表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
265/347

乾元重稜大銭小銭・みな一文

五月八日、

乾元重稜小銭一枚二文、

乾元重稜大銭一枚三文、として使うようにと、した。

五月十四日、

礼部尚書・蕭華を峡州司馬におとしめた。

宰相・元載が、李輔国の意向に沿って行ったのである。

李輔国は、恨みを晴らすのが、しつこい。

どこまで地位を落としたら、気が済むのか。

罪有りとしているが、誣告ぶこくによる罪である。

五月十八日、

十日後の事である。

乾元重稜大小銭を皆、大銭、小銭にかかわらず一つ当たり一文とするように、詔が下った。

単位の違う銭は、計算が大変である。

民は、使いにくく、不便であったようだ。

だから、大きくても小さくても、どの銭も一文。

民は、安らいだ。


史朝義は、みずから、宋州城を数か月も囲んだ。

城の中の食糧は尽きた。

将兵たちは、落ち込んで元気がなかった。

刺使の李岑は、どうしたら良いか分からなかった。

遂城の果毅で開封の劉昌が云った。

倉の中に数千斤のこうじがあります。

それを崩して、ばらばらにして食べる事を請います。

二十日近く、持つでしょう。

大尉・李光弼が、必ず我らを助けてくれます。

城の東南の隅が一番危険です。

我、劉昌に守らせて下さい。

李光弼が、臨淮に着いた。

それぞれの将軍は、

史朝義の兵士が強いので、南の揚州で居て下さい。

と、云った。

李光弼は、

朝廷は、無事であろうが危険であろうが、我をたのみにしている。

我が、また、退いたり縮こまったりしたら、朝廷は、我に何を望めばいいのか。

我は、不意に出撃する。

賊軍は、我の兵士が少ないのを見て、安心するだろう。

と、云って、言葉通り、徐州から不意に出て行った。

そして、えんうん節度使の田神功を使って、史朝義を攻撃させた。

大破した。

これまで、田神功は、劉展にも勝っている。

揚州は、暖かくて食べ物も豊かで、居心地が良くて、去りがたく愚図愚図していたのだ。

去年の正月に、劉展を捕らえたので、一年以上、揚州にいた事になる。

だから、まだ、節度使に帰って居なかった。

太子賓客の尚衡と左羽林大将軍・殷仲卿は共に、えんうんを攻めた。

李光弼が来たと、聞くと、その威厳のある名を怖れて、田神功は、あわてて河南道に帰った。

尚衡と殷仲卿は、相継いで参内した。


李光弼は、徐州にいた。

軍隊の事で、自分が決めなければならないことを良く考えた。

自分には、事務の仕事が多すぎた。

すべて、判官の張さんに委せた。

張さんは、事務の仕事が、正確で、部分部分に分けて処置するのが、流れる如く早かった。

各々の将軍たちは、申し上げた。

李光弼は、多くの命令を張さんと話し合った。

将軍たちは、張さんに、李光弼の如く仕えた。

だから、軍内は、もの淋しい位、静かな様子であった。

寧州をもって、東夏とした。


田神功は、偏将、ひ将(副将)から身を起こして節度使になった。

前の判官・劉位たちが、幕府に留まっていた。

田神功は、皆から、等しく拝礼を受けた。

李光弼と張さんは、それを見て、対等の礼だと、とても驚いた。

そこにいる劉位らに、田神功は、残らず拝礼をしたので、劉位は、云った。

田神功は、軍隊の出だから、礼儀を知らないのだな。

そなたたち、蕃族などと云うなよ。

田神功の成した事は、田神功には過ぎた事よのお!



五月十九日、

天下に大赦が下された。

益昌郡王・ばくを鄭王とした。

ばくの母親は、揚国忠、揚貴妃の姪・紫玉である。

洛陽から連れ帰った昇平を我が子として扱い、周りの目を欺いてくれた。

功績は、大きい。

ただ、独孤淑妃には、分かっている筈だ。

代宗は、皇后を置いていない。

皇后の地位には、珠珠を座らせているつもりなのだ。

貴妃の地位は、紫玉のものとなった。

ただし、形だけ。

代宗が、紫玉の処を訪れることはない。

一応、貴妃にすることで、昇平の母として体面を保つのだ。

昇平は、兄・ばくにも、大切にして貰っている。

丹丹と、蓮の弟(亡くなった)たんの関係に近い。

だから、約束通り、息子のばくを優遇している。

貴妃の地位は、独孤妃になると、誰しも思っていた。

独孤氏は、西周の時代から皇帝を守る外戚、武門の大族の出だからだ。

世が乱れた今、皇帝も当てにしているはずだ、と。

だのに、後ろ楯を持たない女子、紫玉を貴妃にして。

何やっているんだ、と、周りは思ったであろう。

そんなの、わかっている。

だが、それ以上に、昇平に対しての紫玉の恩が、朕には、重いのだ。

だから、次の貴妃は、いずれ独狐氏だ。

いずれ、な。

延慶郡王・迥を韓王とした。

淑妃の生んだ子である。

他の妃たちを誘い、悪事を働いた女子の子である。

今でも、妃の中で主のように振る舞っている。

息子が任命されたので、喜んでいるだろう。

今回の冊封は、二人だけだ。

ただ、仲間の中で一人だけ封じられると、皆の妬みを買うようになる。

それを、考えての任命だ。

朕は、仲間割れを狙っているのだ。

それに、淑妃を大切にしている様に、見えるようにしなければ。

他人ひとには、そう見えるだろう。

靖羅は、今、懐妊している。

だから、体調を聞きに、毎日、訪れるようにしている。

二人目の子だ。

寵愛している様に、見えるだろう。


故庶人皇后・王氏を元の号に戻した。(父親、粛宗の養母である。粛宗の願いであったのだ。)

故庶人太子・瑛、

鄂王・よう

光王・きょ

の三人は、粛宗の兄弟、叔父上たちである。

武恵妃により、おとしいれられ廃され、殺された。

だから、再び、封じたのである。

これは、玄宗の望みである。

知っていて、見て見ぬ振りをしたのである。

罪の意識がある筈である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ