表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
173/347

場嵬での別れ

六月十五日、

玄宗は、まさに馬かんを出発しようとしたが、楊国忠も魏方進も死んだので、朝廷の役人は韋見素しか居ないことに、気がついた。

そこで、韋がくを御史中丞と置頓使に任じた。

武将や兵士たちが、

楊国忠が謀叛を起こしたので、殺しました。

その配下の武将も役人も、皆、蜀に居ます。

行っていいものか、どうか。

どういたしましょうか。

と、不安がった。

ある者は、隴右節度使、河西節度使に行くのがいいのではと、請うた。

ある者は、霊武の朔方節度使がいいのではと、請うた。

ある者は、太原の河東節度使がいいのではと、請うた。

また、ある者は、長安に帰るのがいいのではと言った。

玄宗の気持ちは、蜀に行きたいと思っていたが、皆の意見と違っていたので、ついに、口に出すことはなかった。

韋がくは、

長安に帰るならば、賊軍を防ぐ備えが要りますが、今、兵が少ないので東に向いては行けません。

とりあえず、扶風に着くまでに、進退をゆっくりと考えましょう。

玄宗は、皆に聞いた。

皆は然りとしたので、従うことにした。


出発しようとしたが、長老たちが道を塞いで、出発しないで留まるように、請うた。

長老たちが言うことには、

宮殿は、陛下のお住い、

寝陵は、陛下のお墓です。

今、これらを捨てて、何をなさりたいのですか?

玄宗は、しばらく手綱を押さえていたが、皇太子に、自分が去った後で、長老たちをなだめるように命じた。

そして、扶風に向かった。

長老たちは、

皇帝陛下は、留まらないとされました。

我々の願いは、皇太子様の下、子弟を従え、東の賊軍を討ち破り、長安を取り戻すことです。

もし、殿下と皇帝陛下が、蜀に行かれるのであれば、中原の百姓は、誰を主としたらいいのでしょうか。

しばらくの間に、民衆が数千人になった。

皇太子は、動けなかった。

そして、言った。

皇帝陛下は、危険を侵して遠くへ行かれている。

我は、朝も夕も、左も右もお側を離れずにいられない。

それに、まだ、面と向かって別れの挨拶が出来ていない。

さらに、我が、進むのを止めて留まるようにすると、申し上げなくては。

泣きながら、馬を西に進めようした。

建寧王・たんと東宮の宦官・李輔国が、馬のおもがいを掴み、諌めた。

謀叛人の蛮人は、宮殿を侵し、天下を壊しています。

人の情に頼らないで、何をもって、再び国を興そうとするのですか?

今、殿下は、皇帝陛下に従って蜀に入られます。

もし、賊兵に桟道を焼かれたら、すなわち、中原の地は、何もしないまま賊に渡すことになるのですよ。

人の情が離れてしまってからでは、もう、心を合わせることは出来ないのです。

たとえ、ここに帰りたいと思っても、できないのですよ。

今、出来る事とは、西北を守っている兵たちを集め、河北で力を合わせて東の逆賊と戦っている郭子儀、李光弼を呼び寄せ、長安、洛陽の両京を再び手に入れ、天下を平定し、社稷の危機を再び安らかにして、壊された宗廟を作り直し、宮殿の掃除をして皇帝陛下をお迎えすることです。

これが大きな孝行ではないでしょうか!

なぜ、女子どものように取るに足らない世話がいるのですか!





広平王・俶もまた、皇太子に留まるように、勧めた。

長老たちは、皆で皇太子の馬を抱きかかえた。

皇太子は、先に進めなかった。

皇太子は、広平王・俶に馬で玄宗に事情を伝えに行かせた。

玄宗は、手綱をとり、皆で皇太子を待っていた。

随分来ないので、様子を見に人を遣わせた。

帰ってきて、様子を伝えた。

玄宗は、

ああ、決まったな。

と、言った。

その後、軍の二千人の兵士と、飛龍厩の馬を皇太子に従うように、分けた。

そして、皇太子に従う将士に、

皇太子は、仁に厚く、孝行者だ。

宗廟を奉れるように、そなたたち役人が良く補佐をしてやってくれ。

と、言った。

また、皇太子に諭して言った。

しっかり励みなさい。

我のことは心配しなくていい。

西北の蕃族は、我が良くしているから、必ず、そなたの役に立つであろう。

そして、東宮の妃たちを皇太子に送り遣わした。

その上、位を伝えたいと詔を出したが、皇太子は受けとらなかった。

皇太子は、玄宗の伝言を聞いて、南に向かって号泣した。

李俶は長男、李たんは三男。

二人共、皇太子の息子である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ