第十章 萌(モエ)視点 落ちて消える氷の様に
でも、私だって最近、占い師以外の職も始めている。それは、アクセサリーのハンドメイドだ。元々手芸が好きだった私は、ぬいぐるみ作りと並行して、そのぬいぐるみに付けるアクセサリーも自作していた。
その作品をお店の前に出したら、ぬいぐるみだけではなく、アクセサリーも評判になった。それから色々と本格的にハンドメイドを始めている。今はネットショッピングなどで自分の作品を売れる時代、この波に乗って、私もお店専用のブログの他にも、アクセサリー販売のサイトを立ち上げた。
私の作るアクセサリーは徐々に評判を呼んで、本格的で難易度の高い、大きなアクセサリーも作れるほどの実力になる。今では著名人からアクセサリーの依頼を受けるほど、私の実力は世間から信頼と注目を寄せられるようになった。
ちなみに私の作品はネットでしか購入できない。お店の前に置くと、私の本職が薄れそうだったから。でも仕事の合間にも作れるから、ある意味私の本職とぴったりの副業かもしれない。
今もノートパソコンで売れ行きを確認すると、朝早くに始めたばかりなのにもう完売していた。私はブログで完売のお知らせを通知して、手を止めていたアクセサリー作りを再開した。
机の横には、キセキちゃんがレシピを教えてくれたレモネードを置いてある。だけどもう殆ど飲み干しているから、残っているのは小さな氷数個とレモンの皮のみ。
結露したコップを片付けようとしたけど、もうすぐ完成する作品を置いてけぼりにできず、作業を続行する事に。後はいくつかストーンを貼り合わせて、依頼品である写真盾の完成だ。
だいぶ集中力が必要な作業だけど、私にとっては煮物の灰汁を取り除く作業よりも簡単に思える。でも灰汁抜き作業と同じく、とても大切な作業。仕上がり直前が一番大切だ。見過ごされたミスを修正できる、最後のチャンスだから。
全て完成した直後にミスが発覚すると、直す気にもなれないし、修正しようとして重大なミスを犯してしまうと、作り直す気力すら無くなってしまう。今ならやり直す気にもなれるし、重大なミスを犯してもそこまでダメージは響かない。
期限もまだ先だから、慌てずにゆっくりと指を動かしていた。小さなストーンを挟むピンセットが無意識に震え、私は写真盾を凝視しながら、時間が経つ事も忘れて専念していた。
ピリリリリリ ピリリリリリ
机の上に置いてあったスマホが突然暴れて、私は驚いてピンセットを落としてしまう。暴れるスマホを抑え画面を見ると、病院からの電話だった。私は迷わず通話ボタンを押して耳に当てる。
でもその時点で、もういつもとは違う感じがした。病院側から連絡が来る事はよくあるけど、今日は電話越しが妙に騒がしかった。しかも只の話し声ではなく、まるで言い争っている様な声が交差している。
一応私の部屋にも固定電話があるけど、病院側の電話は全て私のスマホに届いている。固定電話だと外出中に電話に出られないし、緊急の用事だった際に困る。だからいつでも電話に出られる私のスマホの電話番号を病院に教えた。
固定電話とは違い音質は若干悪いけど、電話越しで一体何を言っているのかは何となく分かった。疑問を投げかける医師の声や、言い争っている看護師達の声だ。私の体温が徐々に低くなっているのに、汗が出てしまう。今までに感じた事の無い様な感情に、私は立っていられずに一旦座る事にした。




