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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
318/347

正月の晴れ着

大暦五年(770年)、

暮れ、

代宗と華陽は、後宮の皇后の部屋に移った。

代宗と華陽は、二人が寝る続き部屋を選んだ。

華陽は、大きくなった。

もう、同じ部屋では眠れない。

部屋との境には、仕切られる引き戸が付いていた。

寝る時だけ、使われる。

そして、二つの部屋の境に柳晟が眠る場所をしつらえた。

皇帝と公主様の護衛としてである。

でないと、代宗は落ち着かなかった。

華陽は、奥の広い部屋を使うようにした。

そして、その一隅に画材を置いた。

代宗は、何も言わなかった。

柳晟が、

本来は、陛下が奥の部屋に住むべきです。

いいではないか。

好きにさせたいのだ。

華陽だって分かっている。

朕を従者扱いしていることを。

初めての処だ。

二人を侍らせて、安心したいのだ。

華陽が、代宗に飛び付いた。

ち~上、

ご免なさい。

いい部屋の方、取っちゃった。

ほら、分かっているだろ。

代宗は、柳晟を見た。

晟、悪口云ってたでしょ。

あっ、晟の寝台、下に滑車が付いている。

晟、誦が来た時、貸してくれる。

乗って、押し合いっこするの。

晟は、押してあげない。

だって、大き過ぎるし、重すぎる。

あっ、ち~上、

王喜ん家、庭の坂、凍らしてくれてありがとう。

晟だって、坂、一緒に滑るのよ。

大きなくせに、わ~わ~云うの。

楽しんでいるの。

寝台使っても、文句ないわよね。

ち~上も、今度、王喜ん家に行ったら、一緒に滑ろうね。

約束。

指切りげんまん、嘘ついたら針千本呑ます。

華陽、楽しみ。

父上が、どんな声出すか。

うふ。


華陽の母親・靖羅も移った。

華陽は、引っ越し風景を見ていた。

昼は、柳晟が何時いつも、側にいた。

靖羅は、柳晟に色々、若い男性が喜びそうな物を贈った。

ある日、朝、誦の元に華陽を送った代宗が柳晟に云った。

靖羅が、そなたを籠絡ろうらくしようとしている。

そなたには、靖羅が、華陽に気を配る良き母親に見えるだろう。

この話は、二度とする事はない。

何故、我が靖羅を警戒するか?

華陽が生れた時、あいつは、華陽が美しくないと、殺そうとしたのだ。

次は、美しい子を生むから、この子の事は忘れて、と云われた。

そのまま、蘇生した華陽を抱いて連れ帰ったのだ。

だから、靖羅に気を付けるように云ったのだ。

そんな女だ、

そなたに、色々贈り物をしていると聞く。

あいつは、ろくでもないことしか考えていない。

だから、気を付けて欲しい。

華陽のことが好きなら、頼む。

柳晟は、

どうして、こんなに良くしてくれるのかと、不思議に思っていました。

よく、分かりました。

これからは、貰うことは無いでしょう。

華陽様にとって、味方ではないのですね。

華陽様が、気の毒です。

陛下のされようの意味が、理解できました。

晟、華陽様を守らせていただきます。

頼んだからな。



正月前、新しい衣装が調ったからと、華陽の部屋に多くの衣が届けられた。

沢山たくさんある!

華陽は、いつも男装なので、手に取って大喜びしていた。

晟を部屋から追い出して、勝手に、きらびやかな衣装を着た。

今では、部屋に、当たり前に鏡があった。

華陽は、鏡の自分を見て呆然とした。

そして、寝台で泣いた。

話を聞いた柳晟は、代宗の元に侍女の梅を遣わした。

代宗は、慌ただしく、帰ってきた。

部屋に入り、華陽を抱き上げた。

ほら、勝手なことをして、ばちが当たったんだね。

華陽は、こんなチャンとした衣、着なれていないからね。

こんな衣、髪を調えたり、顔だってお化粧しなければ、変なんだ。

華陽、一番綺麗だと思う侍女は、誰?

華陽、桜だと思う。

じゃ、桜を呼ぼう。

待って、この衣、脱ぐ。

着ていたくない。

じゃ、この衣着たのを知ってるから、梅に頼もう。

何時もの、華陽になったら呼んで。

代宗と入れ替りに、梅が部屋に入った。

しばらくして、何時もの格好の華陽が照れ笑いをして現れた。

その場に化粧を落とし、髪をほどいた桜が恥ずかしそうにやって来た。

部屋に入って。

桜に侍女なりの美しい衣が渡され、着るようにと命じられた。

とばりの向こうで、桜は着替えた。

さっそく、華陽が覗きに行った。

きらびやかな衣装は、髪も顔も調えられていない桜に合わない感じがして、変だった。

華陽は、含み笑いをして、帳から出てきた。

そして、代宗に抱き付いた。

ち~上みたいに、いい父親、何処どこにもいない。

華陽は、幸せなんだ。

その日、髪を撫でられながら、華陽は、眠った。


部屋を出た代宗に、柳晟は告げた。

貴妃様の侍女が用事もないのに、うろうろしていました。

華陽に、そなたは美しくないと自覚させたかったのだ。

嫌な女だろう。

晟にも、良く分かっただろう。

御自分のお子なのに、何故なのですか。

皇帝の寵愛が自分にないのが、腹立たしいのだ。

たとえ、相手が娘でもな。

何でも一番が好きなのだ。

気分が悪い。

この話は、ここまで。

明日、昇平を呼んで、華陽の晴れ着の相談だ。

晟も、立ち会え。


大暦六年(771年)、

二月十五日、

河西節度使、隴右節度使、山南西道副元帥兼澤ろ、山南西道節度使の李抱宝が、代宗に云った。

おおよそ掌握している兵士は、訓練を始めます。

河西節度使、隴右節度使から、扶州、文県にいたるまで、二千里以上の距離が長く続きます。

そこを兵士たちは、歩くのです。

情けをかけ、いたわりつつ、兵士たちを治めるのは、とても難しい。

もし、吐蕃が岷州、隴州の道を同じように下ってくれば、我は、けん県、隴州を固く守ります。

すなわち、梁州、岷州は助けません。

吐蕃が扶州、文県に兵を進めれば、すなわち、長安城の側にまで侵入します。

初めから終わりまで、何処ででも、兵力は足りません。

戦は、その時々で変化します。

我は、その時の状況に応じて、判断します。

進もうが退こうが、陛下の命令に従うことは、無いでしょう。

願わくば、更に、軍略にすぐれた武将を選ばせていただきたいのですが。

山南節度使を任せ、それに、隴山の備えにも使いたいのです。

代宗は、詔で許した。


郭子儀がひん州に帰った。


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