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創世物語  作者: 獅文
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創世

世界の始まりの前のお話

───何もない。


誰かがそう認識したとき、すべては始まり、そして終わりへと歩み始めた。


始めに目覚めたのは『曖昧』の神だ。始まりと終わり、そして時というとても曖昧なものを司る神。

『始まり』が訪れれば『終わり』が訪れる。そしてそれらの間を刻むため『時』が産まれる。それらは一つの塊のようなもので、どれかひとつ無くしてしまえば世界の理はおかしくなってしまう。それ故に無くなることはない。しかしとても曖昧なもの。


誰が『始まり』を認識したのか。誰が『終わり』を決めたのか。何をもって始まりとし、終わりとするのか。そして時を刻む基準はなんなのか。時や始まり、終わりという概念はあっても、それを正しく理解しているものなど、この曖昧な神以外にはだれもいないだろう。


曖昧の神は曖昧をより曖昧なものにするために確実なものを作った。光、そして闇の神だ。光は闇を目立たせ闇は光を鋭くさせる。相容れることのない確実な2つを作り出した。


闇の神はその特性ゆえに何もない世界にとけて広がった。そして曖昧の神の存在に気づいた。


光の神はその特性ゆえに広がることができなかった。闇は光のなかで目立つことができない。光が世界を覆えば闇は消えてしまう。それ故に広がれない特性を持っていた。

だから曖昧の神には気づけなかった。強すぎる特性ゆえに闇の存在にさえ気づけなかった。光はいつでも孤独だった。


光はとても寂しかった。『孤独』という概念は世界に存在していたのだ。そして光はその孤独という概念を認識してしまった。自分が一人であると気づいてしまったのだ。


そんな光を曖昧の神は哀れに思った。自分が作った確実ゆえに苦しんでいる光を可哀想に思ったのだ。


曖昧の神は光に『仲間』というものを作らせることにした。曖昧の世界、『夢』の世界で。時を司るゆえに知っていた、遠い未来で生まれる『生き物』というものの『一族』という所に『子供』として光を誕生させてあげた。それが光にとってどんなに苦しいことなのか知らずに。


光はだんだんと『夢』にばかりいるようになった。そしてどんどん弱っていった。不思議に思った曖昧の神は闇に聞いた。


[何故光は弱っていくのだ]


闇は答えた。


「光は孤独に耐えられない。何故なら光はひとつだけでは光とは言えないからだ」


その答えは曖昧の神には理解ができなかった。


[何故一つでは光とは言えないのだ]


闇は闇ゆえに知っていた。自分の中で連なって動く鎖のような光の集まりを。うまく説明することはできなかったが、知っていた。


「光が光るためには一つでは足りないからだ。光は、今まで自分の体を削って光っていた。もう体が足りないのだ。光は何個も必要だ。連続で動いて光る、それが光だ。今の光は削って落としているだけなのだ」


結局、曖昧の神は理解ができなかった。しかし一つではダメだということがわかった。だから光は仲間から離れたがらなかったのだろうと気づくことができた。


曖昧の神は光を分けることにした。大きな光を一つと、一回り小さな光を一つ、そして細かい光をいくつかに分けた。


しかしこれでは光を光と呼ぶことができなくなってしまったと曖昧の神は気づいた。なので『名前』をつけることにした。


遠いどこかの世界で見た名前を参考に、大きな光に「レオ」一回り小さな光に「ヒイロ」そして細かい光たちをまとめて「ルナ」と名前をつけた。ついでに闇にも「ヤイン」と名前をつけた。


名前がつけられたことにより確実なものはより確実になっていった。曖昧の神はとてもとてもよろこんだ。ヤインも、名前が貰えてとても喜んだ。その喜びを曖昧の神にも味わって貰いたいと名をつけた感謝を込めて2つもつけた。『ラフィルス=レイフェル』と。

名をつけられたことにより、曖昧な神は曖昧な存在になることはできなくなった。限りなく曖昧だが確実な個があるものになった。


だから我々も知ることができたのだ。世界の始まりとその前の物語を。我はここにその記録を残す。曖昧なものにならぬよう『創世物語』と名前をつけて。

認識したのは誰なのか

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