第十二章 キセキ視点 近づいて来る存在
もうすぐ傍まで来ている・・・・・
夜の十一時、いつもならとっくに夢の中にいるのに、何故か今日は眠れない。ソウボが亡くなってからだいぶドタバタしている事もあるけど、それよりも私には気になる事があった。
真っ暗な病室の中はとても静かに思えたけど、私の頭の中では色んな人の声が響いていた。幻聴なんかではなく、思い返しているだけ。でも私は気になる事があると、どうしても他の事が手につかない性格。睡眠や食事もそっちのけで、気になる事を考え続けてしまう。
見回りの看護師さんが来た時には、布団をかぶって寝ているフリをしていた。ソウボから教えてもらった技だ、ソウボもよく就寝時間後に夜更かしをする為に、この技を使っていると言っていた。
でも今頃ソウボが使っていた病室の布団は、誰にも使われずに放置されているんだろう。亡くなったソウボが今何処にいるのかは分からないけど、遅かれ早かれ葬式の為に持ち出されるんだろう。
葬式に出席できるかは、私の怪我の治り具合次第だけど、せめて私の入院生活に彩をくれた彼に向かって、手を合わせてお礼の気持ちを伝えたい。そして彼のクラスメイトや部活メンバーとも話をする機会を設けたい。
でも、ソウボの両親がまだこの病院に来れないとなると、それは随分先の話になると思う。ソウボの両親にもきちんとお礼がしたいけど、多分初日にそんな暇は無い。まず彼の両親は、落ち着いて現状を理解する事の方が重要。一歩一歩確実に進まなければ、後にも先にも響いてしまう。
だから私もしばらくは、あまり焦らずに日々を過ごす様に心掛けている。でも、何故か今の私は焦っていないのに、目を閉じても眠る事ができない。眠りたいとは頭の中で思うけど、体がそれを否定している様な感覚だ。
本を読む為にライトを点ければ、看護師さんが真っ先に飛んで来る。だから本や雑誌も読めないし、スマホも看護師さんに預けてあるから、今はとにかく眠る事を考える。でもやっぱり眠れない。
でもそんな事をしている間に、時間は刻々と過ぎて行く。ソウボが亡くなってしまった時刻からも、どんどん過ぎて行く。「あの時間」に置き去りにされてしまった私の中のソウボは、相変わらず優しく笑いかけている。
なのに、その顔が目に見えているのではなく、頭に焼き付いて離れないまま、「あの時」の私ですらも、置き去りにされたままだった。
カウンセラーの人と一時間くらい話し込む中でも、私は時間の進みに若干の焦りを感じていた。どんどんソウボから遠ざかっているような気がしても、一定の時間に留まる事なんて、神様でもない限り不可能。
カウンセラーの人は、「辛くなったらいつでも看護師や周りの人に助けを求めてもいいんだよ」とは言ってくれたけど、実際どうやったら私の心の葛藤が消えるのかは、私自身でもよく分からない。
だから今まずするべき事は、あまり時計を意識せずに過ごす事だと私は思った。だからいつも机の上においてある卓上の時計は裏返しにしてある。時間を確認する場合のみ時間を確認しているけど、今時計の時刻を見るともう翌日の零時を回っていた。
これはさすがにまずいとは思うけれど、やっぱり眠れない事に変わりはなかった。目を瞑ると同時に、私の頭の中の悩みが押し寄せてしまう。看護師さんに睡眠薬を貰う事もできるけど、なるべく飲みたくない。でもこんな時に意地を張っていても仕方がないと思い、私はベッドに置いてあるはずのナースコールを探す。
そしてナースコールを見つけて手に取ったんだけど、その時私はある事に気付いた。午前零時になると、看護師さんが巡回に来る事を。だったら看護師さんに直接話をした方が早いと思った私は、ナースコールから手を離して、看護師さんを待つ事に。




