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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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回鶻、可敦の死

回鶻の可敦が、亡くなった。

僕固懐恩の上の娘であった。

寧国公主と、同時期に可汗の息子と婚姻をした。

だが、可汗が、一年経たない内に亡くなったので、夫である息子が突利可汗となった。

婚姻から、十年。

父親・僕固懐恩が、唐と戦うに及び、回鶻、吐蕃を率いたが、病気で亡くなった。

下の娘の為であったが、亡くなった事によって、代宗や郭子儀が死んだと云っていた嘘がバレた。

それまで、僕固懐恩は、戦の強者つわものとして、敬われていた。

だが、以後、良く云う人はいなかったであろう。

部族長の妻としては、辛い立場であったであろう。

父親が、嘘つき呼ばわりされるのを聞くのは。

心労が、死期を早めたのかも知れない。


七月十五日、

右散騎常侍の蕭きんが弔祭使として訪れた。

回鶻は、蕭きんを、朝廷でなじって云った。

我らは、唐に大功がある。

唐は、如何に、信用を失った。

市場では、我が馬を何時も直ぐに帰さないのだ?

蕭きんは、云った。

回鶻の功、唐は、報いる訳がない。

僕固懐恩の謀反、

回鶻は、これを助け、吐蕃の兵士と連れだって侵入して来た。

我が都の近くまで迫ったのだ。

僕固懐恩が死ぬに及び、吐蕃は走って逃げ、その後、回鶻は怖れて和を請うたのだ。

我が唐としては、前の功績は忘れていない。

恩恵を加え、好きにさせている。

それより、一匹の馬が帰らない。

回鶻は、約束に背いている。

すでに、唐の信用を失ったのじゃ!

回鶻は、恥じた。

蕭きんは、礼儀を厚くして帰った。

お辞儀の角度や、回数の多さが礼儀ではない、

蕭きんは、弔問に行ったのである。

これでは、恥をかかせに行ったような物である。

郭子儀が、回鶻に戦いから退いてもらうため、過去の話を持ちだし、持ち上げ、自尊心をくすぐり、やっとの思いで回鶻と組んだのである。

郭子儀の努力が、無になる。

回鶻の情報を得て、訪れるべきであった。

回鶻は、

唐の方では、そんな風に思っていたのか。

外と内とでは、云っている事が違うようだ。

と思っただろう。

それこそ、信用を失ったと思える。

七月二十一日、

代宗は、宮殿を出て、章敬寺に盂蘭盆会を賜った。

七廟の神霊の座を設置した。

尊号“章敬皇太后”と、書いたはたを、大明宮の集賢殿書院近くの光順門で、文武百官に迎えさせ、拝謁させた。

この年から、毎年、慣例として行う事が決まった。


八月二十七日、

吐蕃が、十万の兵士を率いて、霊武に侵入した。


九月二日、

吐蕃の尚賛摩が、二万の兵士を率いてひん州に侵入した。

都に戒厳令が敷かれた。

ひん寧節度使の馬りんが、尚賛摩率いる吐蕃を撃ち破った。


九月五日、

河東節度使、同平章事の辛雲京が亡くなった。

いつも通り一時的に、王縉が、河東節度使になった。

王しんは、詩人・王維の弟なので、王維が好きな代宗に、気に入られているのだ。

王維、王縉、共に、科挙に受かった優秀な兄弟であった。

詩が好きな代宗は、皇位に就くと、直ぐに、李白に使いを送った。

だが、すでに、亡くなっていた。

七歩の詩を詠んだ華陽に、生きている李白が、酒を呑み良い詩を作っている様子を見せ、出来たばかりの素晴らしい詩を聞かせたかったのにと、代宗は今も、残念に思う。

最近、華陽は、永達坊に行けてない。

ち~上は、一ト月に一度しか行けないと、最初から云っていた。

一週間に一度の、後三回は、兄上が一緒の約束になっている。

だけど、吐蕃が、唐に侵入しようとしているとの事だ。

だから、出掛けられない。

部屋に居てもつまらないから、絵を描く事にした。

誦の顔を描いた。

兄上が見て、似てると、褒めてくれた。

誦にも、紙と筆を貸して、描くように勧めた。

誦は、兄上を描いた。

最初から、上手く描ける訳がない。

でも、初めてなのに、巧いと思った。

兄上を良く知る人が描いた作品だと、わかる。

眉のひそめ方、目の特徴を掴んでいた。

誦、伯母上は、すぐに抜かれそうね。

華陽は、自分が絵の先輩と云う意味で、伯母上と名乗った。

誦は、兄上も褒めたので、頭をかきながら、満更でもなさそうであった。

一緒にする事が、また増えた、

東宮は、居心地が良かった。

伯母上は、優しかった、

華陽の母上だって、やさしいに違いない。

あの母上は、どんな人なのか?

会いたいと、思った。

あまり、会った事は、なかった。

確かに、美しい人であった。

あの美貌は、娘として自慢できる。

えへっ、

華陽の母上なの、って。

兄上、華陽、母上と一緒に住みたいと云ったなら、ち~上、何ていうかな。

えっ。

華陽、今のままで、誦と一緒にいようよ。

華陽、母上と住みたくなったの!

そしたら、誦、今みたいには遊べない。

誦、貴妃様の事、気位が高すぎて親しめない。

確かに。

誦の母上みたいだったら、いいのに!

本当だね。

うちの母上、やさしいしな。

ち~上、なんて云うかな?

絶対、反対だよな。

華陽をとられる。

絶対、云うよな。

華陽ね、足衣を脱ごうとしたでしょう。

やっぱり、母親と住んで無いからだと思ったの。

母親でなければ、教えられない礼儀があるんだってね。

華陽、それなら、うちの母上に誦が頼むよ。

華陽が礼儀知らずな事をしたなら、わらわれるのは、ち~上なの。

華陽、ち~上のためにも、ちゃんとしたいの。

華陽は、遂に、母上と一緒になりました、とさ、目出度し、目出度し。

とは、本当の処違うの。

ち~上の名誉のためでも、あるの。

母上のとこ、一人じゃ行かない。

ち~上と、一緒じゃなきゃ。

行かない。

なあ、華陽、行かないで。

誦、華陽のとこ、遊びに行かないぞ。

誦か、貴妃様か、どちらかを選んで!



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