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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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李泌の策、不採用

郭子儀は、長安、洛陽の二つの都の間の河東郡にいて、河東郡を得たら、両京を手に入れようと、計画をしていた。

その時、賊将・崔乾祐が河東郡城を守っていた。

一月二十八日、

郭子儀は、秘かに人を河東郡城に送り込み、唐の役人と賊軍の者とで、官軍が来たら、内応する(城を落とす)謀をさせた。


長安、洛陽の二つの城を落とせると云う、河東郡城のある場所は、黄河の北にある。

この時期だから、黄河は凍っていて、地続きと考えていい。

安祿山だって、十万以上の兵士を、凍った黄河の上を歩かせたのだから。

河東郡城は、蒲州にある。

蒲州は、潼関で流れを変える、南北に流れる黄河の東にあり、潼関から東西に流れる黄河の北にある。

だから、黄河が凍った今は、潼関と似た位置にあると云える。


かつて、平盧節度使の劉正臣は范陽節度使と戦い、負けて帰っていた。

安東都護の王玄志は、劉正臣を毒殺した。

安祿山は、部下である徐帰道を平盧節度使とした。

王玄志は、今度は、平盧節度使の将軍・侯希逸を襲って殺した。

又、兵馬使・董秦を兵士と共に、筏で海を渡らせた。

目的もなく、この時期、筏で海を渡らせるなんて、殺そうとしたのであろう。

大将・田神功が平原、楽安を撃ち、賊軍を降伏させた。

防河招討使・李銑が、詔を承って来て、董秦を平原太守とした。


二月十日、

粛宗は、鳳翔に着いた。

郭子儀は、自ら兵を率いて、洛交から河東郡に行った。

洛交郡は、長安の北にある慶州の東にある。

慶州と東を流れる黄河の、真ん中当たりだ。

連れている兵士を分け、ふう翊郡城を襲い、取った。

ふう翊郡は、同州にある。

同州は、南北を流れる黄河の西にある。

蒲州ほど、黄河に近くはないが、黄河を挟んで、蒲州と向かいあっている。

これで、潼関、陝州(潼関の東)を取る基地が一つ出来たと云える。

二月十一日の夜、

河東郡城、司戸・韓旻らが、反旗を翻し、河東郡城に官軍を迎え入れた。

官軍は賊兵千人近くを殺した。

たまたま兵と共に外にいた、崔乾祐は、様子が変だと思い、城の前を通りすぎて、死は免れた。

その後、城の北から兵を繰り出し、攻撃させた。

官軍は、反撃した。

郭子儀は、崔乾祐の兵を撃ち破った。

崔乾祐は、逃げた。

郭子儀は、追撃して、取った首四千級、捕虜にした者五千人。

崔乾祐は、解州の安邑に着いた。

安邑は、河東城の東北にある郡城だ。

皆で、城の門を叩いた。

安邑城の人は、門を開けて入れてくれた。

だが、半分ほど入ると、門は閉じられ、入った人は、一撃のもと殺された。

崔乾祐は、まだ城に入っていなかった。

仕方なく、もと来た道を戻り、途中にある解県の“白径嶺”に登り、死んだと云うことだ。

遂に、郭子儀は、河東郡城を手にいれた。

粛宗は、鳳翔に来て、十日経った。

隴右節度使、河西節度使、安西節度使、西域の兵士たちが皆、会した。

揚子江、淮水の税の庸、調が洋川、漢中に着いていた。

粛宗は、散関から成都に上奏文を送った。

散関は人の往来が絶え間がなかった。

長安の人は、皇帝の馬車が来たと聞いて、賊兵に付いて長安から抜け出して見に行った。

そのような者が、昼夜絶え間無かった。

西から来た軍隊は、決められた通り、休息していた。

李泌は、安西節度使と西域の兵士たちを使い、東北を塞ぐ作戦を前に提案したようにするように、そして、帰と檀に、南から范陽を奪い取るようにと、粛宗に請うた。

粛宗は言った。

今、民はもう集まっている。

庸も調も着いた。

まさに、兵の前軍に乗じて、その腹心を撃つ。

さらに、東北数千里、兵を率いて先に范陽を取る。

また、随分と回り道じゃないか?

対して、李泌は、言った。

今、この兵士たちで、直ぐに長安、洛陽を取ることは、必ず出来ます。

けれども、賊軍は、絶対に再び強くなります。

我々は、また、苦しみます。

それは、長く安全な策ではありません。

粛宗は言った。

どうして?

李泌は言った。

今、ここで侍っている者は、皆、西北を守る者と、いろんな蛮族の兵士です。

寒さには耐えますが、暑さは我慢出来ません。

安祿山のすでに年を取った兵士の軍隊には、その勢いで必ず、勝ちます。

もう、両京は、春の気配が深まっています。

賊軍は、范陽に帰って、隠れている、その兵士たちを巣穴に受け入れています。

関東地方は暑くなります。

官軍の兵士たちは、必ず帰りたいと苦しみます。

留まることは出来ません。

賊軍は、兵士を休め、馬に飼い葉をたべさせ養いながら、官軍が去っていくのを伺います。

そして、必ず、また、南にやって来ます。

しかし、戦いの勢いは未だに、限りがありません。

もし、寒い時に先にしなければ、その巣穴は、取り除けません。

すなわち、賊軍が帰る所がなくなるように、根本を永遠に絶やすのです。

粛宗は、言った。

朕は、朝から晩まで、恋しているように、切に願っているのだ。

上皇様を早く都に、迎えたいと。

この策に決めたなら、とても待てない。

粛宗は、そう言って、李泌の提案を採用しなかった。

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