表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
28/347

父・叡王

父上の話はいつ聞いても、納得できます。

実は、私は武后様の事も、お聞きしたいのです。

私には曾祖母にあたる方なのに、何も知らないのです。

多分、あまりいい話ではないと思いますので、ちょっと躊躇もしますが?

そなたには、話しておいた方がいいだろう。

跡を継ぐ者として、知っておいた方がいいと、朕も思う。

だが、武后様の話は、同じ血が流れている者として、おぞましい分、口にするのが辛い。

今日は、やめにしよう。

話す方としては、心がまえが必要なのだ。

別の日にしよう。

では、間接的に感じられるように、朕の話をしよう。

朕が生まれた時、父上は皇帝の地位にいた。

けれども、即位式も行われなかった。

宮殿に幽閉されたような状態だった。

父上は、武后様になにも言わないで、生活をしていた。

政事は武后様がしていた

父上は武后様を母として四人兄弟であった。

太平公主は女子なので、数には入れていない。

長男は毒殺、

次男は配流先で自殺、これは、賜った死だ。

そして、三男の中宗様は、即位はしたものの、五十四日で廃位、

そんな兄たちを見て、武后様のいいなりにならないと、どんな目にあうことかと思い、ただ、黙って従っていた。

ある日、父上のところに二人の客があったそうだ。

久しぶりの客なので、話し込んだそうだ。

そのあと、二人は殺されたと、言う。

謀反を企んだと、いうことだった。

父上は、それ以後、客と会うことはなかった。

まあ、客の方も来ることはなかったけどね。

父上は形の上では、皇帝なので、朕も、三才で楚王に冊封された。

そして、八才の時、出閤をした。

小さい子どもだけれども、朕は、ある日兵士を引き連れ、朝堂に出かけた。

武一族のある将軍が、朕が厳然としているのを見て忌々しく思い、兵士を怒鳴りつけ、兵士の持つ儀仗を奪い取り、折ろうとした。

朕が

我が家の朝堂だ。

何に事か?

我が兵士を脅かすな!

と、叱りつけたのだ。

その話を聞いた武后様は、朕を気に入ったのか、宮殿に帰るようにと、また入閤したのだ。

兄上は、皇帝の長男、皇太子なので、宮殿に残っていた。

まだ小さかったので、皆と一緒にいられるのはうれしかった。

天授元年(690年)、

武后様が周王朝を開いた。

皇帝が武氏なので、父上は武の姓を賜り、武旦となった。

父上は、皇帝から皇嗣となった。

そして、正月、皇帝・武后様に挨拶に出かけた、朕の母上と、兄上寧王の母上が、門番の婢に

武后様の悪口を言った。

と、讒言され、帰ってこなかった。

殺されたのだ。

遺骸も、結局、見つからなかった。

朕は皇帝の息子から、皇嗣の息子となり、親王から臨し郡王となったのだ。

父上だけでなく、我々は家族で幽閉されていた。

だから、兄弟しか遊び相手がいなかった。

兄弟仲好くすると、父上が喜ぶんだ。

父上は 五才離れた、中宗様とは交流がなかったみたいだった。

我々は、喜びの少なかった父上を喜ばせるため、無理に仲好くしたような気がする。

宮殿の周りには、壁があるので、馬を何頭も走らせることはできない。

打球を皆ではできなかった。

それと、皆で音楽を習ったんだ。

朕の母上が、

男の子は文武両道が魅力的。

と、云ってね。

母上が、楽器の扱いが上手じょうずだったので、教えて貰ったんだ。

兄弟で、それぞれ担当の楽器をきめてね。

朕は夜も母上に習ったんだ。

ズルしたんだ。

だって、知らなかったけど、父上は音楽好きだったんだ。

皆も、よけいに練習したよ。

聞かせてあげると、喜ぶんだ。

褒めてもらおうと、皆、がんばるんだ。

そして、朕は十四才で出閤した。

中宗様が、皇太子に復帰した年だ。

いずれ中宗様が、跡を継ぐことに決まったからね。

父上は親王になった。



後は、想像がつくだろう。

位が上がったり、下がったりするのは気持ちのいいものではない。

だから、俶には、そんな思いはさせたくない。

朕の息子たちにもだ。

だから、そなたも俶も、朕が守るからな。

ああ、朕と太平公主が争った時、父上は、別に、太平公主の味方をしたわけではないのだ。

あの時は、そなたにも迷惑をかけ、苦しめたなあ。

悪かった。

申し訳ないと、思っている。

父上は、政事に関与していなかった。

だから、太平公主が武后様はこうしていた、等と助言をしてくれていたのだ。

そんな事で、つい、妹・太平公主に気を許したのだ。

それと、息子たちに、兄弟仲好くと、言っていたので、御自分でも、一人残った妹と仲好くしようとしたのだ。

朕たちの手本になろうとしたのだよ。

そこを、うまく利用されたのだ。

父上が我が身を大切にしたのは、家族を守るためだ。

御自分になにかあると、家族が危検にさらされると思っていたからな。

朕と同じだ。

朕の場合は、健康に気をつけねばな。

本当に、父上は息子たちを自慢に思ってくれていた。

朕が兄弟五人で寝るために、長い枕を作ったと聞き、とても喜んでくれた。

うれしそうに、周りに話したという。

いい父上だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ