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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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玄宗の訪問

よう、忠王、約束通りきたぞ。

あっ、陛下、おっしゃって下されば、身綺麗にしてお待ちしましたのに。

確かに、そなたの身なりを見て、驚いた。

野暮な役まわりを演じるところだと、回れ右して、帰ろうか。

と。

はは、蓮と遊ぶと衣が汚れて、何度もおしゃれな女子のように、着替えなければなりません。

一番楽なのは、粗末な衣を着る事ですが、着なれ無いものですから、まあ、下着姿です。

驚かせて、申し訳ございません。

妙な心遣いはご無用です。

蓮、陛下だよ。

蓮の、お祖父様だ。

どうした?

なに恥ずかしがってる。

はは、立派な髭の人は初めてみたのか?

すみません。

慣れていないもので。

そうだ、蓮、お祖父様に、トトト、ト ンをお披露目するか?

さあ、おいで。

ギッコン・バッタンでもいいぞ。

丸めた布団を背中にあて、膝をかるく立てて座った。

さあ、蓮は前かな、後かな?

蓮を膝を背に座らそうとすると、蓮が身をよじった。

はい、はい、分かった。

トトト 、ト ンだな。

忠王は立てた膝の、膝下部分に、蓮を置いた。

両膝を合わさず、開けて、いない、いないばあ。

と言って、目を合わせた。

さあ、お尻は足の上に、ちゃんと乗っているかな?

杏、見てくれ。

布団を頼むぞ。

さあ、父上の手をつかんで。

と、云って、蓮の手を握った。

トトト、

と言って、足をすこしずつ持ち上げた。

蓮は下向きで、段々、地面と平行な形に、宙に浮いた。

ト、

と云って、止まった。

足が上がりはしないけれども、左右に動いてみせた。

蓮は、笑っていた。

そして、

ト ン、と言って、少しずつ降りていった。

キャッキャと笑った。

もっと、と云うように、体を上下に揺らした。

陛下、今日はなにか御用がおありだったのでは?

そなた、いつも、こんなふうに日々をすごしているのか?

はい、私、けっこう忙しいのです。

必用とされている人間なんです。

トトト、

と、云って、また足が上がっていった。

忠王は蓮の手を握りしめ、笑い返した。

ト、

と止まった所で、足をゆらゆらしてみせた。

蓮も、また、笑い返した。

ト ン

と、降りて止まり、二人は横に倒れた。

蓮は、厚い布団の上で笑っている。

蓮、今日はお祖父様がおいでになっている。

あんまり遊べなくて御免よ。

杏、飲み物は?

私がほしい。

父上のもな。

さあ、今から、作法の時間だ。

杏が果汁を三コの器に入れて持ってきた。

陛下、どうぞ。

さあ、殿下、一口と言って、匙を口に持っていった。

忠王は胡座をくんで、蓮を膝に乗せ、両手を脇に付けて飲んだ。

はい、次は、蓮よ。

忠王が蓮の両手を脇でおさえ、

行儀良く。

と云ってから、杏が匙で果汁を飲ませた。

こぼさず、上手に飲みました。

と、言って、杏が、好き好きをした。

忠王はその間、蓮の頭をなでていた。

なんと、手間のかかる子育てじゃ。

大分よくなったのです。

前は、食事の後は、食べ物が部屋中に飛び散り、掃除が大変だったのです。

食事中でも、手足をバタバタさせて、口に持っていく途中の匙を払うものですから、食べるものより、飛んでいったものの方が多くて、時間がかかって、かかって。

後は、杏に任せて、お話しをうかがいます。


二日後が、任命式だが。

節度使の話はしていなかったと思う。

都護府と節度使は辺境の防衛と言うのでは役割りは同じなのだ。

七百十一年、甘粛の涼州都督を改め河西節度使とした。

だぶるからな。

だが、まるで同じではない。

軍事だけでなく、民政も、掌握させている。

募兵制の事務をしなければならないからな。

募兵制は傭兵制とも言う。

やはり、兵士は現地で集めるのが一番。

移動の無駄が省けるからな。

そうなると、戸籍の処理、奉禄の計算など、どうしても文官でなければ出来ない仕事だ。

大金を扱うしな。

文官でなければおさにはなれぬ。

だから、皆には都護、都督とかぶらせて、節度使に任じたのだ。

今は統合するための、過渡期なのだ。




ただ、都護府、都督府の者は役所がふるい分、自負心がある。

都督府が節度使になったのを見て、気分のいい者はいない。

だが、朕は、これからも、変えていかなければならない。

これも、募兵制ゆえだ。

徴兵制の兵士が都督府にまだいる。

だが、いずれ故郷に帰り、いなくなる。

大切な兵士だ。

効率よく使いたい。

節度使に組み込まれると言っても、少しずつだ。

上手く行くとはかぎらない、

節度使に組み込まれるのは都督府の方だ。

都護府は温存しておく、

上手くいかなかった場合、都護府に働いてもらうようになる。

いずれ、節度使に組み込まれても、最後に残る武官は実戦での経験がある者たちだ。

必ず、役に立つ。

だが、今まで、上官として振る舞っていた者が、新しい組織に組み込まれるのは辛いだろう。

喜ばせてやれ。

都護府の者と、節度副大使と知節度事の似顔絵と名を書いたものだ。

それと、履歴と家族構成の書類だ。

会う前に、見ておけ。

見るだけではイカン。

名前だけでも覚えるように。

そなたの方から、問い合わせがあろうかと待っていたが、あ~あ だ。

こういう事はあらかじめ、自分で準備をするように。

高力士に言えば用意してくれる。

失敗が減るからな。

いずれにしても、武官は単純な者が多い。

大事にしてやれ。

恩は忘れない。

分かったな。

じゃ、明後日来い。

遅れ無いように。

父上、ありがとうございます。


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