皇太子としての振る舞い
陛下、明けましておめでとうございます。
久しぶりだな。
家が楽しくて、会いにも来ないのか?
いえ、いえ、まあ、そんなところです。
俶は順調か?
大きくなっただろうな。
はい、最近はよく笑ってくれます。
私が手を出しても、まるで来なかったのに、一緒に遊ぶようにしたら、手を出さなくても、“抱っこしろ、”とせがみます。
まあ、遊べ、と言うことなんですけどね。
それは、良かった。
ちょっと心配になってな。
まあ、顔をみたら順調なのはわかる。
暗さがなくなったな。
それに、よく笑うようになった。
蓮が笑っているのに、こちらがブスッとしているわけにはいきませんから。
近い内に会いに行く。
よろしく言っといてくれ。
まあ、話は変わるが、そなたを後継者にと考えているが、わかっていると思うが、他人と話す時は朕の悪口、批判的なことは一切、口にしないように。
でないと、立太子の時、従順という言葉が使えない。
その事を意識して、行動してほしい。
今から、人と接する時は、
そなたもそう思わないか?
などの質問には、
わからない。
等と答えて、賛同しないよいに。
多勢の人といて、朕の話題になれば、さっさと逃げとけ。
褒めている時は、同意しとけ。
意識するように。
わかったな。
そなたには、なにも教えてない気がする。
ヘマをしそうで、心配でいかん。
これから、政事について、少しずつ伝えていく事にする。
それと、親しくしている身内の者に対しても、政務の話は一切するな。
そなたに対して、朕がなにも言わなかったようにな。
身内の者は皇位継承の資格を持つ。
そのような者がいろいろな情報を得ると、よからぬ考えをおこす。
だから、役人との交流も禁止している。
今の境遇に不満のある者は、新たな支配者をもとめる。
巧くいったら、功ある者として、よりよい地位につけるかも?
と、考えてな。
朕の場合も、張説たちと結託したから、韋后誅殺も太平公主排除も成功したのだ。
だから、皇族と役人の交流は認めない。
そなたの叔父の寧王も同じと、考えよ。
朕に皇太子位を譲ってくれた。
だが、人間、気が変わることもある。
そなたが皇帝になるとなると、私の方が優秀なのにと、思う者もいるだろ。
だから、気を抜くな。
それに、立太子の時の詞書に合わせた振るまいをするように、
学問を好むは是非、格好だけでも、しとくように。
誰も頭の中まではのぞけない。
これからの行動は目立たないようにすることだ。
そなたを後継者になど考えたこともなかった。
朕が思ってもなかったように、他の者も同じだろう。
ああ、清のことだが、今までの成り行きから一応、優遇する。
気にしないように。
武恵妃が心配でな。
清のためと、汚ない手を使うだろう。
自分が皇太后になりたいのだ。
皇后待遇が快適なのだろう。
そなたが浮上すると、あらぬ役人から、攻撃をされるだろう。
少しくらいは、苦労しろ。
覚悟しとくように。
あの者は武一族。
忘れていたが、思いだした。
かつて、太宗様の時、
占星学者・李淳風が
唐の三世の後に、女で“武”と言うものが天下の主となるであろう。と、
予言したのだ。
太宗様が、淳風にくわしく尋ねたところ、
もう、すでに宮中におります。
疑わしい者を捜しだして、殺してしまえばよいのか?
天の思し召しはどうにもなりません。
主となるであろう者は死にません。
疑わしい者を殺すとなれば、無辜の者も巻き添えになります。
それに、三十年後には年をとり、その者も情けを知るようになり、唐王朝に、とって代わることがあっても、陛下の子孫を絶やすことはないでしょう。
もし、その者を今殺しても、また少壮の者が現れて、その者はもっときつくて、陛下の子孫を根絶やしにするでしょう。
との事だったのだ。
予言は当ってるなあ。
今、生きている朕たちは、本当に生き残りなのだなあ。
そなたも、武姓の女子に気をつけろ。
はい、私は大丈夫です。
陛下も武恵妃のことは、うまく処理をお願いします。
わかっておる。