決闘
「初めましてって、というかその格好どうしたの?」
「私はメイドなのでメイド服を着るのが規則なのですが、もしかして似合ってないでしょうか?」
「似合ってるし、すっごく可愛いよ」
「そうですか。ありがとうございます」
顔を真っ赤にしてモジモジしながらお礼を言う。いつもとは違う反応やしゃべり方から、今の由宇奈は清楚やおしとやかという感じがした。
「私、王に恒星様がお目覚めになったことを伝えに行って来ますので、少々お待ちくださいね」
由宇奈が部屋を出て行き一人きりになる。部屋の中は綺麗に掃除されていて、何やら高そうな物がいろんな所にたくさんあった。
数分後、由宇奈が一人の男を連れてやって来た。男は一目見ただけで金持ちだとわかるぐらい豪華な格好をしていて、頭には王冠を被り、赤いマントを羽織っている。
「三年ぶりか、会いたかったぞ恒星。早速で悪いが皆に顔を見せに行くぞ。皆お前のことを心配しているのだ」
と言われこっちが喋る前に部屋の外に連れ出された。廊下を出て少し歩いた先にある大きな扉の前に着く。男が扉を開けて中に入って行くのでついていった。
中に入るとたくさんの人がいた。由宇奈のようにメイド服を着ている人、墓の前にいた男達が着ていた鎧を身に着けている人や、研究者のような白衣を着ている人などがある。
下にはレッドカーペットが敷かれていて、その先には玉座のようなものが二つ並んでいる。
男は恒星を玉座の前まで連れて行き
「今日我が国の王子は戻った。これでこの国は安泰だろう。捜索に協力した者たちには感謝している。柊、お前は特にな」
柊と呼ばれた男が前に出て来てひざまづき
「ありがたきお言葉。ですが、王国軍隊長として当然のことをしたまでです」
と言い顔を上げる。その顔を見た時全身から怒りが湧き上がった。柊の顔は三年前両親を殺された時に見た男の顔と同じだった。
(だめだ、ここでいきなりコイツを殺したらただの人殺しになってしまう。かといって、コイツを野放しにしておくことはできない。今殺しても不自然に思われない方法は)
「柊さん、この三年でだいぶ強くなったので手合わせしてくれませんか?」
「もちろんです。ですが、手合わせといっても私は手を抜きませんよ。後、敬語はよして下さい」
「分かった。じゃあ始めようか」
(やっとコイツを殺せる)
小鳥遊 由宇奈(リアル)
連れ去られた先の世界で出会ったもう一人の由宇奈。アナザーの方とは違い清楚でお淑やかな性格で、恒星が別の世界から来た事を知る数少ない人物。