表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

ウチナーの極普通のスナックの酔っ払いたち


インターネット小説にようこそいらっしゃいました。インターネット小説は世界を駆け巡る。ネットからネットへ渡り歩き、あっという間に世界を駆け巡る。私のインターネット小説は世界を駆け巡る。

きみはアメリカ人ですか、それともスイス人ですか。きみがブラジル、イギリス、カナダ、ロシア、イラク、タイ、オーストラリア、オーストリア、スウェーデン、ドイツ、チリ、コロンビア、キューバ、トルコ、ギリシャ、イタリア、スペイン、台湾、メキシコ・・・・・・・・・・どの国の人間であるにしても私のインターネット小説に訪問してくれて感謝します。このインターネット小説はウチナーという島から発信しています。私は世界の誰かが私の小説を読んでくれることを願って、インターネットに小説を掲載している者です。

インターネットは素晴らしい。なにしろ小さな島の無名の私の小説が世界中の人間に読んでもらうことができるのです。しかも、インターネット小説を公開するための経費はごくわずかなのです。貧乏な私でも世界中の人間を対象に小説を掲載できるのです。素晴らしい世紀になりました。


ところできみはウチナー島を知っていますか。多分知らないだろうなあ。いや多分ではなくて確実にきみはウチナー島を知らないだろう。なにしろウチナー島は世界地図で見ると砂粒のようなとても小さな島なのだ。世界地図できみはウチナー島を見つけることができないかも知れない。ウチナー島とはそんな島だ。そんな微小なウチナー島の北の方にやんばると呼ばれている過疎地帯がある。この小説はそのやんばるの片隅にあるちいさな港町のスナックに集まった極く普通の酔いどれたちの顛末の小説だからもしかするときみには詰まらない小説であるかも知れない。

まあこの小説は小説としての価値があるのかないのか私には分からない。もしかすると小説としての価値はないのかも知れない。価値がないなら書くなときみは言うかも知れない。しかしそのように言われると、書こうが書くまいがそれは私の勝手だと言いたくなる。きみがこの小説を読もうが読むまいがそれはきみの勝手であるのと同じくらいに書こうが書くまいが私の勝手なのだと言いたくなる。きみはきみで読者として自由だし私は私で小説家として自由であるのだ。ここまで読んできてこの小説を放り投げたいのならどうぞ(インターネット小説なのだから「ほうり投げる」という表現は適切ではないが「放り投げる」という表現の方が気分的にはいい)、遠慮しないで放り投げたまえ。それはきみの自由なのだから私は文句は言わない。それにきみに途中で放り投げられても私の心はいささかも傷つかないのだから。

きみに途中で放り投げられても私の心がいささかも傷つかないというのは私が傲慢で神経が図太いというわけではないことをことわっておく。むしろ私はとても臆病で繊細な神経の持ち主なのだ。私が傷つかないというのは精神的な問題ではなく現実的にそのようなシステムになっているということを言っているのだ。つまりだ。君がこの小説を読んでいる頃には私はとっくの昔にこの小説を書き終えている。私はこの小説を最後まで書いて、私のホームページにアップロードを終えたからきみはこの小説を読むことができる。私のホームページは無名だし最初から多くの人に読まれるはずはない。私は私の小説を読んでもらうために他のインターネット小説のホームページを訪問して掲示板に書き込みをやったり、英語翻訳やロシア翻訳など外国語の翻訳ソフトを利用して世界のあちらこちらの掲示板にもこの小説の宣伝をやった。(自分の小説を英訳するほどの英語力は私にはない。) 

つまりだ。きみがこの小説を読んでいる現在は私がこの小説を書いてから大分時間が経過しているということなんだ。きみがこの小説を読んでいる現在の私は家でごろ寝しているかも知れないし、ひょっとすると何十年という時間が経過して私はすでに老人になってよたよたと痴呆状態で生きているかも知れない。ひょっとするとすでに私は死んでしまいこの世の人間ではないのかも知れないのだ。

だからきみがこの小説を読もうが投げ捨てようが燃やしてしまおうが昼寝の枕にしようが私はきみがこの小説を読んでいることを知る筈がないのだから、きみがこの小説を読んでいることは私には関係のないことなのだし、きみに途中でこの小説を放り投げられても私の心はいささかも傷つかないというわけなのだ。傷つこうにも傷つくことができないのだ。

でも、私の正直な気持ちとしてはきみに最後まで私の小説を読んでほしい。「ここまで読んできて放り投げたいならどうぞ、遠慮しないで放り投げたまえ。」と豪語したのは実は自分の小説に自身のない裏返しなのだ。小心者の見栄を張った狂言なのだ。きみの気分を害したのなら私はきみに謝る。


小説を読んでもらう前にきみにウチナー島を紹介しておこう。なにしろウチナー島は世界的には無名なのだから、きみはウチナー島について知らないはずだ。だからウチナー島を紹介するのは私の義務なのだ。

きみが日本人ならウチナー島は知っているよね。だってウチナー島は日本の領土だし観光の島だ。修学旅行で多くの中学生や高校生が九州や四国や本州や北海道からウチナー島に来る。ウチナー島が気に入ってウチナー島に移り住む日本人もけっこう多い。

ウチナー島は日本の領土であるからウチナー人は日本人だしウチナーは日本なのだから「ウチナー島に移り住む日本人」という表現は適切ではないな。「ウチナー島に移り住むウチナー島以外の都道府県の出身者もけっこう多い。」」と書かなければね。

ウチナー島は日本一の長寿島として有名なんだ。日本は世界でトップの長寿国であり長寿国世界一の日本の中ではウチナーが一番なのだ。ということはウチナー島が世界一の長寿県ということになる。県という名称はアメリカやヨーロッパにもあるのだろうか。県という言葉を使えば日本の中で比較していることになってしまう。世界一長寿の県という表現でいいのだろうか。ううん、悩む。日本語は難しい。世界一の長寿島。世界一の長寿村。ううんなんか今いちしっくりこないな。世界一の長寿地帯。これも変な感じだ。神経質な私はこんなことで数日も悩み続ける。悩み続けて頭が変になりそうだからこれ以上は考えるのは止すことにする。ここで三日間文章が止まってしまった。

とにかくウチナーまたはウチナー島またはウチナー県は長寿世界一でありイギリスやアメリカの長寿研究家や料理研究家がひんぱんにウチナー島にやってきてウチナーの長寿の原因を研究している。それが自慢なんだなウチナーの文化人連中は。しかしウチナーの庶民はそんなことを自慢する心の余裕はない。ウチナーの庶民はというとなにしろ失業率が八パーセント以上もあり日本で一番高い失業率を誇っているものだから・・・・。誇っているというのは変だな。失業率が高いということは貧乏人が多いということであり誇れるようなものではない。まあ、そういうわけでウチナー島の貧乏な庶民はウチナーが世界一の長寿県であると自慢する余裕もなくあくせくと生活に追われて生きているということだ。

もし君がアメリカ人ならウチナー島なんて全然知らない筈だ。なにしろウチナー島は太平洋の反対側にあるとても小さな島なのだから。あの世界一広い太平洋の反対側だよ。要するにアメリカ地図で見ると太平洋という大海の果てにウチナー島はあるのだ。君の学校の世界地図では左の端っこにウチナー島はあるのだ。地図の左端にあるだけではなく北は日本列島、南は台湾、フィリピンに挟まれている微小な島だからきみに関心がないのは私にも理解できる。A3版世界地図で見ると砂粒よりも小さい島だからね。虫眼鏡で見ないとウチナー島は探せない。おいおい虫眼鏡をおもちゃ箱から出すなよ。虫眼鏡で見ないとウチナー島は探せないというのは冗談だよ。肉眼で見えないということは印刷されていないということだ。印刷されていないウチナー島なのだから虫眼鏡で見つけることなんかできる筈がないではないか。とにかくそのくらい小さな島というわけだ。印刷されるかされないかは印刷する者の気まぐれで決まる。そういう島だということだ。

海の果ての砂粒のような島をアメリカ人の君が知るわけはないし興味を抱くこともないだろう。アメリカはとても広いだけではなく世界を牽引している大国だしね。他の国の位置や文化を知らないアメリカンナショリストがアメリカ人の大半を占めるということでもアメリカは有名だ。

「アメリカ人はアメリカ地図を世界地図だと思っている。」

というまことしやかな噂があるくらいだ。政治・経済・文化はインターナショナルな存在でありながらアメリカ人の頭の中味はナショナリストであるらしいという噂はウチナー島までやって来ているよ。

日本、中国、ロシア、フランス、ドイツなどの世界有数の国の政治や文化について知らないアメリカ人はとても多いというのが海の果ての砂粒のようなウチナー島の人々の常識になっているんだ。この常識から推理すると、アメリカ人の百パーセントに近い人がウチナー島を知らないだろうということになる。アメリカ人は知的ナショリストなのだからアメリカ人のほとんどがウチナー島を知らないだろうということに私は納得している。くやしい納得ではあるのだが。

しかし、アメリカ人よ。ウチナー島の人々はアメリカのことをよく知っているぞ。なにしろウチナー島にはアジアで一番大きいアメリカ軍基地が存在しているのだ。アジア一のアメリカ軍基地がウチナー島に存在しているのをアメリカ人のきみは知らなかっただろう。どうだ、驚いたか。きみがのんびりと平穏な生活を送れるのはウチナー島の人々がきみの代わりに戦争の恐怖に怯えてあげているからなんだぞ。

古くは朝鮮戦争にベトナム戦争。最近ではアフガン戦争やイラク戦争の戦場にウチナーから多くの兵士や爆撃機が参戦しているのだからウチナー島のアメリカ軍基地はアジアの戦争に重要な働きをしているというわけだ。だからウチナー島はアジアの国々から怨まれている。だからウチナー島がアメリカと敵対するアジアの国から攻撃される可能性は高い。いいかアメリカ人のきみ。ウチナーの敵国ではなくてアメリカの敵国からウチナー島が攻撃されるかも知れない危機をウチナー島は抱えているのだ。ウチナーの敵国ではなくアメリカの敵国である国からミサイルがウチナー島をめがけて発射され、ウチナー島で大爆発してウチナー島が消滅するかも知れないのだ。たまったものじゃない。ウチナー島の人々はいつミサイルが飛んでくるかも知れない恐怖に怯えながら生活をしているのだ。ウチナー島はアメリカの槍であり盾であり鎧かぶとにさせられているのだ。いいか、アメリカ人。ウチナー島の人々が戦争の恐怖で怯えている分だけきみ達は戦争の恐怖から逃れているということだ。きみ達の代わりにウチナー島の人々が戦争の恐怖に怯えてあげているということだ。いわゆるウチナーはアメリカの戦争恐怖の請負人というわけだ。

でもこの話は止めることにする。政治の世界は難しいし、こんなことを話せば話すほどに私は惨めな気持ちになる。

ところで、きみはアメリカンナショリストであるからウチナーを知らないしウチナーには興味もないだろう。しかし、よく聞けよ。ウチナーにはアイゼンハワー大統領が来たし、クリントン大統領だって来たのだ。歴代のアメリカ大統領の中でも燦然と輝やくあのクリントン大統領がウチナー島に来たのだぞ。なぜ来たのか忘れてしまったが正真正銘のクリントンアメリカ大統領がこの砂粒のように小さいウチナー島に来たのだ。きみの町にアメリカ大統領が来たことなんてないだろう。ふん、ざまあ見ろだ。きみの田舎にはアメリカ大統領が一度も来たことがないのにウチナーには二人のアメリカ大統領が来たのだよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ