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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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張巡

玄宗は、呉王・祗を霊昌太守、河南都知兵馬使とした。

賈賁は、部下を千人引き連れ、雍丘の前まで来ていた。

雍丘は、黄河のべん州から始まり、淮水までの運河“通済渠”の、べん州に近い県庁のある地である。

これまでに、しょう郡太守・楊万石が、郡を挙げて、安祿山に降伏した。

しょう郡は、通済渠の傍らではないが、黄河と淮水の中ほどにある。

各戦場に送る兵士たちの調整でもしていたのであろうか?

新しい真源県令で、河東節度使の長史である張巡が、賊軍を迎え撃つため、遣わされた。

張巡は、真源に着いた。

真源は、淮水の少し北側にある。

安祿山は、唐に食糧を運び込ませないよう、そして、我が物にするために、通済渠の西側に位置する県庁所在地を手に入れようとしていたのである。

長安の兵糧攻めを考えていたのである。

通済渠を手に入れ、淮水から揚子江までの運河“山陽とく”までを得たなら、江南の租米、特産品を得ることができる。

真源では、指導者、役人、庶民、皆が、玄元皇帝廟で泣いていた。

玄元皇帝とは老子のことで、李家の遠い先祖として、皇帝号を賜っていたのである。

だから玄元皇帝廟は、全国各地にあった。

その廟に、賊を討つために挙兵しようと、役人、庶民、廟にいる演奏に従事する人(廟では、儀式が行われる。音楽は、儀礼としていつも奏でられる。だから、演奏者がいるのである。)たちまでもが、数千人集まっていた。

張巡は千人の精鋭を選び、雍丘に出かけた。

雍丘は、べん州、洛陽に近い分、安祿山の力を見せつけ、賊軍の士気をあげるためにも、安祿山が是非欲しいと思っている所である。

そこで、賈賁と合流した。

合わせて、二千人になった。


初め、雍丘の県令・令孤潮は、県でもって、賊軍に投降しようとした。

全員殺されるのも、困るけれども、見せしめに一人だけとなると、選らばれるのは、県令の自分だ。

我が身の安全を確保しようとすると、“やっぱり、県を挙げての投降がいい。”と、考えた。

けれども、役人も庶民も、命令に従わなかった。

投降に反対したのだ。

そこで令孤潮は、皆を後ろ手に縛り、斬っていった。

賊軍が、城に攻めてきたので、令孤潮は、あわてて城から出た。

後ろ手に縛られ者は、その間に縄をほどいた。

城の門を閉め、令孤潮が入ろうとしても、開けなかった。

だが、やって来た賈ふん、張巡は、話を聞いて招き入れた。

賈ふんと張巡は、雍丘の人たちを率いることとなった。

令孤潮の妻子を殺して、城の上に磔にした。

城壁を巡らし、その中に立て籠った。

呉王は、その話を聞いて、賈ふんに、監察御史を拝命させた。

妻子の話を聞いた令孤潮は、恨んだ。

賊軍の精鋭を率いて、雍丘を攻めた。

賈ふんは 門を出た。

そして、戦って死んだ。

だが張巡は、騎馬の戦いに出て、賊兵を退けた。

体は、傷だらけであった。

賈ふんの部下も、張巡の指揮下に入った。

兵士は、張巡を主軍とみなした。

張巡らは、自ら“呉王の先鋒使”と、称した。

ちなみに、張巡は武官ではない。

科挙に受かった文官である。

文武両道なのであろう。

三月二日、

令孤潮が、再び、賊将、李懐仙、楊朝宗、謝元同と四万人以上の兵士と共に、城下に迫った。

皆、怖れた。

固い志をもつ者は、居なかった。

張巡は言った。

賊兵は精鋭だが、我が心は軽い。

難しく考えることはない。

今、出て行って、不意撃ちを食らわしたら、必ず、崩れる。

賊軍の勢いは挫ける。

その後、城を守ればいい。

張巡は、千人ごとに、城壁を乗り越えさせた。

そして、数隊ができた。

突然門が開き、張巡が数千人の兵士の先頭に立ち、令孤潮の直ぐ前まで走った。

押し寄せる人の波である。

人も馬も、虚を突かれ、慌てた。

肝を潰した。

とても戦う気分ではなかった。

賊軍は、退いた。

次の日、賊軍は城を攻めに来た。

城の周りに、櫓を百程設けた。

張巡は、城の上に柵を置いた。

賊兵は、蟻のように登ってきた。

張巡は、束にした干し草に脂を注ぎ、火を点け、落とした。

賊兵は、登れなくなった。

張巡は、その隙を突き、出兵して攻撃した。


ある夜、雍丘では、敵の軍営の上に綱を垂らし、人を降ろして、綱を切った。

城外に、連絡のため、人を送ったのである。

もう六十日以上になる。

大小三百以上の戦いをした。

傷が治らないうちに、また戦である。

賊兵は、遂に逃げ出した。

張巡は、勝ちに乗って追いかけ、蛮族二千人程を捕らえ、帰ってきた。

喜びの軍声が、響き渡った。

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