時には、疲れていて、とても戦えない。
効率的な侵入路とは、言えない。
なんせ、守りに徹した場所だから、前漢の都でもあったんだ。
周りにはある程度の人を養える土地もあるし、いい所だ。
今の長安は人口は多すぎて、無理だけどね。
さあ、蓮、おいで?
潼関は砦だ。
見に行こう。
男の子は、いろんな事ん知っておいた方が、後の役にたつことがある。
母上は屋根の下で、今日はゆっくりとやすめる。
杏は、部屋にいるかい?
ううん、ご一緒します。
じゃ、行こう。
蓮、向こう側に、こっちに向かって水が流れてきているのが見えるだろう。
あれが、黄河だ。
陝州で、横を流れていた黄河、同じ川だ。
離れているけど、押される気がして、落ち着かないな。
向こうに行こう。
なんか、疲れた。
部屋で休んでてくれ。
他の者たちの様子を見てくる。
陛下、ちょっと、いいですか?
最近は、ちっとも、顔をださなかったな。
どうしていた。
いえ、さっき、黄河の流れを見ていて、気になっていることを、はっきりと、お聞きしておこうと思いまして、お訪ねしました。
なんだ、言ってみなさい。
次ぎの皇太子は私に、とおっしゃいましたね。
ところで、人払いをお願いします。
高力士、頼む。
さあ、話しなさい。
立ちいった事をいって、すみません。
陛下は、寿王を皇太子にと、お考えでしたね。
なに変な事を言っておる。
いえ、寿王の名は 清 、
私の名は凌、
私たち、皆の名は、部首が さんずい です。
共通の さんずい を取りますと、寿王の名は、青です。
青は五行でいう、東の色。
東宮を意味します。
武恵妃様はご存じなのですか?
蓮が、武恵妃様に狙われる事はありませんか?
寿王は、そなたも知ってのとおり、三人の兄弟の死のあと、生まれた。
それまでは、まさか、次ぎ次ぎと、赤子が死ぬとは思わず、武恵妃には確かに、聞いたら、悦ぶようなことを言っていた。
だが、開元八年二月、敏が死ぬと、これからは、耳に心地いいことは、口にすまいと思った。
子の明るい将来を夢見ていて、その子が亡くなると、辛さが増す。
それに、生まれたての敏を見ると、この子も、育たないとわかった。
だから、悲しみを和らげるためにも、すぐに、次ぎの子を生まそうと思った。
それが 寿王 だ。
だから、口にはしなかったが、伝えるつもりで 清 と、名づけた。
俶が生まれなかったなら、そなたの言うとおり、清を皇太子にしただろう。
だが、そなたにも言った通り、これは運命なのだ。
朕が、ご先祖様にお願いして授かったのが、俶だ。
安心しなさい。
朕が守る。
武恵妃には手は出させない。
約束する。
父上を、信じます。
ただ、この前、武后様の話をお聞きして、武恵妃様の事が、急に心配になったのです。
蓮は、杏が生んだ大切な子です。
では、よろしくお願いいたします。