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トリノ巣病院  作者: 花道
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序章 ???視点

私は一旦弟を病室に残して、三階ナールセンターに向かい、看護師さん達に一言挨拶をする事に。三階にも様々な病気を抱えた患者さんが入院しているのだが、この治太海病院は三階から八階まで全て病棟、入院している患者さんもかなり多い。恐らく都心にある病院と同じくらいの患者収容量だと思う。

治太海病院は首都県外にある病院なのだが、最先端の充実な設備が整っている、だいぶ広い病院。噂によれば、都心の病院で受け持つ患者の量が年々増加しているので、治太海病院はその受け皿としての役目も担っているらしい。

静かな地域にある病院だから、とても静かでゆっくりとした時の流れを感じられる場所だ。混乱続きで疲れている弟の心をじっくりと整理するにはうってつけの場所。

実家が都心からだいぶ離れた位置にあるので、実家に一番近い且つ、弟の病気が治療できる場所を探した結果、この治太海病院に行き着いたのだ。

今日は日曜日なのでナースセンターにいる看護師さんは少ないが、それでも忙しそうにあちこち動き回っていた。土日祝日などの休日は、病院に関わらず働く人にとって一番忙しい日だ。私も本来日曜日とあれば店に出ているのだが、今私の店の入り口には長期休暇のお知らせの張り紙が貼られている。

私のお店があるのは商業ビルの7階。小さいスペースを借りている身ではあるが、同じく7階でお店を経営している人達には、私のお店を長期休業にする事や、理由もちゃんと事前に知らせた。

休業期間はまだはっきりとはしていない、弟の手術やリハビリ期間など、様々な事柄がまだはっきりとしていないので、数ヶ月後にお店を再開するのかもしれないし、年単位まで時間がかかる可能性だってある。

私のお店に来てくれるお客さんには申し訳ないのだが、「お店をやめるわけではない」と、お店のホームページや私のSNSには宣言してある。今でもホームページやSNSには、私や弟への応援メッセージが届く。

その応援メッセージを見た弟は、顔を赤く染めながら、「なんで俺の事皆に喋っちゃったの?!」と、半ば混乱状態で私に詰め寄った。弟は寂しがり屋なのだが、同時に照れ屋でもあるのだ。

今時の男子高校生ならSNSなどで自分の事が話題になれば天狗になるのが普通なのだが、弟の場合は「嬉しい」を通り越して「恥ずかしい」という感情になってしまう。シャイな女の子かよ。


とりあえず私はナースセンターにいる看護師さん達にだけでも挨拶をしようと、弟の名前と自分の名前を述べて、「弟をよろしくお願いします」と言って一礼する。すると看護師さん達も同じく一礼して、すぐに仕事を再開する。

私は看護師さん達の仕事を邪魔してはいけないと、すぐに弟の病室に戻る。弟は入院手続きなどでバタバタと動き回ったので、布団の中で漫画本を頭に被せながら眠っていた。

私は小さくため息をつくと、弟の頭に乗っている漫画本を机の上に置いた、そして医者が弟に渡した眼帯も取ってあげる、目を閉じた状態なら何も異常は見られないのだが、私と両親は弟の右目の写真を見て驚いた、本来黒いはずの弟の瞳が、不気味な色に変色していたのだから。

医師の話によると、目の中でバイ菌が繁殖してしまい、目の中の組織を破壊していたのだ。もう少し診察が遅れていたら、両目だけでは済まない事態になっていたらしい。

今は適切な処置のおかげで病気の進行は止まっているが、それでもバイ菌だらけになってしまった右目は、どう頑張っても元には戻らないそうだ。手術で右目を取り除き、目の周りに残っているバイ菌を殺菌しなければならない。幸いバイ菌は右目周りにしか確認されなかったので、鼻や口、脳には何も異常は無かった。


私は弟のベッドに腰を下ろして、「頑張れよ」と一言呟いた。

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