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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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中宗様の廃位

父上、中宗様はなぜ五十四日で廃位になったのですか?

中宗様は、皇帝になった。

だが、武后様は御自分で政事をやる気でいた。

今のままの状態を続けたいと思われていたのだ。

中宗様は、武后様の心を読まず、御自分は形だけの皇帝なのに、本当の皇帝と勘違いして、即位後、葦皇后の父君を侍中に、乳母の息子を五品にしようとしたのだ。

中書令・裴炎が、これに反対した。

この時、中宗様は

我の天下だ、葦玄貞に与える事だってできるんだ。

たかが侍中くらい惜しいものか!

と、おっしゃったのだ。

その事を裴炎は、武后様に報告されたのだ。

すると、二月、玉座に座ろうと壇の階段に足をかけようとした中宗様を兵士が制した。

そこに、裴炎が現れ巻物を取りだし、

現皇帝を廃して、盧陵王となす。

と、読みあげた。

武后様の宣旨であった。

私になんの罪があったというのだ?

中宗様は聞いた。

そなたは国を葦玄貞に与えたい。

と言ったではないか。

それでも罪がないと言うのか?

文武百官の前で、兵士に両腕を捕まれ、引きずり出させたわけだ。

最後に、恥をかかせたのだ。


中宗様、廃位のいきさつだ。

そのあと、一時、宮中に幽閉され、

房州に幽閉され、さらに、均州に移された。

葦玄貞は家族とともに、南方に流された。

だから、中宗様の後に、父上が玉座に座ることになったのだ。

前に言ったように、形だけだ。

武后様は、時々、父上に声をかけた。

そろそろ、そなたが政事をするかい?

父上は、

いいえ、私は若輩者ですので、母上にお任せします。

中宗様を見ていたので、武后様のやり方はわかっていた。

だから何もせず、何も云わなかったのだ。

即位式も行われず、幽閉された状態だ。

中宗様は、足かけ十五年間、配地におかれた。

と言うことは、父上と家族も、十五年間宮中に幽閉されたということだ。

まあ、朕たち息子は出閤という形で、宮殿を出たがな。

兄上も皇太子でなくなったから、当然でたよ。

だから、五王府を武后様より、下賜されたのだ。

中宗様が皇帝になられて、安楽公主は皇太女になりたいと、中宗様に、ねだったそうだ。

中宗様には重俊様という皇太子がいる。

安楽公主とは同腹ではない。

だから、遠慮はなかった。

だが、前代未聞の事だ。

中宗様は側近の者に聞いてみた。

誰も賛成しなかった。

中宗様は許可しなかった。

葦皇后は、自分が武后様のようになれば、安楽公主を皇太女に出来ると考えて、母娘二人で、中宗様を毒殺したのだ。

武后様と葦皇后の二人の唐への災いを“武・葦の禍”と云う。



感じるものは、あったか?

皆、けっこう苦労してるんだ。

年配の者を敬え。

わかったか。


ところで、杏の母親の死について、何か杏から聞いたか?

どういう事でしょうか?

いや、俶の祖母なので、ちょっと調べさせてもらったのだが、

何なのです。

水死だそうだな。

朝早く、池に浮かんでいたそうだ。

初めて聞きました。

生前の話は、楽しそうに話してくれました。

手に蓮の花を持っていたそうだ。

だからなんですね。

蓮の名にこだわったのは。

そなたの妻だ。

知っておいた方がよいと思ってな。

やっぱり、杏の名は替えた方が良いのでは?

それは出来ません。

母上が死んだのなら、なおさらです。

古い人形も大切にしています。

あの者にとって、名前も大切な思い出なのです。

だからなのか?

ある日、私に、

私の杏は、吉凶の凶ではなく、強弱の、強、なの、

と言ったのです。

だから私は強いの。

殿下にだって、負けないから。

体のことではないのよ。

心のことよ。

私は強いの。

負けないから、覚悟してて、って。

教えていただいて、ありがとうございます。

これで、無神経なことを言わずにすみます。

忠王は顔を硬直させ、退室した。


玄宗は、

体のことまでは、とても言えなかったなあ。

と、独り言をいった。

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