嵌める手口
俶か、
そなたも、聞いていると思うが、韋堅がすべての職を失った。
陛下に理由を聞かれたが、知らないと答えた。
恥ずべきことなので、特に、陛下には、知られたくないそうだ。
韋堅に、口止めをされていたのだ。
だから、言わなかったのだが、李適之の場合と、全くおなじだったそうだ。
“嵌められたと解った、”と言っていた。
だから、俶にも伝えておこうと思ってな。
そなたには、多分仕掛けてこないと思うが、今後のためにも、知っておいた方がいいと思ってな。
教えてください。父上、
あんなに、華々しい活躍をしたのに、どうしてなのですか?
李適之は、兵部尚書をしていただろう。
李林甫と同じように、宰相もに任じられていた。
李林甫とは、なにかあるたびに意見が合わず、対立していたそうだ。
ある日、兵部の武官たちが六十人以上、刑部に捕まったそうだ。
全員、罪を認め、李適之は監督責任を問われたそうだ。
辞めるようには言われなかったが、人数が多すぎるし、当然、責任はあるから辞めたそうだ。
宰相の方はそのままだったがな。
やっぱり、そんなことがあっては、同じ宰相として、李林甫に対して、立場が弱くなったそうだ。
おかしいと、前には、言えたことが言えなくなったそうだ。
韋堅の方だが、韋堅も刑部尚書を李林甫から、任じられた。
まあ、辞令が出たから、皆知っていることだがな。
やはり、任じられてほんの一ト月か、二ト月で、刑部の者が何十人も捕まり、調べられたそうだ。
捕まった者は、全員罪を認め、責任者である、韋堅が監督責任を問われたそうだ。
その時、任されていた全ての職を、「管理、監督が出来ない人物には任せられない。」との事で、奪われたそうだ。
だから、韋堅は失職したのだ。
兵部にせよ、刑部にせよ、吉温と羅希せきが取り調べをしたということだ。
拷問されたようだ。
刑部の者は、兵部の取り調べを見てるものだから、痛い思いをしないうちにと、刑を認めるのが早かったそうだ。
だから、韋堅も、誰にも言わないでいたのだが、李適之と話をして、まるでそっくりな罪の問われ方だったので、“嵌められた。”と、気づいたそうだ。
吉温にせよ、羅希せきにせよ、きつい拷問をする獄卒だと有名だからな。
捕まった者は、罪を覚悟したのだな。
私にも、俶、そなたにも、仕掛けては来ないと思うが。
前にも言ったように、私は李林甫に狙われているみたいだからな。
李林甫は、寿王を次の皇太子にと、陛下に何度も、進言していたのだ。
だのに、私が皇太子になった。
だから、気に入らないみたいだな。
自分がそうだから、私が仕返しすると思っているようだ。
皇太子の座から、引きずり下ろしたいみたいだ。
だから、私の身の周りの者も、私の力を削ぐために、狙っているみたいだ。
李林甫と、対立している者は、私に近い人たちばかりだ。
李林甫は、聞いたとおり、汚ない手を使う。
しっぽを掴まれないように、普段から、気をつけなさい。
悪いことでなくとも、話をねじ曲げて、口実にするから。
二人の話で、わかっただろう。
知っておいた方がいいと思って、話したのだ。
陛下には、内緒だからな。
韋堅は、古くから知っている分、無能だと思われるのを嫌がるから。
はい、わかりました。
参考になりした。
それでは、失礼します。
ただいま、
かつは、どうしている?
さっき、お昼寝したとこです。
じゃ、珠珠とゆっくり話せるね。
次に産まれる女の子の話をしよう。
まあ、女の子が産まれるのですか?
いつ、産まれるのですか?
一年後だよ。
知らなかったの?
はい、知りませんでした。
覚悟しといて、
珠珠、ソックリな女の子だ。
私は、小さな珠珠の姿が見たい。
珠珠がどんなふうに大きくなったか、見たいんだ。
だから、見た目も、中身も珠珠そっくりな女の子が欲しい。
女の子だったら、今の珠珠に繋がる、成長の過程を見れるだろう。
贅沢な望みだろう?
私の母上は、女の子が欲しいって、毎日お願いしてた。
一才しか離れていないから、年の近い男の兄弟はどうしても、競争する。
競争してたら、仲が悪くなる。
これは、母上の弟たちの話だ。
だから、女の子が欲しかったって。
私まで、そのお祈りに付き合わされたよ。
だから、かつが産まれてから、五才位年を離すつもりだったから、今まで言わなかったんだ。
珠珠、はい、は?
蓮蓮のおっしゃるとおりに。
よろしい。
模範解答だ。
かつの寝顔、見てくる。
蓮蓮、私も一緒に。