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蓮華 代宗伝奇  作者: 大畑柚僖
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王きょう・登用

隴右節度使・皇甫惟明が、石堡城で吐蕃と戦い敗け、副将が戦死した。

あの皇甫惟明が敗けるとは珍しい。

やはり、石堡城は攻めるのが難しいのだな。

玄宗は、敗けを責めなかった。

十月十三日、

玄宗は、麗山温泉に出かけた。

途中、玄宗は不機嫌であった。

高力士が声をかけた。

陛下、なにか御不満がおありですか?

ああ、ちょっと考え事があってな。

韋堅が、すべての職を解かれた。

これまで、韋堅は転運使として、玄宗に毎年、莫大な金を進奉してきた。

だが、職を解かれた今、韋堅からの進奉は期待出来ない。

今年も、温泉にやってきた。

だが、かかる費用を考えると、あの者たちを喜ばせられない。

韋堅に代わる者を探さねばな。

せっかく、言いやすいように、皇甫惟明まで呼んで、韋堅に訴える機会を与えたというのに、韋堅は黙ったままだった。

一体なにがあったのだ。

言えば、転運使の役を取り返してやったのに。

もういい、そんなことは。

それより、お金をどうやって得るかが問題だ。

どうせ、あと少しの人生だ。

少しくらいの贅沢は許されるだろう。




考えた挙げ句、玄宗は、王きょうを呼んだ。

戸部郞中の王きょうを戸口色役使に任じ、

“農民の税の免除をするように、”

と、勅をだした。

さすがに、最初から進奉のことは言えなかったのだ。

王きょうは、

徴収した物の運搬費用が増える一方ですし、地方の役所の経費もありますから、農民の税の免除はできません。

昔ならば、守備兵の租庸は六年ごとに改め、免除されました。

けれども、あの頃の辺境の将は 敗けることを恥じて、兵士が死んでも報告しませんでした。

だから、戸籍から、除かれていません。

王きょうは、守備兵の存在を話した。

話すうちに、玄宗の口ぶりから、玄宗の真意が減税でないことに、気が付いた。

戸籍はあっても、人はいなくて税を逃れています。

だから、六年の守備兵の戸籍を調べて、租庸の税を徴収すべきであります。

三十年も払ってない者もいます。

調べるべきであります。

と、上奏した。

減税とはまるで反対の方向に、話をすり替えていったのである。

結果、払われてない税は、近辺の者が分担して払うことになった。

民は訴えるところが無かった。

玄宗は在位が長くて、日日贅沢になり、後宮の費用も限りがなかった。

だが、国庫のものを使おうとはしなかった。

王きょうは、玄宗の気持ちを知った。

そこで、税以外に、百億満緡のお金を進奉した。

それを、皇帝の私用の内庫にいれておいた。

それで、宮中の宴会などの費用を、賄った。

そして、

これは税金ではありません。

経費を節約しました。

と、言った。

玄宗は、王きょうは国を富ます能力がある、有能な役人であると、ますます厚遇した。

王きょうは、玄宗の寵に応えて、厳しく税を取りたてた。

だから、民の恨むところとなった。

王きょうは御史中丞、京畿采訪使になった。

一方、楊しょうは宮殿で、宴会に侍り、賭博の計算をした。

玄宗は、楊しょうの計算が正確なので、

名勘定奉行だ。

と、褒めた。



天宝五載(746年)正月、

隴右節度使・皇甫惟明は河西節度使を兼ねることになった。

皇甫惟明は隴右節度使、河西節度使、二ツの節度使を任されたのである。

李適之は李林甫に

華山には、金鉱がある。

採れば国が豊かになるだろう。

陛下は、まだ御存知ない。

と、聞いた。

別の日、李適之はその事を玄宗に上奏した。

玄宗は大喜びした。

そして、李林甫に声をかけた。

李林甫は

私は知っておりました。

ただし、華山は陛下の本命、干支、酉の方向にあります。

王気の在るところです。

掘って良いところではありません。

だから、私はあえて言いませんでした。

と、言った。

そのことを聞いて、玄宗は李林甫が自分のことを大切に思っていると知り、李適之は自分のことを思う気持ちが少ないと感じた。

玄宗は、李適之に

これから上奏する時は、まず李林甫に相談してからするように。

軽はずみな行動は無益だ。

と、おっしゃった。

李林甫に嵌められたのである。

だが、確かめなかった李適之も悪かった。

李適之は、それ以来、なにもしなくなった。

李適之は、玄宗の心を失ったのである。

韋堅も失職していた。

暇な二人はよく会うようになり、また、恨みに思う相手もおなじ人物なので、話も合い、ますます親密になっていった。

そんな二人を見て、李林甫は一層憎んだ。



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