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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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玄宗の教訓

陛下、お久しぶりです。

忠王、そなたは、呼ばなければ来ない息子よの。

皆はご機嫌伺いにやってくるのに、もう少し朕に気を使え。

顔を見たとたん、小言ですか?

そなた、朕に対して、態度がでかくなったなあ。

そうかも知れません。

人質を、取っていますから。

まあ、いい。

俶は元気か?

はい、毎日、体を使って遊んでいますから、出かける気になりません。

クタクタです。

男の子ですね。

手荒に扱われると喜びます。

そなたを呼んだのは、伝える事があるからだ。

長安の方がほぼ出来上がったそうだ。

来月、十王宅の話を皇子たちを呼んで伝えようと思う。

そなたは、その時、わかりました、で通しとけ、

出閤の時に渡した王府を返還して貰おうと思っている。

えっ、そんな。

ひどい。

言うと思った。

やはり、今日呼んでよかった。

今、そなたが言ったことを、言わずに黙っとけ。

多分、王府に住んでいる者は、皆同じ反応をするだろう。

だけど、そうしないと不公平になる。

出閤していない、王府を貰ってない者の方が多いから、仕方のないことだ。

心配した通りだった。

前に言ったであろう。

反対はするな、と。

従順!

だから、皆がブツくさ言っている時、そなただけは、“わかりました、”と、言っとけ。

すみません。

すっかり忘れていました。

だろうと、思った。

それと、その時、役職を言い渡そうと、思っている。

そちには、単于大都護と朔方節度大使だ。

どういう役か、わかっているのか?

いえ、すみません。

文官なら、少しはわかりますが、武官の事はよく知りません。

なんの事ならよく知っているのだ?

本当に、先が思いやられる。

これから、教えなければならない事が山積みだ。


六百四十年、太宗様は辺境を支配統御するために、トゥルファンに都護府を作られた。

安西都護府だ。

以降、高宗様と武后様が、単于都護府、安東都護府、安北都護府、安南都護府、北庭都護府、五ツの都護府を作られた。

今、合わせて六ツの都護府が置かれている。

そして、都護府の下にいくつかの都督府が置かれている。

遠隔の地の州には刺使を置くようにしている。

辺境といっても、単于都護府は長安の北にある、一番近い所だ。

都護は、あと二人いるが、一人は太宗様が作られた西域の方、安西都護府だ。

あとの一人は安東都護府で朝鮮の方だ。

そなたの単于都護府の東隣だ。

その者たちも、節度大使を兼ねている。

あ、清ではない。

清は、大都督と節度大使だ。

そなたの一ツ位が下になる。

辞令が出たら、単于都護府の武官たちが挨拶に来るだろう。

そしたら、その時、一席、もうけなさい。

費用は心配しないように。

そなたは都にいて、その者たちが汗を流してくれている。

そして、その者たちが手柄を立てると、手柄は長であるそなたの物となる。

どこの都護府でも、親王が長となり、もり立ててもらっている。

だが、これからは節度使の時代だ。

慰労のつもりで、歓待しなさい。

好きなだけ、呑ませてやりなさい。

妓女は教坊から出すようにしておくから。

うんと喜ばせなさい。

人との縁を大切にすることだ。

朔方節度副大使の方も同じようにしたらよい。

歓待されて気を悪くする者はいない。

そなたのように、無愛想な者は酒の力を借りなければな。

蓮も、もう少し大きくなったら、連れていくようにしたらいい。

少しいて、先に帰らせたらいい。

雰囲気に馴れるのも大事だ。

そなたのように、まるで関心がないのはイカン。

今回の人事をみて、武恵妃にも、感じるものがあるだろう。

そろそろ心づもりをしてもらわねばな。

だから、清より年下の者を大都護にした。

多分、武恵妃の関心はそちらに向くであろう。

歯噛みして、悔しがることだろう。

今日、伝える事は、こんなところだ。

来月、皇子たちを呼んで伝えるが、ヘマをしないように。

今日、つくづく思った。

時々、来るようにしなさい。

朕の側にいて、見て学びなさい。

参考になるだろう。

ああ、それと子供向けの本を集賢院の方で作らせている。

杏は字が読めるのか?

一緒にいて読んでやるのが、一番本に親しむことになる。

今からでも、学ぶように。

これは、大切なことだからちゃんと実行するように。

わかったな。

もう帰るのか?

杏に、よろしく伝えてくれ。





ただいま。

お帰りなさい。

どうしたの?

随分、疲れているみたい。

二十才位、年をとったみたい。

おい、それはない。

それは、ひどい。

私は今、十七才だというのに。

ねえ、蓮、父上はヨレヨレだよね。

蓮、また手をだして、遊んでもらおうとの魂胆だな。

蓮、見え見えだぞ。

蓮を抱きながら、

二十才も年をとって帰ったのに、まだこき使うおうというのか?

お疲れ様、後で按摩してあげる。

それで、いい?

それじゃ、それと、まあいい。

思い出した。

杏、そなた字が読めたっけ。

父上が、子供向けの本を作らせているから、蓮に読んであげてって。


私、こんな告白、恥ずかしい。

ほとんど読めないの。

じゃ、明日から私と一緒に学ぼう。

ああ楽しみだ。

今までの、お返しができる。

元気がでてきた。

杏、私は幸せだ。


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