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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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代宗の子育て

華陽を抱いた代宗は、自分の寝室に帰った。

華陽、沐浴をしなければな。

さっぱりしたら、お白湯を飲んで、お食事だ。

朕の寝室に来た女子は、華陽、そなたが、初めてだ。

歓迎するよ。

すでに、たらいにお湯が、張られていた。

代宗は、湯に手を入れ温度を見た。

朕が、入れてもいいが、手が小さい女子の方がいいだろう。

その間に、乳母を選ぶ。

それとも、華陽、一緒に選ぶか?

五人程、乳の出のいい女子を別室に控えさせるように。

華陽、そなたの乳母だ。

やはり、そなたも一緒の方が良い。

付き合いが長くなるからな。


靖羅の側仕えの輪が来た。

靖羅様が按摩を終え、華陽様にお乳をあげたいと、おっしゃっています。

それを聞いた代宗は、山羊の乳に蜜を入れ、丼一杯、靖羅に飲むように持たせた。

男子なのに、赤子の事に詳しい代宗に、侍女たちは、ひそひそと話をした。

妹の世話を見ていたのだ。

驚くことはない。

そなたたち、手を抜くと、分かるからな。

華陽の世話をちゃんとするのだ。

見ているからな。

おお、綺麗に、さっぱりした華陽が来た。

この時期だ。

うっとおしかっただろう。

さあ、まだ、そなたの寝台の用意は出来てないから、父の寝台に寝るのだ。

寝ている華陽の側に、代宗も横たわった。

華陽の頬を指でつつきながら、三人で寝れば、“川”の字だ。

父上は、先帝と母上の間で寝てたんだ。

三人でな。

玄宗様が、皇族なのに珍しいと笑ったそうだ。

華陽と父上、二人で寝れば、何の字かな?

“帰”の字の、左の部首みたいだな。

だけど、あの部首、“りっとう”だって。

他の字では、右側に付くんだ。

“剣”みたいにね。

“刀”の意味なんだ。

刀と形が違うから、何かの傍らにいる時、りっとうの形になる。

“立刀”と書いて、りっとうだって。

華陽と父上の寝姿とは、意味がまるで合わないね。


さあ、母上のお乳の用意が出来たんだって。

行こうか?

本当は、来てもらいたいけど、部屋に入れたくないんだ。

輿に乗って、行こう。

乳母たちも、一緒に来るように。


華陽を抱きながら、普通の声で、

本当に乳は、出るのだな?

按摩は、そう云ったわ。

按摩の一人に、

介助を頼む。

と、云って、華陽を渡し、靖羅の後にまわった。

按摩は、靖羅に華陽を乳を飲む形で渡した。

ぎこちなく抱く靖羅の腕に合わせて、代宗が腕を廻し、華陽を抱いた。

二人で、華陽を抱いた形になった。

後から、靖羅を抱いているようにも、見える。

靖羅の耳の横から、顔を出し、

さあ、おっぱいだよ。

と、声をかけた。

華陽が、乳を飲みはじめた。

しばらくすると、華陽が、泣き始めた。

按摩が、華陽を抱き上げ、靖羅の乳を見た。

あまり、出ていないようです。

もう片方も押さえてみたが、出が悪いようである。

華陽を受け取った代宗は、乳母を並ばせた。

各々に、代宗から乳母へと、華陽を順番に抱かせた。

その様子と、華陽の反応を見て、二人の乳母を選んだ。

お腹を空かせている。

乳の張った者の方が、飲ませるように。

按摩が、二人の乳を見た。

一人に、飲ませるように云った。

代宗は、靖羅にした時と同じように、後から、乳母と華陽を抱いた。

乳母には、

目を瞑るよう。

に云った。

乳母の耳の横から顔を出し、華陽の様子に合わせて、声を掛けた。

華陽は、大きなお腹になっていった。

そして、口を空け眠っていた。

代宗は、乳母に

ちゃんと抱いておくように、

と、云って、柔らかな筆の毛で、足の裏を撫でた。

しばらくすると、足は引っ込んだ。

乳房を当てると、目覚めた華陽は、また、お乳を飲みはじめた。

このお腹なら、もう、いいな。

代宗は、華陽を抱き、げっぷをさせ、輿に乗って帰っていった。

二人の乳母は、従った。

靖羅は、二人の按摩に、当たり散らした。


この日から、靖羅は、毎日、華陽の元に通った。

十日程して、二回に、一度は華陽を満足させられる量が出るようになった。

代宗は、出来る限り、授乳に付き合った。

朕は、父上が朕にしてくれたように、しているだけだ。

特別な事をしているとは、おもわない。

代宗は、華陽を大切にしているのを、隠さなかった。

昇平が来た。

靖羅が、華陽に対して取った仕打ちを告げた。

そなたもそうだが、華陽も頼れるのは、父親だけなのだ。

焼餅は、やくなよ。

昇平は、笑ってうなずいて、帰って行った。



四月二十八日、

御史大夫・李之芳等を吐蕃に使いに遣わした。

だが、そこで囚われ、捕虜として留め置かれ、二年して帰って来た。


三人の重臣が、代宗に、皇太子を決めるように請うと、上奏した。

雍王・かつは、回鶻とのイザコザがあり、代宗からは、“皇太子に”とは、云いにくかったのである。

代宗にとり、よい上奏であった。

産まれたばかりの華陽の事で忙しくもあり、五月一日に、秋になるのを待って話し合いをするよう、詔を下した。



(活動報告の中で、9時39分、書きました。)

話の中で、“帰”の字、部首“りっとう”としました。

これは、“学研新漢和大字典”2017年第5刷の内容に従ったからです。

気になって、大修館書店の“新版漢語林”平成7年4月1日再版の物を見ますと、はばへんになっていました。

二つの考え方が有るようです。

どちらが、正しいか?

私は、何も云えません。

ただ、こう云うこともあるのだと、知らされました。

お伝えしたくて、書かせていただきました。







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