杏の願い
ただいま、
疲れた声で帰りを告げた。
杏が、蓮を抱き、嬉しそうな顔であらわれた。
いつもなら、表情を見て、なにかしら声をかけてくるのに、と、ちょっと寂しかった。
蓮を抱いているので、体で、忠王を寝台に押していった。
見て!
蓮を寝台の側に座らせた。
蓮、父上に見せてあげて。
蓮はハイハイから、寝台に手をかけ、立ちあがった。
忠王は足早に寄っていき、
蓮、すごいな。
と、抱き上げた。
丸い寝台が、これから役にたつ。
忠王は、ニコニコ顔だ。
帰ってきた時と、まるで違うのね。
どうした。
なにしてる?
杏は忠王と蓮の間に顔をつっこみ、
わかっているくせに、
顔を隠したまま、言った。
答は急がないで、考えよう。
時間はいっぱいあるのだから。
ね。
今日も、嬉しいことがあった。
そうやって、生きていこう。
蓮がいるから、これからも嬉しいことだらけだよ。
二人の間から顔をだして、ニイと笑った。
忠王は
わかった。
そなたの言う通りだ。
よく、わかった。
殿下、孔子様に叱られるよ。
男子が女子に従うなんて。
女子は小さい時は親に従い、嫁いでは夫に従い、夫が死んだら子に従うのでしょう。
女子って、つまらない。
でも、私には意見に耳をかたむけてくれ、賛成してくれる殿下がいる。
幸せな女子だと思う。
ありがとう。
私、女子はつまらないと思うけど、下の子は女の子を生むわ。
皇后様そっくりの子を、母上に毎日お願いするわ。
そうしたら、殿下が喜ぶから。
殿下、そうしたら、寂しくないでしょう。
陛下が嫌がるとは思うけど、昔、武后様が、母親の喪の期間を父親と同じ三年としたでしょう。
女子、皆、なんとも言えない気がしたと思う。
嬉しいような、ありがたいような。
同じに扱われる喜び。
不公平が当たり前の中で、だから、不公平をおかしいと思わない感覚。
武后様は、そんなのおかしいと思ったんだ。
おかしいと思わない感覚をはぐくんだのは、孔子様だともね。
周という国名も、孔子様がどこに行っても認められず、諸国をさまよった時代の国の名。
漢の武帝からだよね。
儒教が認められたのは。
開祖の劉邦は嫌っていたもの。
明経科?
当っていたっけ、
儒教を重んじる学問?
より、進士科、文学を重んじる学問を上においたのも、これ以上、コチコチ頭の孔子様の子どもたちに、国を任せたくないから。
ごめん、
これで止めとく。
ただ、女子は縛られていると言いたかったの。
だから、生まれてくる女の子は、自由にさせてね。
意思を尊重してあげて。
殿下なら、口にださずともわかってくれると思ってる。
おい、おい、もうやめてくれ、私はそれ以上聞きたくない。
お願いだから、陛下の前では、そんなことは言わないでくれ。
わかっている。
生まれてくる女の子のために一言いいたかっただけ。
わかっている。
私が陛下に嫌われないように考えてくれているとね。
わかっている?
殿下は孔子様の落第生。