表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
143/347

親王・えんの死

てい王、えんの妃に過ちがあった。

えんは怒った。

だが、玄宗にあえて報告はしなかった。

別室に退けた。

妃の位が空くと思ったのか、次の位である、じゅ人二人が寵愛を争い始めた。

皇帝の息子は、親王である。

親王には、妃の他に二人のじゅ人と、十人の“よう”が決まりとなっている。

じゅ人は視正五品、ようは視従七品、品階に合わせた手当てが貰える。

決められた数の女官は、朝廷で面倒を見てくれるが、それ以上は、自分でしなさい、と言うことだ。

二人のじゅ人の一人が妃になれば、十人のようの中の一人がじゅ人になれる事になる。

えんには、五十五人の子供がいる。

子供の母親の中から、妃を選ぶのではないか?

だから、新しい妃は娶らないであろうと、考えたのである。

じゅ人の一人は、自分のほうが愛され選ばれるように、巫者に頼んで、御札を作って貰った。

そして、それをえんの履き物の中に入れた。

親王たちは、王宅に住んでいる。

世話をする宦官たちは、監視もしていた。

えんの担当者とえんの関係は、上手くいっていなかった。

その宦官は、玄宗に、

てい王は、履き物の中に御札を入れて、陛下を呪っています。

と、上奏した。

玄宗は、人を使って履き物を隠させ、その御札を手に入れた。

見て、大いに怒った。

宮中では、巫術は禁止されている。

皇后も、それが理由で廃された。

罰せられて、当たり前なのである。

えんを引ったて、責めた。

えんはうなだれて、謝った。

私の罪は死に価します。

でも、私は本当に知らなかったのです。

玄宗は、その任の者を遣わして、調べさせた。

やはり、じゅ人の仕業だと分かった。

だが、玄宗は、なおも疑い、怒りが収まらなかった。

太子と他の親王たちは、(自分たちにも起こり得ることなので)、皆で玄宗に赦して欲しいと嘆願した。

けれども、閑厩使を呼び、鷹狗坊に囚われさせた。

えんは、

朝廷(政事)とは、縁を切ります。

と、請うた。

結局、怒りと哀しみで、亡くなった。

妃は、少師、葦滔の娘であった。

えんの妃には子供が無かった。

えんの死後、実家に戻った。

蓮は、珠珠にてい王、えんの話をした。

玄宗にかかわる事なので、都合の悪い事もつい言ってしまいそうで、誰とでもは話せないのだ。

珠珠しかいないのだ。

蓮は、衝撃を受けていた。

王宅に住んでいて、“呪う”など、とても出来ない。

だのに、父親である玄宗は、息子を信じなかった。

あろう事か、収容するにあたり、牢ではなく、鷹か狗の、動物の檻に入れたなんて。

床が地面で、いくら敷物を敷いても、獣の臭い匂いがしたであろう。

伯父上たちも、驚いたであろう。

てい王の怒り、哀しみも深かったはずである。

人として扱われなかったのだから。

身分も奪われた。

父上は、

私が復位させる。

と、言っている。

てい王えんは玄宗の第四子、忠王のすぐ下の弟だったのである。。

陛下、どうかしてる。

我が子だろう。

蓮は、後から、後から、恨み言を言った。

珠珠は座り、蓮を手招きした。

隣の空いた場所に手を置き、ここよとばかりに、軽くたたいた。

座った蓮の体を倒し、頭を膝に受けた。

髪をなでながら、

終わった事よ。

言葉にしたから、少しは落ち着いた?

今ごろは、陛下も、後悔してるわ。

今度会った時は、何事もなかったように、振る舞って、

陛下だって、恥ずかしいと思うわ。

信頼していた、李林甫に裏切られたりしたから、誰を信じていいのか分からないのよ。

混乱しているのだわ。

だから、あんな暴挙に出たのかも。

陛下だって、苦しいのね。

そう思うと、あまり責められないでしょ。

蓮蓮は、珠珠に愚痴を言える。

でも、陛下は、貴妃様には、言えないでしょう。

貴妃様の前では、完璧な皇帝でいなければ、ならない。

弱音は吐けない。

しんどい筈よ。

片手を頭に置き、もう片方の手は、顔を撫でた。

その手が、蓮の口を摘まんだ。

今日は、寡黙な人が良く喋りました。

と、言って、摘まんだ手を振ろうとした。

蓮は、手首を掴み振りほどき、座り直した。

ひどい奴め!

と、言って、抱き寄せ、口づけをした。


こんな激しい口づけ、久し振り。

さっきとは、まるで違う人になった気分だ。

珠珠は、蓮を思い通りに出来るんだね。

やっぱり、珠珠はご主人様だ。

丹丹を、拝まなきゃ。

氏神様だから。

珠珠を娶れたのは丹丹のおかげだ。

珠珠、計算尽くしの婚姻で、珠珠を娶れたのは、奇跡に近い。

珠珠、蓮は幸せだ。

蓮のもとに来てくれてありがとう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ