紫玉との婚姻
父上、どうかしたのですか?
俶か?
陛下から、難問をだされたのだ。
難問?
玉環様の姪、紫玉がそなたに嫁ぐと言うことだ。
我に、ですか?
今は、珠珠が身重なので、心穏やかに過ごさせたいと思っているのですが?
私もそのように伝えたのだが、親子と言えども、君臣の間柄だと言われたよ。
逆らえば、それなりの処罰を科すと。
陛下がですか?
信じられません。
玉環様のことは、慕っていたのに我慢して、随分待った。
今までの想いが強いぶん、言いなりだ。
道士となられた妹君が、席を玉環様の姉上たちに譲っても、姉上たちは平気で座るし、 陛下も当たり前のようにしているという。
出家していても、妹君は長公主だからな。
太宗様が高祖様に大明宮を建てていた時、皇帝の居所を高祖様に使ってもらっていたからか、皇帝のお子なのに高宗様は東宮で産まれたそうだ。
だから、珠珠も、三男で皇帝になられた高宗様にあやかって、東宮で最初の子、長子を産んだらどうか、と、言われた。
珠珠が東宮にいる間に、広平王府で婚姻をせよ、ということですね。
でも、父上、玉環様の姪、正妻を要求するのではないですか?
良くわかったな。
だが、俶、そなた拒めるか?
罪に問うと、言っていたぞ。
父上、陛下、前とは違いますね。
風向きが変わりましたね。
多分、これからもそうなるでしょう。
こちらも、そのつもりで対応するようにしなければなりません。
陛下が玉環様の気持ちを優先なさるなら、先を読むようにしましょう。
結構です。
珠珠には、一ト月前に、東宮に移ってもらいます。
その間に王府で、婚姻をします。
子に影響が出るといけませんから、産まれるまで、珠珠には伝えませんし、姪には会わせません。
子が産まれてから、我が伝えます。
珠珠には、最初の男の子が産まれたら、正妻にすると約束していたのですが、謝ります。
そのかわり、父上の方から、代替わりする時、正妻にすると云って下さい。
姪の子は、今は嫡子となるでしょう。
でも母親が正妻でなくなると、嫡子ではありません。
珠珠の子は側妻の子でも、長子です。
珠珠が正妻になれば、子は、嫡長子となります。
父上が即位する時、珠珠のことを約束の地位に就けるように、手助け、お願いします。
妻の地位を決めるのは、夫です。
皇帝に無理強いされて、仕方なく従うのです。
代替わりの時、我の気持ちを叶えて下さい。
陛下は変わった。
これからも、玉環様の気持ちを重く見て、我々の気持ちを考えないでしょう。
我は、これから、父上のために働きます。
東宮を盛り立てるようにします。
ですから、珠珠と子のために父上のお力をお貸し下さい。
お願いします。
ただいま。
珠珠は笑いながら蓮を見た。
蓮は珠珠の後ろに回って、両手で、珠珠のお腹をなでまわした。
おい、元気か?
手の下でお腹がうねった。
お、こんなに暴れるとは、男の子だな。
そんなこと言って、女の子だったら、ガッカリしますよ。
毎年でも産みますから、女の子でも、大切にして下さいね。
我は、父上から女で良かったって、云われていたから、ガッカリされたら、辛い。
子が可哀想。
お願いしますね。
ああ。
我が家は、丹丹を見たら解るだろう。
蓮の母上からの、キツイお逹しで、女の子は大切に、との事だ。
心配はいらない。
ありがたいわ。
蓮蓮の母上に感謝だわ。