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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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都統・李国貞の死

絳州は、元々、お金になるような特産品も、蓄えも無い処であった。

民は飢え、租税の取り立てなど出来なかった。

その地の将士は、賜った食糧が不充分だと、思っていた。

朔方節度使等の諸道行営都統の李国貞は、度々、民の様子を聞いた。

だが、朝廷にはいまだに報告をしていなかった。

軍には、嘆き、恨みが満ちた。

気の早い勇将の王元振が、反乱しようとした。

嘘の命令を兵士たちに、云った。

明日、都統の家を修理する。

各々、もっこやすきを持って、門の処で待つように。

兵士たちは、皆、怒って云った。

朔方節度使の兵士は、家の修理をする人夫なのか!

二月十五日、

王元振は、大将となって、その兵士たちと、都統のいる城の門を焼いて、反乱を起こした。

李国貞は、牢に逃げた。

王元振は、李国貞を捕らえた。

李国貞の前に、兵士が食事を置いた。

いわく、

この食事は、そなたの力の役に立つ。

そうだろう!

李国貞は、云った。

家を修理する事は、無い。

軍の食糧の事は、度々、上奏しているが、いまだに報告はない。

諸君の知っている通りだ。

朝廷の事を恨まぬように、上奏していない振りをしていたのだ。

兵士たちの、反乱を起こそうとした気持ちは退いた。

王元振は、

今日の事は、何が必要か、更に聞く!

都統は、死なない。

死ぬのは、我らである。

遂に刀を抜き、李国貞を斬り殺した。

鎮西、北庭行営兵は、翼城に駐屯していた。

また、節度使の茘非元礼を殺した。


事が収まってから、節度使の者たちは、副将の白孝徳を節度使に推薦した。

朝廷は、これを認めた、

白孝徳、

河陽にいた時、史思明の命令で、李光弼を罵り、挑みに来た劉龍仙と戦い、勝った人物である。


二月十八日、淮西節度使・王仲昇と、史朝義の将・謝欽譲が、しん州の城下で戦い、王仲昇は賊軍の捕虜となった。

淮西地方は、驚き恐れた。

それを聞いた、侯希逸、田神功、能元皓は、すぐに史朝義のいる卞州を攻めた。

史朝義は、急ぎ助けを求め、謝欽譲の兵を呼んだ。

慌ただしく、謝欽譲は出発した。

警戒が手うすになった王仲昇は、助かった。


絳州の諸軍は、食べる物が無いので、まわりから脅し取った。

朝廷は、太原の反乱軍が賊軍と一緒になり、連携しないか、心配した。

だが、昔からの諸将が鎮め従えた。

二月二十一日、

郭子儀を汾陽王とし、朔方、河中、北庭、ろ澤、節度行営、兼、興平、定国などの軍の副元帥とした。

長安を発つ時は、絹四万匹、布五万端、米六万石、を絳州の軍に届けるようにした。


三月十一日、

郭子儀が、まさに出発しようとした時、粛宗は病気であった。

臣下たちは、誰も会え無かった。

郭子儀は、請うて云った。

老臣は、命令を受け、間もなく外で死にます。

陛下を拝見しなければ、目が良く見えません。

皇太子・豫が、粛宗の寝ている寝台に、招き入れた。

粛宗は、云った。

河東地方の事、全て、卿に委せます。

部屋から出ると、皇太子・豫は、

陛下は、卿の事を信じています。

宜しく、お願いします。

と、云った。

粛宗の傍に帰った豫に、

明日は、上皇様を見舞ってくれ。

蓮を見たら、歓ぶだろう。

と、云った。

蓮は、

そんな呼び方をされたら、昔を思い出します。

父上は、蓮とよく遊んで下さいました。

われが父親になって、よく解りました。

愛されていたのだと。

明日は、父上の分まで、上皇様に仕えます。



次の日、皇太子・豫は、上皇・玄宗を見舞った。

久し振りの、初孫の顔を見て、玄宗は、歯を見せて笑った。

豫は、寝台の傍らに膝まずき、手を握り包み込んだ。

われは、父上にも愛されましたが、上皇様にも、大切にされたと思います。

玄宗は、云った。

そなたが生まれて、とても嬉しかった。

何故だか、わかるか?

“生まれながらの、”と、云われる子を我の血筋に持てたからだ。

意味がよく解りません。

はっは、説明しよう。

我の兄、直ぐ上の兄・成義は、母親が賎しい身分なので、武后様が、他の子と同じようには育てないと、云っていたのだ。

すると、万回と云う僧侶が、“この子は、西域の大樹の精です。”と云ったのだ。

それを聞いた武后様は、大喜びして、兄弟一緒に育てたのだ。

我は、“生まれたながら”と云うのが羨ましくて、羨ましくて、ねたんでいたのだ。

生まれながらの大樹の精なら、どんな庭を造るのが、ひどく興味があった。

そして、なんだ、我らと変わらないと、安心したものだ。

それでも、母親の身分が低いからと、給付するお金で他の兄弟と差を付けたりもした。

そんな時、俶が生まれた。

だから、そのこだわりから、解放されたのだ。

我が、小人物だと、分かっただろう。

だが、大樹の精なのか、成義は子どもをさずから無かった。

今は、可哀相だと思える。

俶は、我の心のしこりを除いてくれたのだ。

そなたを大切にした一つの理由だ。

分かったか?

思いがけないお話、驚きました。

でも、楽しそうに話されて、何よりでした。

我には、もう昔話しか出来ない。

でも、誰にでもは、話せない。

そなただから、話せたのだ。

そう、誰にでも話せない話がある。

かつて、我が子供だった時、武后様が皇帝だった武周時代、契丹が謀反を起こし、唐の地に侵入したことがあった。

その時、契丹は、謀反の名目を何としたと、思う?

 “簒奪された唐の国を、本来のあるじ、李氏に戻す。”

だって。

皆、びっくり。

契丹の謀反の報告の際、伝える人はハラハラ、ドキドキだったと、思うよ。

だが、武后様の反応も見たかった。

皆、ね。

心は、契丹、頑張れ!

だが、喜びの心を隠すのに、気取られ無いように、皆、下を向いたんだ。

武后様は、恐ろしい。

武后様を面と向かって批判する話だから、当然、武后様が嫌う話だから、内々の話で、あまりおおっぴらにはしていない。

だって、李氏としても、“不甲斐ない”と云われているみたいだしね。

そんな事があったのですね。

我々が知らない話が色々あるのですね。

では、また来ますから、元気で待っていて下さい。

また、楽しいお話、お聞かせ下さい。

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