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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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楊しょう、楊国忠となる

五月、

安祿山が東平郡王を賜った。

武将で王に封じられたのは、安祿山が初めてである。

八月、

安祿山は、今度は河北道采訪処置使に任じられた。

安祿山に対する寵愛が偲ばれる。


朔方節度使、張斉丘は軍の配給すべき食糧を不手際で失った。

軍の将も兵士も怒り、張斉丘に殴りかかった。

兵馬使、郭子儀は身を呈して張斉丘を守り、皆の許しを得た。

世の人は、郭子儀が軍の者の衆望を得ていると知った。

この後も、郭子儀は張斉丘を守った。

この時、唐の軍政は安定していたのか、誰も知らなかった。

失態を演じた張斉丘は、斉陰太守に左遷された。

朔方節度使は、河西節度使、安思順に一時的に預けられることとなった。



安祿山は、奚と契丹を、度々宴に誘った。

そして、ろうとう酒を呑ませ、酔わせて、抵抗出来ないようにさせた。

そして、殺した酋長の首は、箱に入れ献上した。

その他の者千人ほどは、捕らえておいた。

ろうとう酒は、死には至らぬ毒の酒であった。

そんな事が何度かあった。

俘虜の数も多くなり、管理も大変になったので、入朝したいと請うた。。

玄宗は、その頃、昭応という場所に王公たちが別宅を構えていたので、同じ昭応に、安祿山のために屋敷を造るよう命じた。

安祿山が、戯水に着いた時、楊しょうが、兄弟姉妹、皆で、迎えに行った。

野は、冠で蓋われた。

玄宗は、みずから、望春宮に出かけ待っていた。

日を改め、安祿山は、奚の俘虜八千人を献上した。

玄宗は、考功郎中に命じて、安祿山を勤務評定の最上位の上上考にした。

前回、参内した折りに、安祿山は、上谷で鋳造するようにと、玄宗から鋳銭爐を五爐、賜っていた。

安祿山は、試しに造ってみました。

と、千緡の貨幣を献上した。

貨幣を造るのは、国家の権利である。

玄宗は、お気に入りの者に何かを与える事に気前がいい。

国家の物を、分け与えているという感覚は、ないようであった。

専制君主政治は、皇帝が法律なのである。

施行されている法律より、皇帝の意思が優先される。

朕は、国家なのである。

年齢による弊害なのか、忘れているようであった。



楊しょうは、張易之の甥であった。

あの、武后様に、寵愛された張兄弟(張易之、張昌宗)の、兄の方の張易之である。

寵愛をいいことに、随分勝手をして、皆に憎まれた。

武后様が老いて、

武后様が亡くなれば、このままでは、皆に殺される。

と、身に覚えがある兄弟は、吉ぎょくに相談した。

中宗様を幽閉先から帰すように説得して、恩を売ったらいい。

との助言を得て、武后様を動かしたものの、その程度の善行では許されず、結局、張柬之に誅殺された。

あの張易之である。

楊しょうの母親は、張易之の妹であったのである。

張兄弟は讒言して、武后様を怒らせて、中宗様の嫡長男の重潤、永楽公主を杖死させた。

二人は、玄宗の従兄弟である。

死んだ人とはいえ、玄宗にとって張易之は、好意の持てる人物だとは思えなかった。

楊しょうは、気にした。

だから、楊貴妃を通じて、

しょう兄上が悩んでおります。陛下、兄上をお助け下さい。

と、お願いさせて、ひと呼吸おいてから、話すようにした。

読み通り、玄宗は、楊しょうに優しかった。

伯父上の潔白を明らかにしたい。

と請う楊しょうに、

中宗様を幽閉先、房陵から帰すように武后様を説得した。

ことを功績として、張兄弟を元の官職に戻した。

そして、残された子、一人に、官職を賜った。

厚く御礼を申し上げてから、もう一つの悩みを伝えた。

それは「しょう」という、名前の字の事であった。

しょうは、金に、りっとうと、いう漢字である。

“漢”の劉邦の劉は、うさぎ、金、りっとうと、分解される。

劉の字からうさぎを取れば“しょう”の字となる。

楊しょうは、自分の名前に、りっとうが付いているのが、気になったのである。

いかにも謀反を起こしそうな「名前」と思えたのである。

その事を玄宗に、訴えた。

そして“名前を賜りたい。”と、お願いした。

玄宗は『国忠』と、名付けた。

楊しょうは『楊国忠』と、なったのである。

楊国忠は、楊貴妃の力に感謝した。

そして、楊貴妃を介して、自分もその力を使うようになるだろうと、確信した。


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