表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
206/347

ヨモギの矢

司空・郭子儀は、宮殿を訪れて、清渠の戦いでの敗北の責任を取って、自らを貶めるように、粛宗に、請うた。

五日十七日、

郭子儀は、左僕射となった。

尹子奇は、益々兵を増やし、急いで、すい陽をとり囲んだ。

張巡は、夜中、城で、兵士を戒めるために、太鼓を叩いた。

太鼓は、“進め”の合図である。

まさに、撃って出る者がいるかもしれないからと、賊兵は太鼓の音を聞きながら、万一の場合に備えて、用心していた。

朝になった。

張巡が太鼓を止めたので、兵たちは、寝た。

賊軍は、物見櫓に登り、跳び上がり、高い所から、城の中を覗き見た。

見た所、問題は無かった。

それではと、鎧などを脱いで休憩を取った。

しばらくすると、張巡と将軍・南霽雲、郎将・雷万春ら、十人以上の将軍各々が、五十騎を従えて、門から飛び出した。

真っ直ぐに賊軍の軍営を目指した。

尹子奇の所に着いた。

陣営は、大混乱。

賊将五十人以上、賊兵五千人以上を斬り殺した。

張巡は、尹子奇の顔を知らなかったが、矢で射たいと思った。

すなわち、ヨモギの茎を鋭くした矢でもって。

ヨモギの茎で作った矢は、邪気を払うと言われている。

矢も欠乏しているので、縁起を担いだように見せた、張巡らしい工夫であった。

だから、矢を当てた者は“縁起がいい”と、喜んだ。

張巡はすべて射たので、矢が無くなった。

尹子奇に当たったか、様子を見に行かせた。

南霽雲に命じて、続けて射させた。

何度か狙い、左目に当てた。

尹子奇は、左目を失った。

尹子奇は、兵を収め、撤退した。



六月、

賊将の田乾真が安邑を取り囲んだ。

安邑は、黄河を挟んで、黄河のそばの陝州の向かい側に、距離はあるが位置する。

この時、陝州は、いまだに賊軍の支配するところであった。

陝郡の賊将・楊務欽は、秘かに帰国し、河東太守・馬承光に、我に兵を応じさせるように、謀った。

官軍・馬承光の兵士を指揮すると云うことだ。

楊務欽は、今までと、考えをまるで変えて、陝城に戻った。

そして、自分と同じ考え方でない、城中の将軍を殺した。

陝城が官軍の物になったのだ。

陝州の中心・陝郡が官軍の物になったなら、おのずから回りにも影響を及ぼす。

陝州を得たと、云うことだ。

黄河の向かい側の安邑を囲んでいた田乾真は、黄河を渡って、陝州から兵が来たなら、挟まれると思い、安邑の囲みを解いて、逃げ去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ