第一章 喜世姫(きせき)視点 突然変わった日常
私はベッドの隣にある車椅子を眺めながら、中庭に出る日の事を想像していた。テーブルの上には、さっき授業を受けた時に使った端末とノートが置いてある。この病院ではインターネットを見る際は必ず看護師さんの許可が必要、私はいつもテレビ電話の授業を終えると、ナールコールで看護師さんを呼んで、充電も兼ねて端末を預けている。
もちろんこの病室にもコンセントがあるのだが、今の私の体では、コンセントまで行く事も不可能。そしていつも授業を受け終わった後は、参考書と向き合っている。
私の手の届く範囲には、読みかけの本や雑誌が積まれている。雑誌の種類は様々、ファッションから料理、趣味の講座本も。本も同じく、ミステリーからホラーなど、様々なジャンルを読んでいる。
今世間で話題になっている本もあれば、コアで無名な作者の本もある。私の入院している五階の看護師さんと本の交換をしたり、女性の看護師さんと一緒にファッション雑誌の話題で盛り上がったり、入院生活は決して苦しいだけではない。
病室にはテレビもあるけど、夜遅くに放送されているドラマなどはさすがに見る事はできない。私が入院している間、父が私の見たいドラマなどは録画してもらっているが、看護師さん達からもドラマの情報を聞き出せる。だがあえて内容は言わないようにしてもらっている、ちょっとした心構え程度に感想を聞いているだけ。
それに私の病室がある五階には、女性の患者さんが多い。たまたま患者さんの入れ違いでそうなったらしく、暇になれば他の患者さんが私の病室まで足を運んでくれる。中には車椅子の女の子や、松葉杖をついているおばさんもいるので、会話の幅が広くて、誰と話しても楽しい。
私は元々気さくな性格なので、最近では他の患者さんの家族とも話をしている。行動が限られている私にとっての唯一の楽しみが、少ない時間でも楽しめるおしゃべりだ。
「環境が変わる事はよくある事」、彼女はその程度の考えだった