自分
誤字脱字あり
目が覚めたら教室の一番後ろの席に座っていた。ここは?隣には絵に描いたような美しい人がクスクス笑っている。だけど誰だ?自分はここで何をしていたのか、全く思い出せない。だから背筋を伸ばし、目をこすって思い出そうとした。
教室には40人くらいの生徒がいる。みんな殆どがこちらの方を見て笑っている。
見た感じ体育教師でアメフトかラグビーをやっていたような体格の先生が声をはりあげた。
「おはよう!随分と遅いお目覚めだな!」
見た感じは体育の先生だが板書を見た感じ、彼は国語の先生らしい。スキンヘッドを光らせ、こちらを睨んでくる。上腕二頭筋と胸筋がムキムキのせいか青のポロシャツが少し破けている。下に履いているジャージとスニーカーは真っ黒。そして何故か室内なのにニット帽をつけている。
「ごめんなさい、これからは気をつけます」
普通に謝ったはずだった。だが何故か笑いは止んでいて、教師の目も怒りから驚きの目に変わっている。そして笑いに包まれていた教室は静かになり、話し声が聞こえるようになる。
「静かに!授業を再開するぞ!」
そう言って筋肉教師は白板に文字を書き始めた。
授業中は何も問題はなかった。記憶を失っているはずなのに授業の内容はわかる。自分の年齢もなんとなくだが分かっている。だがどうしても自分の名前が分からない。
そんなことを考えているうちに授業が終わった。号令がかかり、教師が教室から出て行く。その瞬間、変人教師(失礼)を追いかけていた。
「先生、質問があるのですが」
「君がかけた霧は強力だな。クラス全員と教室にある防犯カメラに自分が昔からのクラスメートのように思わせた。しかし私はだまえされない。ここ数日ずっと侵入者がいるのは分かっていたが、君は怪しくない。ハーフの匂いがするからな。だったら君は一体誰なんだ?何処から来たんだ?」
先生の話はちんぷんかんぷんだ。だから自分も質問に正直に答えることにした。
「質問を質問で返さないでください。それにその質問は自分がしようと思っていた質問でーーー」
先生は自分の質問を遮り、灰色の目で自分の心を読み取ろうとするかのように自分の顔を見てきた。頭がぽわーっとする。
「成る程、君は嘘は言ってないようだね」
「当たり前ですよ!さっきから怪物とかハーフとかってなんなんですか?」
先生は探るような目で自分を見てくる。自分はこの教師は頭がおかしいと思う反面、この人は信用できると思った。
「いいか、私は君が誰なのか知らない。分かっているのは君の正体だけ。だがそれが問題なんだ。監視者の仕事ではない」
「なんの話なんですか?」
先生は窓に目をやった。不思議なことに学校の周りだけ雨が降っている。
「今朝、私に最悪がやってくる、と学舎から連絡が来た。詳しくは教えてもらえなかったが『まあいいだろう』と思った。もしかして君が最悪なのか?」
自分は急に頭が痛くなってきた。〈学舎、ハーフ、怪物〉何を言っているのか全くわからない。だがその言葉を聞いて自分の頭が活性化したような感じがした。クロスワードパズルを解いているようだ。
そんなことを思っていたら頭がクラクラして倒れそうになった。しかしその体を先生が支えた。
「まあ、一旦落ち着け。記憶がないと言っていたな?いいだろう。この学校では安全だ。ハンター隊にも連絡を入れておくし、君にも目を配っておこう」
「ありがとうございます」
「急げよ、授業に遅れるぞ。あとハンター隊が来るまであと30分近くある。それまでに何も起きなければいいが」
雨風が強くなり、窓が震える。そしてこうついに雷が落ちる。生徒はみんな悲鳴をあげた。
「不安的中だな。全員!廊下に出ている人は教室の中に入れ!あと窓は閉めてカーテンをかけろ!」
「この学校は安全じゃなかったんですか?」
自分は悲鳴に負けないように声を張り上げた。
「通常ならな」
先生が頷く。
「状況が変わった!さあ、私たちは外に出よう!」