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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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母親・靖羅

代宗は、朝廷から帰ってきて、靖羅が訪れたか聞いた。

でになりましたが、乳が出ないとすぐに、帰られました。

靖羅に後でいいから、按摩と一緒に来るようにと、命じた。

華陽、今日は何してた?

寝台の上で座っている華陽に、着替えながら、声をかけ、頬をつついた。

華陽は、いい子だな。

華陽の顔を見ると、疲れがとれる。

父上のお薬だ。

抱いて、壁に貼られた華陽の似顔絵を二人で見た。

華陽の似顔絵の目は、少し大きめに書かれていた。

代宗は、絵の髪を指し、“髪”と云った。

父上の華陽の似顔絵、どうかな?

これ、全部、華陽なのだよ。

別の絵の口を指し、“口”と云った。

次ぎは、“鼻”

そして、“眉”

云う度に、本物の華陽の髪や口を華陽の手で触らせた。

そなたには無いから、教えよう。

代宗は、華陽に、口の周りのひげを触らせ、“髭”と云った。

華陽には、一生、生えないけどな。

父上は、お祖父様に好き好きされて、痛くて泣いたものだ。

だから、華陽には、気を付けてる。

絵の中に千字文が貼られていた。

天地玄黄

宇宙洪荒

日月盈昃

・・

代宗は、声に出して、字を一つ一つ指しながら読んでいった。

途中、華陽の絵があると、鼻や口を指し、声に出した。

父上の妹・丹丹は、お祖母様が父上にこうやって読んでいるのを見て、覚えたんだ。

ある日、誰も教えて無いのに、全部読んだのだ。

お祖父様は大喜びで、“この子、天才だ。”って云ったんだ。

だから、華陽にも、叔母上と同じようにしているんだ。

父上と楽しく学ぼうな。

終わったら、ギッコン・バッタンだ。

それとも、鳥さんごっこにしようか?

代宗は、寝て、足を曲げ、膝下に華

陽を乗せ、両手で華陽の手を左右それぞれ持ち、パタパタさせ、チュンチュンと声を出し、

スズメさんだよ。

と、云った。

次は、カラス

かあ~かあ~

と声を出した。

手は、ゆっくりと動かした。

華陽、疲れたみたいだな。

お昼寝の時間だな。

果汁、二つ頼む。

代宗の分まで、ごくごく飲んだ華陽は、抱いて揺らしていると、すぐに寝た。


華陽を寝かせ、靖羅たちのいる部屋に入った。

華陽に、代宗が怒った、大きな声を聞かせたくなかったのである。

朕の声は、華陽には、いつも優しく穏やかなのだ。

靖羅に、聞いた。

何故、華陽に乳を飲ませない?

体調が悪かったのです。

侍医には見せたか?

そこまで、大袈裟にはしたくなかったのです。

いいから、侍医に見て貰え。

そなたは、淑妃だ。

妃の中で、一番の地位にいる。

誰に遠慮がいるものか。

分かったな?

それと、乳の出が悪いのなら、按摩の回数を朝晩の二回にしたら良い。

後、三、四か月位のものだ。

先は、見えている。

とは云っても、大変だろう。

朕には、そなたが喜ぶ物が分からない。

褒美を考えておきなさい。

靖羅は、機嫌が悪かった。

特に欲しい物はありません。

独孤家は、裕福だからな。

だけど、買えない物だってあるのだぞ。

帰って、明日に備えて、按摩をして貰え。

下がりなさい。


部屋に帰った靖羅は、思いがけず、頭巾を被った老人に出くわした。

何と云われたのだ?

乳をやれ。

あの人、それしか云わない。

それと、褒美を考えておけ。

って。

お前という奴は!

けいを売り込む、いい機会じゃないか!

このバカたれが。

見てくれが良くても~、頭がまずい。

父親は、云いながら、云い過ぎたと、口調の激しさを減じた。

それと、そなた自身、貴妃になる良い機会じゃないか。

そうね。

でも、皇后の位は、空いたままだし、貴妃の位だって、楊氏が死んで大分経つのに、空いたまま。

でも、貴妃になりたくても、自分からは云いにくい。

けいの昇進を頼んだらいいのよね。

でも、あの人、

陛下だ!

他の人に聞かれたら、良いことは、一つもない。

陛下、即位して一年以上経つのに、かつと、げいと、けいしか、冊封してないの。

変でしょう。

華陽なんて、生まれた時から公主なのに、

皆、けいが冊封しているから、靖羅には、何も云わないけど。

集まれば、陛下に不満たらたらなの。

皇帝になってから、生まれた子、華陽を大事にしているのを見て、それから、生まれるのは女子ばかり。

どうせ皆、陰で、巫に頼んでいるのよ。

なんせ、皇子たちは、親王になれなくて、陛下が、皇太子の時の郡王のままよ。

まあ、独孤家は、けいが韓王に冊封されているから心配は無いけどね。

皆、羨んでいるわ。

いい気分。

そなた、陛下は、いつもにこやかだから、キツイ事をしないと思っているだろう。

だが、皇子たちの扱いを見れば、めない方がいいぞ。

華陽を大事にするのだ。

形だけでもな。

そうしたら、一族挙げて、“我が世の春”がくる。

あれだけ云っていたのに、華陽を大事にしない。

本当に、バカか?

分かった。

これから、気を付けるわ。

まあ、見てて。





秋、七月一日、

群臣が、代宗の尊号を“宝応元聖文武孝皇帝”とした。


七月十一日、

天下に恩赦を施した。

改元をした。

したと云っても、“広徳”そのままであった。


史朝義を討った諸将たちの、官階を進めた。

爵位、封土に差があった。

回鶻の可汗を

“頡咄登蜜施合俱録英義建功毘伽可汗”とし、

皇后にあたる可敦を

“婆墨光親麗華毘伽可敦”とした。

左殺を雄朔王に封じ、右殺を寧朔王に封じ、胡祿都督を金河王に封じ、抜覧将軍を静漢王に封じ、諸都督十一人を国公に封じた。

回鶻は、雍王・かつに無礼を働いて以来、唐を軽く見て、戦中なのに別行動を取り、略奪したりして前のような働きはしなかった。

史朝義軍に味方しなかったので良かっただろうという態度のようであった。

強い分、唐が機嫌を伺うようにならざるを得なかったのである。

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