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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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官軍、連勝

ち水の南で、魯けいは南陽節度使に任命された。

安祿山の武将、武令しゅんと畢思ちんが、これを攻めた。

五月四日、

魯けいは、兵士たちの命を顧みず、任地、南陽節度使に走った。

南陽節度使を守ろうとしたのである。

賊軍は、南陽城を囲んだ。

太常卿・張きは、夷陵太守・かく王巨を勇略があるからと、玄宗に勧めた。

玄宗は、呉王祗を呼んで、太僕卿とした。

そして、かく王巨を、陳留・しょう郡太守、河南節度使とし、嶺南節度使の何履光、黔中節度使の趙国珍、南陽節度使の魯けいを統率するよう命じた。

黔中節度使の趙国珍は、元々は、回鶻のそう柯の出で、蛮族であった。

黔中節度使は、揚子江の南にある。

全国十五道の内、東は江南西道、西は剣南道、北に、山南東道、山南西道に囲まれた、黔中道にあった。

南は、嶺南道であった。

五月十五日、

かく王・巨が自ら、藍田まで出て来て、兵を率いて、南陽節度使に行こうとした。

賊軍は、その噂を聞き、囲みを解いて逃げた。


令狐潮は、兵を率いて、再び、雍丘を攻めに来た。

令狐潮は、張巡と昔からの知り合いであった。

城の下で、昔のように、戦の苦労話をした。

張巡は、城に籠り、天下の現状は知るよしもない。

令狐潮は、張巡に、唐はもう、持たないように言った。

天下のことは、もう終わったことだ。

そなたは、危険な城を堅く守っている。

誰の為に守りたいのだ?

張巡は、

そなたは、いつも忠義をもって、生きていた。

この頃の、そなたのやり方を見るに、忠義はどこにあるのだ!

令狐潮は返答ができず、恥ずかしそうに、去って行った。


郭子儀と李光弼は、常山に帰ってきた。

史思明は、数万の兵を集め、後を追った。

郭子儀は、優秀な騎兵を選んで、戦いに挑んだ。

三日たち、常山郡の行唐に着いた。

賊軍は、疲れて、退いた。

郭子儀は、これに乗じた。

史思明は、沙河において、また、敗けた。

(四月、九門城で負けて、鉅鹿に走った)蔡希徳が、洛陽の安祿山に会いに行き、戦の事情を伝えた。

安祿山は、将兵、歩兵、騎兵、二万人を河北地方にいる史思明の元に、派遣した。

そして、牛廷かいを使って、范陽などの郡兵万人以上、合わせて五万人以上を、史思明を助ける為に、出発させた。

郭子儀は、恒陽に着いた。

史思明も付いて行った。

郭子儀は、溝は深く、砦は高くして待っていた。

賊軍は、決まり通りやって来た。

賊軍が追えば、官軍は去った。

昼は、元気に戦い。

夜は、賊軍の陣営を攻撃した。

賊兵は、休む隙はなかった。

数日後、郭子儀と李光弼は、話し合った。

賊兵は、疲れている。

戦にうって出るべきだ。

五月二十九日、

常山郡の東、中山郡の嘉山で戦った。

賊軍を大破した。

斬首四万級、捕虜千人以上。

史思明は、馬から落ちて、髪はほどけて乱れ、夕暮れ、裸足で、折れた槍を杖にして陣営に帰り、博陵に逃げた。

李光弼は、また囲んだ。

軍声は、大いに賑わったという。

ここにおいて、河北十余郡は、投降した者は守り、賊兵を皆、殺した。

この負けで、漁陽(范陽郡の北西にある郡で、かつて薊州と呼ばれたこともある。范陽方面を指して言うこともある。)への路が、また閉ざされた。

賊兵で往来する者は、軽装で、多くは、官軍から奪った物を持って、通り過ぎた。

范陽の将兵の家では、心が揺れない者はいなかった。



安祿山は、河北での史思明の敗北に、怖れを抱いた。

高尚、厳荘を呼んで、罵った。

汝らが、何年もの間、万に一つも手落ちがないからなどと、勧めるものだから、我は叛いた。

今、潼関は守られ、数か月もの間、進めない。

本拠地である、北の范陽への道は絶たれ、官軍に周りを囲まれていて、我れが、持っているといえるのは卞州と鄭州、数州だけだ。

万全なんて、どこにある?

そなたたち、自分から我に会いに来ないのか!

高尚と厳荘は、怖れ、何も言わずに退いた。

数日の間、わざと会いに行かなかった。

その間、安祿山を落ち着かせる言い訳を考えた。

機嫌を取らねば、我々は、酷い目に遭うだろう。

高尚と厳荘は、安祿山に言った。

古から、帝王は大業を成す時、皆、勝ったり、負けたりします。

一挙に成すことなど、出来ません。

今、周りに、官軍の陣営が多いと言っても、皆、新しく集めた烏合の衆なのです。

だから、いまだに、行軍をしていません。

我が薊州(漁陽)の北の強くて鋭い、蛮族の兵士に、敵として向き合う力は持っていないでしょう。

何を憂うのでしょう。

高尚と厳荘は、二人で、国を興すような大人物の命令に従い、支えます。

陛下は、一旦、気持ちを切り替え、他の将軍たちにも聞いて下さい。

誰も、内に怖れなど、持っていません。

もし、上の者と、下の者の心が離れたならば、我は、陛下の為に、危険を顧みません。

皇帝になったといえども、安祿山の知っている玄宗の生活とは、同じではない。

年を越しても、朝貢もなければ、動物たちの演技もない。

高尚たちが、皇帝を感じさせる持ちあげ方をしてくれたから、安祿山は、すこぶる機嫌が良くなった。

安祿山は喜んで言った。

阿浩、汝は、我が心を晴れ晴れとさせてくれた。

直ぐ、高尚と厳荘を呼んで、宴会を始めた。

酒盛りの最中、酒を勧め、自ら歌った。

初めてのように、持てなした。

阿浩は高尚の、乾真は厳荘の、幼名である。

安祿山は、洛陽を棄てて逃げ帰ることを、いまだに、決めてかねていた。


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