決闘.2
「王室でやるのはまずいので中庭でやりましょう」
「分かった」
中庭まで移動して決闘の準備をしていると木で出来た模擬剣を渡された。
「これでやるのか?できれば刀でやりたいんだけど」
「これは手合わせですので。そもそもこの国にあるのは刀ではなく剣ですよ」
(まあいいか。これでも殴り続けてればいつか死ぬだろう)
王国軍の一人が前に出て来た。どうやらこの人が審判をするようだ。
「それではこれより王子と王国軍隊長の手合わせを始めます。コイントスをするのでコインが地面に落ちたら始めてください」
審判がコイントスをし、コインが落ちた瞬間、柊が一瞬にして距離を詰め一撃いれてきた。かろうじてかわして続く二、三発目は避けきれないと判断し剣で弾き距離をとる。
恒星は三年前のあの日から柊を殺すために剣術を習ってきた。剣術の才能があったため半年足らずで既に同い年には敵がいないぐらい強くなった。それからも毎日努力し続けて、今では大人の剣士を相手にしても余裕で勝てるほどになった。
しかし、柊は今まで戦ったどの相手よりも比べ物にならないくらい強かった。スピードは確かに速かったが恒星とっては追いて行けないほどでなかった。ただ、パワー違いすぎた。一撃、一撃が食らったらひとたまりもないレベルで、両手で剣を思い切り振らないと弾くことができなかった。
(ただの人間じゃ到底、身につけられない筋力だな。もしかしてコイツも俺と同じで何かしら特殊なのか)
と別のことを考えてて、目の前に来ていた柊に気づかなかった。ドン、と左肘に衝撃が走ったので見てみると、血が流れ出ていた。また急いで距離を取り、態勢を立て直す。
「王子!大丈夫ですか、手合わせはおわりにします」
審判が慌てて言った。
「大丈夫だ。俺はまだ動ける」
(とは言ったもののこの様子だともう左腕は動かせそうに無いな。自分で積み重ねてきた力だけで殺したかったけど仕方ない、あれを使うか)
集中力を高め、神経を研ぎ澄ます。
再び柊が距離を詰めてきて一撃いれてきたが、今度はこれを余裕でかわし、その後の数発も全てかわす。
(よし、反応速度とスピードでは上回った。後は避けつつ攻撃の間の隙を狙っていこう)
避けるのに慣れてきたところで隙を見て柊に一撃いれてみた。しかし、柊の分厚い筋肉には全くダメージが入っていないようだった。
そこで、恒星は狙いを一点に絞ることにした。攻撃を避けつつチャンスを待つ。そして、柊が下からの斬りあげをして来た時に、これを利用して飛び上がり、体を反転させて人体の絶対的急所であるアゴに全力の一撃をいれる。
(どれだけ筋肉が凄かろうがアゴには関係ない。アゴが揺れれば脳震とうが起こって平衡感覚も乱れる。いくらお前でも無傷ではいられないだろう)
案の定、柊は衝撃に耐えきれずに倒れた。恒星は左腕が動かないので着地に失敗して少し頭を打ったが、痛みは特に無いので平気な顔で立ち上がり、柊にトドメを刺しに行こうとしたが、どうやら、体は限界だったようで恒星も倒れた。
「両者ダウン、この手合わせは引き分けとします」
手合わせの終わりが告げられると急に眠気が襲って来た。おそらくこれ以上動いたらまずいという、体のサインなのだろう。
もうすぐ眠りにつくだろうという時に
(まさかーー子がここーーーいとは。これからどーーって王ーーーしていこうか)
ところどころ聞き取れなかったが柊の心の声が聞こえてきて、眠りについた。